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阿蘇の魅力を伝えるツアー

2016/9/1

[観光ビジネス学科]“復興”をともに考える

熊本校舎の学生たちが、「平成28年熊本地震」の被災地復興に向けたさまざまな取り組みを展開している。経営学部観光ビジネス学科の小林寛子教授のゼミでは、8月22、23日に湘南校舎の学生を招いて1泊2日の「被災地阿蘇スタディーツアー」を企画。奮闘する学生たちを追った。

地震発生直後から約1カ月間、避難所でのボランティアなどを行ってきた観光ビジネス学科の学生たち。被害の大きさを目の当たりにし、「自分たちにできることは何か」と考え、話し合ったという。

以前から小林ゼミの研究テーマとして阿蘇の観光に取り組んでいたこともあり、ゼミ長の吉田慶さん(3年)は、「甚大な被害を受けた阿蘇の方たちの暮らしはもちろん、雄大な自然や人々の温かさなどいいところを伝えたい。離れた湘南校舎で学ぶ友人らを招き、復興についてともに考えるツアーを計画した」と振り返る。

春学期のゼミの時間などを使って準備を開始。被害状況や観光地の情報などを集め、何度も現地を訪れてツアーの内容を練っていった。内野友稀さん(同)は、「一つひとつの場所をただ結ぶだけでなく、それぞれにストーリーやメッセージ性を持たせることで内容を深めたかった」と語る。現地の人にインタビューしたり、関連する場所を調べたりしながら行程を決めた。

地震当日を振り返る
ツアーには、「被災地の現状を自分の目で見てみたかった」と呼びかけに応じた湘南校舎の学生5人と、地震発生時にキャンパス間留学で湘南にいた熊本校舎の学生2人も参加した。菅井亮さん(教養学部3年)は、「地震直後に募金活動をしたが、被災状況を報道でしか知らないので、募金してくれた人に何も話せなかった」経験が参加を後押ししたという。

熊本校舎を出発した一行は、阿蘇五岳を一望できる「あそ望の郷」や水源に寄り、阿蘇の魅力を体験。阿蘇校舎では、農学部卒業生で地震後すぐに校舎に駆けつけた経営学部経営学科の木之内均教授と農学部生が案内した。前田啓太さん(農学部3年)は、「県外では熊本地震が過去のことになっていると聞く。少しでも知ってもらう機会にできれば」と協力を買って出た。

倒壊したアパートや崩落した阿蘇大橋なども見学し、「阿蘇大橋が落ちたときはものすごい音がした」「明日が来ないかもしれないと思ったのは初めて」と農学部の学生たち。湘南校舎の学生たちは、「自分の目で見て、聞いてみないとわからないことばかり。経験したことを周囲に伝えていかなくては」と真剣な表情で聞いていた。

それぞれの役割を
観光地や温泉街を訪問し、復興に向けた取り組みなどを聞いた学生たちは、熊本校舎に戻ってツアーを振り返った。

「まだ復興は進んでいない。できることをしていきたいと思えたツアーだった」と相場翔平さん(教養学部3年)は話す。運営を担当した本田悠稀実さん(経営学部3年)も、「ツアーを企画していなければ、私自身も熊本地震は過去のことだと思って暮らしていた。さまざまな視点から地震について考えることができてよかった」という。

今後は報告書をまとめ、12月に東京都内で行われるエコツーリズムシンポジウムで成果を報告する予定。小林教授は、「ツアーを通してたくさんの熊本の宝〞を見つけられたと思う。復興に向けてはそれぞれの立場や場所でできることがあるはず。ゼミでもさらに話し合いを重ねていきたい」と語っていた。

(写真上)木之内教授(右)から阿蘇校舎の被災状況を聞く学生たち。足下には大きな地割れが目立った
(写真下)阿蘇市内のあちらこちらにある水源でひと休み

 
【学生の声】
▼石田夏子さん(教養学部3年)
震災の現状を知るツアーだと思っていたが、旅館の女将さんや阿蘇神社の神主さんら現地の人たちが、「地震が起きたのが昼間でなくてよかった」「阿蘇神社が自分たちを守ってくれた」と前向きで、プラス思考で考えていることに驚いた。たくさんの元気をもらい、多くのことを吸収できたツアーだった。
▼後藤央樹さん(経営学部3年)
「九州ふっこう割」などの施策も始まり旅行客が増えている場所もあるけれど、工事担当者ばかりが泊まっていて、一般の旅行客向けの宿に戻していく難しさを感じているという声もあった。企画運営に携わる中で、現地に足を運んで、地震を経験した人たちの声を聞くことがいかに大切かを感じた。

●阿蘇ツアーの主な内容●
<1日目>
阿蘇校舎と周辺を見学

阿蘇校舎周辺のアパート前で、農学部生が当時の様子を説明。地震前を振り返り、「多くの学生が住んでいたので、『白菜をもらったから鍋をしよう!』と集まったり、パジャマ姿で隣の家に遊びに行ったりしていた」と思い出も語った。

阿蘇神社&門前町を訪問

阿蘇神社門前町の「はなびし」で阿蘇名物のあか牛に舌鼓。その後、「阿蘇とり宮」の店主や阿蘇神社の神主から話を聞いた。学生たちは、倒壊した3軒はどこも空家で、この町ではけが人もいなかったと聞いて、「阿蘇神社の神様が守ってくれたのではという話が印象的だった」と語った。

阿蘇の“草原”を学ぶ
牛馬の放牧地として利用される阿蘇の草原では、やぶや林にならないよう年間2000人ものボランティアによって“野焼き”が行われている。阿蘇草原保全活動センターで学んだ後は、宿泊する五岳ホテルに移動。夕食後、池田宗高社長に営業再開までの話や、収益を確保するための数々の戦略を聞いた。

<2日目>
風評被害の影響とは?
縁結びスポットして人気の夫婦滝に寄って、黒川温泉へ。ふもと旅館の女将・松崎久美子さんから、「地震の影響が少ないながらも風評被害で7月の初めまでほとんどお客さんがいなかった」といった苦労や対策を聞いた。温泉街を散策し、北外輪山から阿蘇の町並みを一望して熊本校舎へ。

「また来てね」熊本での再会を誓う

熊本校舎に戻ってからは、小林ゼミの学生が事前調査の内容をもとに自然災害の脅威や阿蘇の牧草地などについて発表し、ツアーを振り返った。最後は記念撮影をして、「また来てね」「また会おう!」と話して校舎を後にした。

(東海大学新聞9月1日号掲載)