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特集

2017/09/01
研究室おじゃまします!
各分野の最先端で活躍する東海大学の先生方の研究内容をはじめ、研究者の道を志したきっかけや私生活まで、その素顔を紹介します。

4年目を迎え大きな成果

マイクロ・ナノ研究開発センター

厚さ100ナノメートル以下の高分子超薄膜の創成技術を生かし、機能性薄膜の創造や医療分野への応用を進める‐‐。湘南校舎のマイクロ・ナノ研究開発センターが開設から4年目を迎えた。2016年には株式会社ニコンインステックとの産学連携で東海大学イメージングセンターを開設。センター所属の教員による論文が国際的な学術雑誌に掲載され、相次いで学会賞を受賞するなど成果を収めている。分系学部との学際的研究や国際連携も進めるマイクロナノ・研究開発センターを訪ねた。

プラスチックやセルロースなどの高分子には、超薄膜に加工すると接着剤なしでも濡れた物質にくっつく高い接着性が生まれる。マイクロ・ナノ研究開発センターは、その性質に着目。独自の高分子超薄膜生成技術を基礎に、理学部、工学部、医学部の教員8人が中心となり、文部科学省の平成26年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の採択を受けたプロジェクト「高分子超薄膜から創成する次世代医用技術」(代表者=理学部・喜多理王教授)に基づいて研究を進めている。

サイズや構造を工夫した新規超薄膜を「創る」、疾患モデル構築や機能の評価技術を開発して「試す」、超薄膜と細胞の相互作用を「知る」の3グループで研究を進めている。同センターの稲津敏行所長(工学部教授)は、「各教員が互いの専門分野の研究を重点的に続けつつ連携し、相乗効果を生んでいるのがセンターの特徴」と話す。

それを実現するため、湘南校舎12号館の施設には細胞培養室や恒温恒湿室研究施設、化学実験室が機能的に配置されているほか、研究者や学生が自由に使えるコミュニケーションエリアを設置。定例のミーティング以外にも、週3回誰でも参加できるチャットカフェや専門家による講演会を開き、日常的に議論できる環境を整えている。

センターには、アメリカやインド、中国、タイ出身の研究員も所属。喜多教授は、「国籍や分野をこえて研究者が連携することで、国際的な雰囲気が生まれ、学生にも大きな刺激になっている」と語る。

コミュニケーションから新たな成果が生まれる

研究成果も着実に上がっている。今年に入ってからだけでも、センター所属の岡村陽介准教授(工学部)が発表した新開発の揮発性超薄膜を用いた生体組織の高精度観察技術に関する研究論文がドイツの学術雑誌「Advanced Materials」に掲載されたほか、砂見雄太講師(同)が超薄膜への大量印刷を可能にする技術の研究で日本機械学会奨励賞を受賞。中川草助教(医学部)がエボラ出血熱の原因ウイルスの一つを特定した研究が学術誌「Genes to Cells」に掲載され、ゲノムレベルでの生物進化の機構解明に関する研究で日本進化学会の研究奨励賞を受賞した。今年2月に行われた同事業の中間評価でも、外部の有識者から、「学生や研究員がゆっくり議論する雰囲気づくりに配慮されている点が高く評価できる」「異分野の研究者同士による連携がこれほどうまくいっている例をほかに知らない。さらなる成果を期待している」とのコメントが寄せられた。

産学連携はもちろん国際研究協力も広がる

2016年には産学連携でイメージングセンターを開設、企業との共同研究や委託研究も20件をこえる。高度な光学機器や分析機器を活用し、古代エジプトの遺物の製法を探る文明研究所や文学部との共同研究に取り組むほか、海洋学部とマグロの遺伝子解析に関する研究が始まるなど、多くの学部との共同研究も進んでいる。

喜多教授は、「イメージングセンターを利用する学内外の研究者や企業も増加しており、連携先であるニコンインステックと光学機器の新たな活用法を探る研究も始まっている。今後は、海外の研究機関との連携も深めたい」と語る。その新たな一歩として、8月8日にはインド・サストラ大学のナノテクノロジー&アドバストバイオマテリアルセンターと、研究協力と学生の相互派遣に関する覚書を締結した。

「研究成果を社会に還元することはもちろん、基礎研究にも力を入れて成果を世界に発信していきます。学内外の共同研究のハブの役割も果たし、大学全体の研究力向上にも貢献したい」

【もう一つの話題】
国際シンポジウム2017を開催 さらなる連携へ議論深める

「マイクロ・ナノ研究開発センター国際シンポジウム2017」が、8月26、27日に湘南校舎で開催された。同センターの取り組みを国内外に発信し、さらなる研究連携につなげることが目的。両日で約400人が参加した。

期間中には、ドイツ・ユーリヒ総合研究機構のジャン・K・G・ドント教授と電気通信大学のアダルシュ・サンドウー教授による招待講演や、同センター所属教員による研究成果の紹介、学生と教員らによる研究発表などが行われた。

約150件の出展があった研究発表は、ポスター賞に応募した学生による英語でのプレゼンテーションとポスター発表の2部構成で実施。研究者や学生同士が、自らの研究内容や今後の可能性、将来の展望などについて熱心に議論する姿が見られた。

参加者からは、「同センターのこれまでの成果を知るよい機会だった。研究のさらなる進展への期待が高まった」といった声が聞かれた。

 
(写真上から)
▽高分子超薄膜の作成から機能分析まで1カ所で行えるのもセンターの特徴
▽コミュニケーションエリアでは、各研究室のゼミも行われている
▽年2回、センター主催で行われるマイクロ・ナノ啓発会(Tune)。ここに参加した教員同士の共同研究も生まれており、学生にとっては異分野に触れ、視野を広げる機会にもなっている。
▽最先端の光学機器がそろうイメージングセンター

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