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新しい「臨空校舎」をつくる

2020/9/1

農学部生と教職員がヒマワリを植える

新しい学び舎を、自分たちの手でつくり上げよう――2023年4月に開設が予定されている臨空校舎(熊本県益城町)の圃場で7月29日、ヒマワリの種を植える「農ある仲間,土ほぐす福幸プロジェクト~みんなで創る学びのフィールド~」が実施された。九州キャンパス教育活性化プロジェクト「アグリ実学スキルアップ支援プログラム」(通称・アグラップ)の一環で企画されたもの。今回は新型コロナウイルス対策で学年を限定し、農学部の4年生と教職員合わせて約30人が参加した。

「臨空校舎が完成する前に卒業してしまう学生たちにも母校だと思ってもらえるように、思い出をつくる機会にしたいと考えました」と農学教育実習センターの阿部淳センター長(農学部教授)は語る。熊本地震から4年が経ったが、「地元の方々にもヒマワリの花を見て元気になってほしい。農学を学ぶ学生たちとともに、復興の一助を担えれば」と話す。

臨空校舎は、阿蘇くまもと空港に近い「東海大学宇宙情報センター」の敷地を転用して新設される。19年の夏ごろから農学教育実習センターの技術職員らが圃場の整備を進め、サツマイモ(ムラサキマサリ)、エゴマ、レモングラスの栽培を始めている。今回の取り組みは、「実習授業の単位取得後も現場で学びたい」という学生の声を受けて13年度から行われているアグラップの一環。ヒマワリは10月ごろに見ごろを迎え、11月に種を収穫、エゴマとともに食用油として精製する計画だ。

午後1時30分、真夏の日差しが降り注ぐ圃場にマスク姿の学生と教職員が集まった。あいさつに立った岡本智伸農学部長は、「臨空校舎で学生が活動するのは今日が初めてで、この活動が第一歩になります。皆さんがつくり上げるこの校舎を卒業後もぜひ訪れてください」と語りかけた。

同センターの技術職員が朝から耕して準備してきた圃場に種をまいていく。1980年に熊本県唯一の農学部として南阿蘇村に開設された当時を知る村田達郎教授が、「あのころも学生と一緒に牧柵を立て、農場や牧場を整備したんだよ」と思い出を披露すると、作本碧さん(農学部4年)は、「校舎を一からつくる経験なんてめったにできない。とても光栄」と笑顔を見せた。

新型コロナウイルスの影響で授業はすべてオンラインになり、西野駿也さん(同)は、「実習をしたい、友達に会いたいと思っていたので、皆で久々に畑に出られて楽しい。農学部での4年間でいい仲間に出会えた。臨空校舎も後輩にとってかけがえのない場所になればうれしい」と語った。

企画を担当した同センターの中野祐志技術職員は、「皆で種をまき、花を楽しみ、種を収穫してからは成分を分析したり、油を採ったり、搾りかすを家畜に与えれば良質な肉もできます。プロジェクトを通して学生に多くのことを還元したい」と期待を語った。
 
残った種で苗を作り、阿蘇実習フィールド周辺の黒川地区や、付属かもめ幼稚園、付属熊本星翔高校へ提供。熊本校舎の花壇にも利用される。開花時期には各所で笑顔があふれそうだ。


荒木九州キャンパス長に聞く――
23年4月のオープンへ
整備が進む「臨空校舎」


2023年4月のオープンに向けて整備が進む「臨空校舎」は、研究室単位での圃場や家畜飼育などをはじめとする実習場を確保し、座学と実践を同一個所で行うことをコンセプトに掲げる。農学部の特徴ある教育の実現を図る新しいキャンパスだ。

16年4月に発生した熊本地震で農学部と大学院農学研究科が置かれていた阿蘇校舎が大きな被害を受け、教室棟や研究棟が使用できなくなった。そのため、学びの場は熊本校舎に移され、阿蘇実習フィールドでは安全を確保したうえで一部の実習授業が展開されてきた。
 
荒木朋洋九州キャンパス長(農学部教授)は、「市街地にある熊本校舎では圃場や牧場をつくることはかなわず、阿蘇実習フィールドも使用できる区域に制限があります。農学部をはじめ、学校法人東海大学として検討を重ねた結果、18年3月に上益城郡益城町にある『宇宙情報センター』の敷地を新キャンパスとして整備し、教育環境のさらなる充実を図ることに決めました」と語る。
 

宇宙情報センターは、阿蘇くまもと空港から約700メートルと至近。計画では、センターの建物を生かしつつ管理棟や実習棟、教育・研究棟(いずれも仮称)の新棟が建設される。学生たちが語り合うラーニングスクエアや情報取得に特化した図書スペース、来訪者向けの情報発信を行うゲートプラザなども配置。防疫体制を敷いた多目的の畜舎や、作物を育てる圃場も整備される予定となっている。
 
学部1、2年生を対象とした基礎的な教養教育は熊本で行われ、実習や研究などの専門課程は臨空で展開。複数の研究室が実験室を共用して学生の教育にあたる複数指導教員体制の導入も視野に入れる。また、阿蘇実習フィールドはより高い機能が求められる地域特産のあか牛や伝統的な品種の生産といった“実践の場”として活用されていく。
 
「熊本と阿蘇の中間にある臨空の立地を生かし、3カ所を連動させた教育・研究活動を展開します。くしくも臨空が始動する23年4月は、阿蘇くまもと空港が国内線と国際線一体の新たな旅客ターミナルビルとしてリニューアルオープンする時期と重なります。“農業県・熊本が世界とつながる場所”へと歩いて行ける範囲にある県内唯一の農学部として、国内外にアピールしていきたい」

 
(写真上から)
▼宇宙情報センターのアンテナを背に、新しい圃場に種をまく学生たち。プロジェクト名は「あなたを幸福にする」というヒマワリの花言葉にちなみ、復興とかけて「福幸」とした
▼臨空校舎完成予想図
▼新校舎はリニューアルされる阿蘇くまもと空港から徒歩圏内ということもあり、「農業県・熊本で唯一の農学部として世界にアピールしていきたい」と語る荒木九州キャンパス長
▼校舎の建物で囲まれた中庭は、学生が自由に使えるラーニングスクエアとなる計画