Column:本棚の一冊
2020/06/01 『宇宙のランデヴー』
2019/08/01 『予防医学のストラテジー』
2019/04/01 『殺人犯はそこにいる』
2020年6月1日号
『宇宙のランデヴー』


何かに没頭する時間を大切に
工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻 池田知行講師



宇宙にまつわる話は小学生のころから大きな関心事であり、新たに発見される太陽系内外の天体や現象には今もなお心躍らされてます。そうした中、最近特に驚いた出来事に、2017年10月に人類史上初めて恒星間天体が発見されたことが挙げられます。

「オウムアムア」(ハワイ語で遠方からの最初の使者)と名付けられたこの天体は、観測の結果、全長200メートルほどの棒状の小天体であり、太陽と水星軌道との間をすり抜けて再び太陽系を離れる軌道を取っていることがわかりました。太陽系を起源とせず、他の恒星 系からはじき出されて数十億年もの間、星間空間を旅してきたと考えられています。太陽 系外から棒状の天体がやってくるとの報道があった時、学部4年生のころに読んだSF小説『宇宙のランデヴー』を思い起こし、大変ワクワクしたものでした。

このSF小説は『2001年宇宙の旅』をはじめとする、多くの名作を遺したSFの大家アーサー・C・クラークによって1970年代に発表されました。近未来、太陽系に進出し繁栄を謳歌していた人類が、まさに今回の「オウムアムア」と同様に太陽系外から飛来した巨大構造物「ラーマ」を発見し、ノートン中佐をリーダーとする探査チームを送り出すという筋書き です。

「ラーマ」は直径20キロ、全長50キロ、1回転4分で自転している天体です。スペースコロニーのような形状で、探査チームは回転軸付近になんとか着陸して、滞在可能な3週間 の間で内部を探検していきます。神秘的かつ謎だらけで、多分に知的好奇心と想像力を刺激し「あれはこうではないのか」などと、考える楽しさを与えてくれるものでした。

この作品を読んだ当時、私は母校の研究室で人工衛星の姿勢制御の研究活動に没頭していましたが、その難解な理論をなかなか理解できず悩んでいました。そんなとき、気まぐれに入った書店で偶然手にしたのがこの作品でした。当初通学時の電車の中での楽しみとして読み進めるうちに次が気になって仕方がないといった具合になり、時間を忘れて没頭してしまうこともありました。

次から次へと展開される謎に対する登場人物たちの行動や姿勢には、大いに励まされました。また、何かに夢中になることの楽しさ・素晴らしさをあらためて実感したひとときでした。

何かに没頭し夢中になるということは明日を乗り越える大きな活力になります。皆さんも学生時代の間に夢中になれるものをぜひ探してください!

『宇宙のランデヴー』
アーサー・C・クラーク著 南山宏訳
ハヤカワ文庫

 
いけだ・ともゆき 1986年大阪府生まれ。大阪工業大学工学部卒業。同大学院工学研究科機械工学専攻修了。博士(工学)。2015年度より現職。専門は宇宙工学、推進工学。