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2021年12月1日号
新型コロナ「ミュー株」の強い抗体抵抗性を確認

医学部医学科基礎医学系分子生命科学の中川草講師(総合医学研究所/マイクロ・ナノ研究開発センター)らの研究グループが、新型コロナウイルス「ミュー株」(B.1.621系統)が感染者とワクチン接種者の血清に含まれる中和抗体に対してきわめて高い抵抗性を示すことを発見。その成果に関する論文が11月3日に、アメリカの科学雑誌『New England Journal of Medicine』オンライン版に掲載された。

この研究は、新型コロナの感染拡大を機に結成された、東京大学・佐藤佳准教授が主宰の研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」が取り組んだもの。中川講師は、大規模なDNA配列情報を活用してウイルスの同定や解析などを行うゲノム科学の専門家として参加している。

ミュー株はコロンビアを中心に流行。8月には世界保健機関が、「注目すべき変異株」(顕著な変異を有し、複数の国で流行拡大の兆しが確認された株)に認定した。

同コンソーシアムではこれを受けて、ミュー株のシュードウイルス(感染力をなくした疑似ウイルス)と、従来株に感染した人の回復後の血清、ファイザー・ビオンテック社製のワクチンを2度接種した人の血清を用いて、感染を阻害する中和抗体量を調べる試験を実施。その結果、ミュー株は従来株と比べて、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍というきわめて高い抵抗性を持ち、既存の株の中で最も抵抗性の高い変異株であることを明らかにした。

中川講師は、「感染収束のためには公衆衛生の視点とともに、ウイルスの遺伝情報を解読して変異を早期に発見し、ヒトの免疫などに与える影響を解明することが重要」と研究の意義を語る。

なお同コンソーシアムでは、「ワクチンは複合的に免疫力を獲得するために接種するものであり、ミュー株に対する感染予防や重症化を防ぐ効果は十分に発揮されると思われる」との見解を示している。

 
(写真)中川講師