特集:教育の現場から
2013年4月1日号
【デザイン文化】作品展で1年目の学びを紹介
デザイン力、企画力、実践力……
総合力を持つデザイナーを育成


デザイン力と企画構想力、コミュニケーション力を併せ持つ人材を育てる─。昨年4月に新設された国際文化学部デザイン文化学科が、「授業成果作品展」を2月22日から28日まで、札幌市内で開いた。約70人の1期生たちはこの1年、どのような学びを実践してきたのだろうか。 ※学年は当時

授業成果作品展は、例年実施されている芸術工学部の卒業研究作品展札幌展に合わせて、初めて開催された。新設学科の授業内容や学生たちの学びの成果を、広く社会に発信することが目的だ。「学生たちの姿を通して、学科の活動そのものを紹介したかった」と運営を担当した伊藤明彦教授。今回の展示ではデザイン文化学科の1年生全員が、展示場の設営から受け付け、来場者の案内などを担当した。「1期生ということもあり、積極的で意欲的。指示を待つのではなく、自分から動ける学生が多い」と、学科主任の林拓見教授(芸術工学部長)は目を細める。

授業で制作した力作を多数紹介

展示は同学科の必修科目「デザイン入門ゼミナール」や、選択科目ながら多数の学生が履修した「情報デザイン基礎」と「ファシリテーション基礎」の授業で制作した企画書やアイデアスケッチ、写真が中心。授業風景を写したスナップや学生たちが集うゼミナール室もブースに再現され、来場者の関心を集めた。

ノートに愛用の筆箱やペンをスケッチする「ふでばこ自己紹介」、街中で拾ったメモ書きをもとに、落とし主を想像して表現する「街をスキャンする」、愛用品を写真と文章で紹介する「私の愛用品」……所狭しと並ぶ作品は、入門ゼミナールで制作したものだ。「ゼミナールでは、専門分野を学ぶ前に、大切な基礎となる読み書き、対人能力を磨くことを目指しました。学科全体の学びの領域を知ると同時に、他者との交渉、協力、創造的な関係を構築する方法などを学んでほしかった」と林教授は語る。

体系的な知識を身につけ何かが生まれる場所に

実践を重視した取り組みに、学生たちも自らの学びに手応えを感じている。「ウェブやグラフィックのデザイナーを志して学科を選んだ」という、赤坂文音さんと西村佳菜子さんの二人は「単にものを作るだけではなく、チームを組んで企画構想から考えることに魅力を感じるようになりました」と口をそろえる。「表現で何かを残したい」と入学した工藤晴人さんは、「アートに興味がありましたが、フィールドワークなどを通じて刺激を受け、今はまちづくりや地域活性化にも関心を持っています」と充実した表情で語る。

そんな学生たちの姿に、林教授と伊藤教授は「今後も体系的な知識を身につけ、社会で起こり得る事象を想定し、対応する力を養ってほしい」と期待と意欲を語る。「新しい教育の取り組みから、学内外に風を起こしたいと考えています。この学科を牴燭が生まれる場所〞となるよう充実を図っていきたい」

(写真上から)
▽芸術工学部の卒業研究作品展と合わせて、紀伊國屋書店札幌本店で初開催された授業成果作品展。1期生たちが、自分たちの力作をより多くの来場者に楽しく見てもらおうと、連日レイアウトを変更するなど、工夫を凝らした
▽情報とは何か、情報の視覚化や人間のコミュニケーションの方法を学ぶ「情報デザイン基礎」。講義では、「自分が持っている情報を知る」ため、背の順で一列に並んだり、おもちゃのブロックの組み立て方を文章だけで伝えたりと、工夫を凝らした内容が展開された 
▽会議などで話の流れを整理し、意見を集約する能力を身につけることを目的とし「ファシリテーション基礎」では、パスタの麺で作った構造物の強度を互いに競ったり「ワークショップをデザインする」などの課題に挑戦。チームを組んでものをつくる力を養った

 
トークセッションで学科の理念語る
学生たちの商店街活性化案も紹介


授業成果作品展期間中の2月27日には、トークセッション「『つなぐ人』を育てるデザイン文化の学び」も開催された。司会を伊藤教授が務め、ともに授業を担当する同学科の渡辺保史客員教授、札幌大通まちづくり株式会社取締役統括部長の服部彰治氏、札幌狸小路商店街振興組合理事長の菊池恒氏が登壇。同学科の授業内容や理念について解説した。また、学生有志が昨年11月に参加し、特別賞を受賞した札幌市の「商店街再生事業学生アイデアコンテスト」の企画案についても、来場者らに紹介。授業で考えたワークショップなども実践した。

 
[学科主任に聞く]
企画構想力と技術を磨き、あらゆる分野で活躍する人材に
国際文化学部デザイン文化学科 林 拓見 教授

デザイン文化学科は、デザインの概念を文化とのかかわりから捉え、新たなライフスタイルを創造する人材を育てようと新設されました。社会の要請に応え、「デザインの手法を通じて暮らしをより豊かにする」―そうした発想ができ、実現する力を持ったデザイナーを養成したいと考えています。

今、社会からデザイナーに求められる役割は幅広く、多様化しています。職人的に一人で仕事をするのではなく、企画構想の段階からチームを組み、他者と協力して「こと」や「もの」をつくる―デザイン力はもとより、企画力、ディレクション力を持った人材を輩出する必要があります。カリキュラムの中心には、「情報デザイン基礎」や「ファシリテーション基礎」といった企画構想系の科目と、フィールドワークを重視した総合・実践系の科目を配置。並行して「グラフィックデザイン」「広報・広告デザイン」「商品デザイン」「建築・インテリア」の4つの分野でデザイン系専門科目を設置しました。学生たちの学びの関心に応じて、力を磨くことのできる環境となっています。

学生たちには将来、デザインやクリエイティブの分野はもちろん、一般企業や、自治体、公共機関などあらゆる分野で活躍してもらいたいですね。

 
[もうひとつの話題]
子どもの“外遊び”を提案
長年の研究成果をホームページに


国際文化学部デザイン文化学科の田川正毅教授がこのほど、芸術工学部の学生と調査・研究してきた成果をまとめて紹介するホームページ「こども環境デザインふぉーらむ@snowland」をオープンさせた。10年以上前から、子どもの遊び環境などを研究してきた田川教授は、「子どもの遊びが室内化し、特に積雪寒冷地では冬の外遊びが減少しています。今回は長年の研究成果を地域に還元しようと、牾依靴〞のきっかけや仕掛けを盛り込みました」と話す。

ホームページには、「雪のランタン」の作り方といった「冬のあそび」だけでなく、夏の水遊びについてや、落ち葉での遊び方のページも設けた。学生とともに北海道や東北地方の幼稚園などで実施したアンケート調査の結果や、撮影した写真をもとにイラスト化して紹介している。3月にはホームページと連動したリーフレット「外あそぶっく」も完成。児童館などで配布が始まっている。

(写真)ホームページには、「冬のあそび」「夏のあそび」を多数掲載。こども環境デザインふぉーらむ@snowland