News:研究
2021年9月1日号
X染色体不活化異常の原因を解明
【医学部医学科】女性由来iPS・ES細胞活用へ

医学部医学科基礎医学系分子生命科学の福田篤講師(総合医学研究所、マイクロ・ナノ研究開発センター)とアメリカ・ハーバード大学のケン・イーガン教授らの研究グループが、女性由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)に特異的に発生するX染色体不活化異常の原因を解明。その成果をまとめた論文が8月19日に、科学雑誌『Stem Cell Reports』オンライン版に掲載された。

日本医療研究開発機構の平成31年度再生医療実現拠点ネットワークプログラム(幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラム)の採択を受けて取り組んだ研究。

iPS・ES細胞は多様な細胞に分化できるため、再生医療や創薬の探索などに活用されている。しかし、女性由来のiPS・ES細胞については、2つのX染色体(性染色体)の一方の働きを抑えて遺伝子を適正に補正する「X染色体不活化」が機能しなくなるという試験管産物特有の異常が発生し、本来の細胞状態を維持できないことが報告されていた。

福田講師らはこの原因を特定するため、女性由来細胞のみで確認され、X染色体不活化の開始と維持に必須の役割を担う遺伝子「非コード長鎖RNA XIST」の発現制御機構を解析。Denovo DNAメチル化酵素(遺伝子をメチル化してゲノム配列を変えずに役割を制御する酵素)の「DNMT3A」「DNMT3B」がXISTの働きを抑制し、X染色体不活化を破綻させることを明らかにした。

福田講師は、「2つのメチル化酵素の働きを弱めたり、一度抑制されてしまったXIST遺伝子の働きを再活性化させたりする方法を開発し、X染色体不活化の破綻を回避させるのが次の目標です。女性特有の疾患メカニズムの解明や創薬の開発、自分の細胞から作製したiPS細胞による再生医療など、女性由来細胞の活用の可能性を広げるため、研究に注力したい」と意欲を見せている。

 
(図)DNMT3A・3BによるXIST遺伝子の抑制がX染色体不活化破綻を引き起こす
(写真)福田講師