News:研究
2021年12月1日号
急性肝障害の新規治療法開発に期待
【医学部医学科】
肝臓由来細胞外小胞の抗炎症機能を発見

医学部医学科基盤診療学系先端医療科学の幸谷愛教授と中山駿矢研究員らの研究グループが、肝臓由来の細胞外小胞(EVs)の抗炎症機能を発見。その成果をまとめた論文が10月26日に、イギリスの科学『Cell Death and Disease』のオンライン版に掲載された。同研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業」、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「肝炎等克服実用化研究事業」「次世代がん医療創生研究事業」の採択を受けて進められている。

主に肝炎ウイルスの感染により発症する急性肝障害は、ときに肝硬変や肝がんなど肝臓移植が必要な病態を引き起こす。移植治療は体への負担が大きく拒絶反応や感染症などの問題があるため、より簡便な治療法が望まれていた。

研究グループでは、EVsに含まれるタンパク質や膜を構成する多価不飽和脂肪酸(リン脂質)の機能解析といった、これまで積み重ねてきた研究を踏まえ、脂肪酸が抗炎症機能に関与しているとの仮説を設定。モデルマウスを使った実験により、肝細胞由来EVsが急性肝障害に対して保護的に働き、炎症を制御し得ることを明らかにした。さらに、肝細胞由来EVsに含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)をはじめとする3価の多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)が、抗炎症に関与していることも突き止めた。
 
中山研究員は、「今後は、よりヒトに近い免疫系を持つ急性肝障害モデルマウスやヒトの肝臓をもつヒト肝細胞キメラマウスを用いて研究を進め、EVsを活用した新たな治療法の可能性を追究していきます。また、肝細胞由来EVsは多様な免疫調整能力や高い組織保護作用を持つことから、急性肝障害だけでなく、急性肺障害などさまざまな臓器の疾患治療への応用についても研究したい」と意欲を見せている。

 
(写真)中山研究員