コラム
2021/06/01A.人工肺とポンプで呼吸機能を代行する
医学部医学科総合診療学系救命救急医学 青木弘道 講師
エクモ(体外式膜型人工肺)は、肺の機能が著しく悪化し、命に危険がある場合に装着する生命維持管理装置。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症患者治療の最後の切り札です。
人工呼吸器が肺に酸素を送って呼吸機能を補助するのに対し、エクモは肺の機能を代行し、肺を休ませて治療、回復を図ります。大腿部の血管に挿入した管からポンプで1分間に数リットルの血液を抜いて人工肺に送り、二酸化炭素を除いて酸素を供給した血液を首の血管に通した管から戻します。
多くの場合、治療には数週間かかりますが、1カ月をこえるケースもあります。血液の凝固で血栓ができるといった合併症の危険もあり、長期化すると人工肺やポンプの交換が必要になります。
管の挿入はX線や超音波による透視下で行いますが、高度な技術を要するため、特別な訓練を受けた医師が対応します。医師、看護師と、機器の管理や操作を担当する臨床工学技士らがチームを組み、ポンプの回転数や流れる血液量、呼吸数などを24時間確認して、異常があればすぐに対応できる体制を整えています。COVID-19患者に対しては、院内感染を防ぐため、さらに緊張感を持って治療やケアにあたっています。
医学部付属病院にはCOVID-19患者以外にもエクモを必要とする救急患者が運ばれてきますし、エクモは心臓などの手術でも使われます。5月28日現在、COVID-19患者に使用しているのは7台中2台ですが、変異株が増加する中、本病院が急性期医療の中核施設として、高度な先端医療を担う特定機能病院としての役割を果たすために、余裕があるとはいえない状況です。
すべての患者さんに必要な機器や資材、マンパワーを投入できる治療環境を整えておくためには、COVID-19の感染抑制が不可欠です。読者の皆さんがそのことをしっかりと理解し、感染対策への意識をさらに高めて責任ある行動をとってくれると信じています。
あおき・ひろみち
1977年三重県生まれ。2002年度東海大学医学部卒業。20年度より医学部付属病院救命救急科診療科長。専門は重症外傷、消化器外科疾患、集中治療。
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