特集:教育の現場から
2020年7月1日号
全学で遠隔授業始まる
専門知識の学び深める
実習や学習会もオンラインに
 

東海大学と同じ5月11日に、短期大学部と医療技術短期大学でも前期の遠隔授業が始まった。短大は児童教育学科と食物栄養学科、医療短大は看護学科が設置されており、各学科の学生は専門資格の取得を目指している。コロナ禍で学年暦や実習予定に変更が生じる中、 資格試験に向けたカリキュラムが編成されている。

【短期大学部】独自のシステムを柱に
3形式の授業を展開

短大では、4月上旬から遠隔授業の準備を開始。授業形態は、教科書と授業指示書をもとに課題に取り組むA方式、音声付きのスライド資料を用いるオンデマンド型のB方式、WEBビデオ会議システム「Zoom」を使った同時双方向型のC方式の3つを用意した。すべての授業を支えるシステムが、短大が独自開発したクラウド型ポートフォリオシステム「e-ポートフォリオ」だ。

これは、短大が文部科学省の平成28年度「大学教育再生加速プログラム」のテーマV「卒業時における質保証の取組の強化」に採択された際、学習成果や観点別評価を可視化できるよう構築したもの。今回の事態を受けて、全授業で課題の掲示・提出ができるシステムに改修した。

山本康治学長は、「どの授業形態でも、教員から学生へ前日午後1時までに必要な資料をe-ポートフォリオにアップしています。事前に配布する授業指示書によって時間配分も伝えられる」と話す。授業指示書はすべての授業で同じフォーマットを使用。毎日同じ時間に配信することで、遠隔でも時間の感覚を失わないよう意識している。

課題リポートは基本的に手書きのため、記入した用紙をスマートフォンのカメラで撮影し画像をアップ。教員はパソコンの画面越しに読み、e-ポートフォリオでコメントを返信する。児童教育学科主任の桑原公美子教授は、「小学校や保育施設の仕事は、連絡帳やお便りなど手書きが多いのでリポートも手書きにしています。遠隔授業では時間に余裕がある分、し っかり書いてくれる学生が増えている」と語る。

実習方法を工夫 補足授業も予定
食物栄養学科では栄養士と栄養教諭、児童教育学科では幼稚園と小学校の教諭免許、保育士資格の取得を目指すため、実習科目が多い。オンラインでも単位取得に必要な知識と経験を得られるよう工夫されている。

食物栄養学科の開講科目では、教員が実験や調理の映像を配信し、学生がリポートを作成する。学科主任の佐原啓二教授は、「一緒に手を動かせない分、卒業生が作成したリポートも参考にして取り組んでもらっている」と話す。しかし、「たとえば食中毒を起こす菌が増殖しているかを調べる際、対面式であれば『この匂いがしたら黄色ブドウ球菌が増えている』と嗅いで覚えてもらうのですが、遠隔では言葉で伝えるしかない」と、課題も口にする。後期には希望者を対象にゼミナールを開講し、伝えきれなかった部分について補足する予定だ。

児童教育学科では、ほとんどの実技系科目を双方向型のC方式で開講している。少人数で手遊びを練習する際にはZoomのブレイクアウトルーム機能を活用。ピアノのレッスンはメッセージアリ「LINE」のビデオ通話で指導するなど、授業の内容によってツールを使い分けている。

また、教員免許の取得に必要な実習は、両学科とも受け入れ先の状況により9月から再開。児童教育学科は8月末から保育実習が始まる。児童教育学科2年の河野朱音さんは、「遠隔授業の合間に園の雰囲気や教育方針などを調べ、自分の得意なことを生かせる保育施設をリストアップしている」という。

山本学長は、「これから社会に出る学生たちには、状況に応じて必要な情報を集めて行動してほしい。我々教員は全力でサポートするので、このピンチを自身が成長するチャンスだと捉えてもらいたい」と期待を寄せている。

【医療短大】対策徹底し学内実習
国家試験を見据えた対応

医療短大の看護学科では、4月に全学生にネットワーク環境の調査を実施。グループウェア 「Teams」とWEBビデオ会議システム「Zoom」を用いて遠隔授業を行うことを決め、システムの使用方法や課題を共有しようと教員間の学習会を開催した。学科主任の望月好子教授は、「学生は早々に遠隔授業に慣れていたので不安の声はあまりありませんが、自宅学 習では印刷代がかかるなど経済的な負担が大きいようです」と話す。

こうした状況を受けて、受講に必要なネットワーク環境整備などの費こうした状況を受け て、受講に必要なネットワーク環境整備などの費用に対して上限1万円の遠隔授業支援金制度を用意。パソコン本体やキーボードなどの周辺機器、コンビニのプリンターで教材を印刷した際の費用などを対象としている。

新しい生活様式で 2・3年生が分散登校
医学・薬理学系の座学は遠隔授業となったが、実習がある看護系科目の授業は遠隔で行うことが難しいと判断。東海大学とも協議し、厚生労働省が掲げる「新しい生活様式」に基づいた感染対策のもと、3年生は6月1日から7月25日まで学内実習を、2年生は8月3日から8月末まで演習を伴う授業を実施する。

毎年医学部付属4病院で行っていた臨床実習は後期に開講し、看護師国家試験受験資格となる単位取得に必要な技術・知識の習得に向けカリキュラムが編成された。

例年2月に実施される 看護師国家試験について、6月末時点で厚労省から今年度の実施概要に関する通達はないものの、「昨年度のスケジュールを参考に準備を進めていく。前期に予定していた模擬試験はできていませんが、学生には試験対策のスマートフォン向けアプリなどを活用するよう呼びかけている」と望月教授。今後も国や自治体の判断のもと、授業 方法を検討していく。

 
(写真上から)
▼短大独自のシステム「e-ポートフォリオ」。教員が授業の前日にZoomのIDなどをアップする
▼受講した学生は、各授業のページに課題リポートを提出。閲覧した教員がコメントを入力する
▼児童教育学科の田中靖久准教授は、「体育科教育法」を同時双方向型で開講