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付属諸学校

2015/08/01

付属諸学校にタブレット端末や電子黒板を導入

生徒の意欲や知力の向上へ
進むICT教育の環境整備


東海大学の付属諸学校で今年度からICT教育環境の整備が進んでいる。2017年度に迎える学校法人東海大学の建学75周年記念事業の一環として、20年度までに、各校のインターネット環境といったインフラを整備し、タブレット端末、電子黒板などの機器を導入する計画だ。授業支援ソフトも活用し、教員の授業力向上や児童生徒による発表表現の多様化を目指す。先行モデル校としてタブレット端末が導入された付属高輪台高校・中等部(港区)と付属第三高校(茅野市)の授業を取材した。

【高輪台中・高】インフラを生かしてアクティブラーニング推進

「タブレット端末導入で重要なのは、インターネット環境をはじめとしたインフラの整備。東海大の情報通信学部がある高輪校舎が隣接していることもあり、環境を整えやすく、ICT導入はスムーズに進んでいます。08年度に全教室に導入した電子黒板とともに、より先進的な教育を実現させたい」と話すのは、高輪台高と同中等部のICT教育推進を統括する池田信一副校長。

同校には、現在150台のタブレット端末が導入されている。75周年記念事業の予算に併せて東京都の助成も受けており、9月には650台まで増やしていく予定だ。端末は各階の廊下にある専用の台車で管理されており、授業で使用する教員がそのつど台車ごと教室まで運んでいく。各教科のプレゼンテーション発表や英語・数学の演習問題を解く際に使用されている。「まずは、ICT機器とアクティブラーニングの手法を組み合わせ、教育力の強化に力を入れています」と池田副校長。

学生の能動的な授業への参加を促すアクティブラーニングは、教員による一方的な講義とは異なり、グループディスカッションやディベートなどを通じて、自身で論理的に課題を解決できる能力の養成にもつながる。

演習問題に取り組む英語の授業では、生徒が端末に打ち込んだ意見や解答がすぐに電子黒板に映し出され、教員は生徒一人ひとりにアドバイスを送る。生徒たちは、「正答率などもすぐに出るので、自分の弱点がわかりやすい」と話す。

池田副校長は、「従来の板書をノートに書き写すといった教育法も学習効果は高い。これまでの手法を生かしつつ、ICT機器とうまく融合させることが大切です。充実した環境を生かすためにも、公開授業などを積極的に行い、教員のICT教育への理解を高めていきたい」と話している。

【第三高】反転授業で効率化自宅で授業・教室で演習

第三高では今年度、50台のタブレット端末を導入。理数科の1年生に1人1台配布されている。自宅に持って帰れるメリットを生かし、主に数学の授業における「反転授業」で活用されている。

教科書の内容を教員が解説する動画が事前に配信されており、生徒たちは端末を使って内容を把握してから授業に臨む。教室では演習問題に取り組むため、従来の教室と自宅の役割が反転することからこう呼ばれる。

同校の情報管理室長で数学を担当する武藤健教諭は、「動画はわからないことがあったときに簡単に戻して見直せます。繰り返し見てもわからなければ、授業の前に教員に質問もできる。演習問題にもスムーズに取り組めています」と導入のメリットを語る。

授業では、3、4人のグループで演習問題に取り組む。1人で解いてもわからないときには、グループ内で相談し、答えを出してもらう様子が見られる。理解している生徒が教員役になる場面もあり、学びを深め合っている様子がうかがえた。

各授業の最後には端末を使った小テストも実施。各自の解答時間や正答率が瞬時に表示される。生徒一人ひとりのこれまでのテスト結果を一覧で見ることができるのもICTの利点だ。

10分ほどで問題を解いた後、アンケートも行われ、「よくわかった」などの理解度を選択する項目のほかに、自由記入欄には授業への要望も書き込める。生徒たちは、「一人で黙々と解くよりも、協力して取り組むことで達成感をより感じられる。問題を解く時間が多いので、教科書に載っていないような応用問題にも取り組めています」と話している。

武藤教諭は、「動画の質を向上させ、多くの内容を効率よく伝えたい。学習スピードを上げられれば、さらに難易度の高い問題にも取り組めます。授業支援ソフトも多様化しているので、それぞれの教員に合った方法で使用していきたい」と展望を語っている。

(写真上)教員が生徒の習熟度を細かく把握し、一人ひとりに細かいアドバイスを送れるのもICT教育の強みだ
(写真下)タブレット端末は自宅学習以外にも小テストやアンケートで使われる

 
21世紀を生きる力をつけるオリジナルICT教育を確立

学校法人東海大学初等中等教育部長
杉 一郎 常務理事

文部科学省の学習指導要領において、教科指導におけるICT活用とは、「学習目標を達成するために教師や児童生徒がICTを活用すること」となっています。ICT機器を導入することで授業の双方向性が高まる。この結果、生徒らの主体性や関心、意欲、知識を高めるといった効果があり、学力の向上につながると国内外で実証されています。

ただし、ICTはいわゆる道具であり、タブレット端末や電子黒板を導入すれば、すぐに授業がよくなり、学力が伸びるという単純なものではありません。「子どもたちにどのような力を身につけさせるか」―学校と教員が明確なビジョンを持つことが大切です。21世紀を生きる子どもたちに必要な力を考え、学校の仕組みや言葉からつくり変えていかなくてはなりません。また、教員の授業力向上、スキルアップも恒常的に取り組んでいく必要があります。

学園の付属諸学校における今回のICT教育環境整備では、各校の段階的なインフラ整備はもとより、「初等中等教育機関ICT教育推進委員会(仮称)」を設置。先進的に取り組んでいる学校を中心に、あらゆる方向からICT教育推進を検討し、学園全体で共有する考えです。それらの活動を通じて、他の公立校や私立校に先駆けた「東海大学オリジナルのICT教育」の確立を目指します。
Key Word 「ICT」
ICT(Information Communication Technology)は、コンピューターやスマートフォンといった情報端末と、インターネットをはじめとする通信技術を融合させた「情報通信技術」を指す。教育現場への導入により、授業の双方向性を高め、生徒の意欲や知識・理解を高めるなどの効果が期待されている。

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