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学生

2019/03/01

Close Up 大学院生 多様な研究分野で活躍中

基礎研究の成果が国際ジャーナルに掲載

大学院工学研究科応用理化学専攻2年の山口亮介さんと浅見悠里さんが執筆した論文が相次いで、国際ジャーナル『Carbohydrate Research』に掲載された。同誌は、生物化学から遺伝化学、構造化学など複合糖鎖に関する基礎研究成果が掲載される学術誌。学生が執筆した論文が掲載されるのはきわめてまれだ。
 
2人を指導した蟹江治教授(工学部生命化学科)と清水佳隆准教授(同)は、「本学科では学科内の教員による共同研究を積極的に進めている。今回の成果は、両研究室と先進生命科学研究所の研究員らによる相乗効果で生まれたともいえる」と語る。浅見さんも、「いつも第一線の先生方にアドバイスをもらえる環境がある。それが成果につながった」と口をそろえた。
 
同誌の473号に掲載された山口さんの論文「A unique structural distribution pattern discovered for the cerebrosides from star fish Asterias amurens is」は、キヒトデの体内に多く含まれている23種類の糖脂質の構造を解明したもの。キヒトデはホタテ養殖に害をなす厄介者として知られる一方、体内にある糖脂質の一つグルコシルセラミドは高い保湿性を持っており、医療や化粧品への応用が期待されている。今回の成果により、社会還元に向けた一歩が開かれた。一方、474号掲載の浅見さんの論文「Stereo selective trimethyllsil ylation of α- and β-gal actopyranoses」は、糖鎖科学の分野で、効率よく合成する新手法につながる成果を発表した。ガラクトースを使い、その立体構造を保ったまま合成し、狙ったオリゴ糖のみを作る手法の基礎を提案。合成の過程でこれまで知られていなかった「中間体」が存在することも明らかにした。 

山口さんは、「大学の勉強は、研究室に入ってそれまで学んできた知識を生かしながら自分なりに考察するようになると本当に面白くなる。その成果が評価されたことがうれしい」と話している。

まばたきの回数を解析 ゲームの没入度合いを論文に

大学院工学研究科電気電子工学専攻修士課程2年の石黒知秀さんらが卒業論文作成のために行った研究「Immersive experience influences eye blink rate during virtual reality gaming」が、厳しい査読を経て、ポーランド国立科学アカデミー発行の科学誌『Polish Psycholo gical Bulletin』に原著論文として掲載されることが決まった。 

筆頭著者の石黒さんは情報理工学部情報科学科4年生のときに、3人の同級生とオリジナのバーチャルリアリティ射的ゲームを使い、まぶたの筋肉の動きを利用してユーザーが遊戯しているときのまばたきを詳細に解析。ゲームに没入しているときにその頻度が増加することを発見した。
 
この研究成果は、まばたきを測定することでバーチャルリアリティゲームのユーザビリティを客観的に評価できる可能性を示しており、よりよいソフトウエア製作に応用できるものとして期待されている。
 
もともとパソコンやゲームに興味があったという石黒さん。大学では今回の論文をともに作成した同級生らと、バーチャルリアリティやゲームプログラミングを自主的に学ぶPISTというサークルを立ち上げ、ゲームづくりに没頭した。 

「サークルで作成したバーチャルリアリティゲームから今回の研究に発展させました。まばたきが指標の一つになることがわかったので、今後のVR研究などに生かしてほしい」と語る。指導教員で、責任著者として論文の投稿までをサポートした高雄元晴教授は、「研究には若い発想が大切。学生には、自分の考えは最先端の研究からほど遠いものだと考えず、学部学科の壁をこえて先生方に相談しながら研究に取り組んでほしい」と後輩たちの活躍にも期待を寄せた。

 
(写真上) 2人の研究では、高度物性評価施設の分析機器も活躍した
(写真下) 目に取りつけたディスプレイでゲームを楽しみながらまばたきの回数を分析する。右が研究に励む石黒さん

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