コラム
2020/05/01A.厳しい状況も、〝新しいあり方〞を考える契機に
体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科
押見大地 講師
新型コロナウイルスによる感染症の拡大はスポーツ界にも大きな影響を及ぼしています。3月に東京オリンピック・パラリンピックの約1年間の延期が決定しましたが、日本国内ではプロ野球やサッカー・Jリーグ、バスケットボール・Bリーグ、卓球のTリーグ、ゴルフやテニスの男女ツアー等、軒並み試合を行えない状況が続いています(4月28日現在)。
プロスポーツの経営は、観客を起点に成り立っています。試合のチケット収入、テレビなどでの放映権料収入、チームを支援する企業からのスポンサー収入、グッズなどの物販収入が「4大収入」と呼ばれていますが、どれもエンターテインメントとして人を集めることで収益につながるものです。活動ができなければ、これらの収入は見込めません。
このような状況は世界でも同様です。アメリカでも野球のメジャーリーグ(MLB)は開幕できず、バスケのNBAも無期限で中断されています。そんな中、海外のスポーツ選手たちのアクションは早く、NBAでは複数の選手たちが従業員の給与補填を申し出ました。また、 ニューヨークに拠点を置くMLBのヤンキースとメッツ、NFL(プロフットボール)のジャイアンツとジェッツが、医療施設で不足している防護服の代用品として使用してもらおうと大量の雨天用ポンチョを寄付しました。
これらの行為は寄付や援助が日常になじんでいるアメリカだからこそ早くできたのかもしれません。しかし、結果として自らのブランド価値を高める効果も得られており、日本のスポーツ界も大いに見習うべきでしょう。
スポーツ選手はよく「自らのプレーで人々を勇気づけたい」と話しますが、これは社会が健康であればこそできることです。ピンチの中で何ができるのか―これを機にファンとの接点や社会との関係性を見直し、「持続可能なスポーツのあり方」を考えていく必要があるのではないでしょうか。
(図) 延期・中止の決まった国内外の主なスポーツイベント
おしみ・だいち 1981年東京都生まれ。2008年㈱JTB退社後、13年早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士課程修了。博士(スポーツ科学)。専門はスポーツマネジメント、スポーツ消費者行動論など。
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