学生
2025/04/01学生の夢を乗せたハイブリッドロケットが空高く打ち上がった――。チャレンジプロジェクト「東海大学学生ロケットプロジェクト」（TSRP）が3月8日、北海道大樹町でハイブリッドロケット（H-60号機）の打ち上げ実験に成功した。TSRPでは例年、秋田県で行われる能代宇宙イベントと、大樹町で打ち上げ実験を実施しており、大樹町での実験は通算30回目となった。 ※学年は当時
3月8日午前11時59分、青空に飛び立ったロケ
ット
TSRPでは、将来の宇宙技術者を目指して、机上だけでは学ぶことができない宇宙理工学の実践的な知識・技術の習得を目的に、「燃焼班」や「構造機構班」、「計測制御班」に分かれて活動している。固体燃料と液体酸化剤を利用する「ハイブリッドロケット」のほとんどの部品を学生が手作りし、打ち上げに臨んできた。
H−60号機は、技術の継承を目的として下級生を中心に製作。将来的な高高度への打ち上げに向けて、到達高度の計算や空力解析に役立てようと、より正確な速度を計測するピトー管を搭載した。さらに、昨年度のH−59号機で機体の外側に沿わせていた酸化剤の配管を内側に組み込み、空力性能の改善も図っている。
打ち上がったロケットを見守る学生たち
全長1.9メートル、直径154ミリ、重量11キロの機体には、2004年3月以来、30回目の節目となる大樹町での打ち上げを記念して、町のキャラクター「コスピー」のぬいぐるみも搭乗。ボディは同町の花・コスモスをイメージしたピンクのカラーリングに仕上げた。
20人のプロジェクトメンバーが3月5日に現地に移動。自作した全長5メートルのランチャーを設置し、機体の整備に取り組んできた。
大樹町宇宙交流センター内の格納庫を利用し、
整備に取り組んだ
調整重ね2日目に成功 高度408mまで到達
打ち上げ本番の7日は機体トラブルが発生し、実験を中止して機体を再調整。翌8日は早朝から準備を再開し、正午ごろに学生のカウントダウンと共にロケットが打ち上がった。高度408メートルまで到達し、機体を安全に落下させるためのパラシュートも展開。射点から北東524メートルの地点に落下した。
ランチャーにロケットを設置。不備がないか
細かく点検した
今回の実験でプロジェクトマネージャーを務めた小倉丈さん（工学部2年）は、「射場や整備場の提供だけでなく、キャラクターのぬいぐるみも使わせてもらうなど、大樹町の方々に多くの支援を受けました。TSRPと地域とのつながりを実感しました」と話し、「今後はTSRPの先輩方が達成した最高高度を超える上空3キロへの到達を目指し、マッハ1以上の速度を出せる機体を作っていきます」と意気込んだ。
プロジェクトアドバイザーの川端洋講師（工学部）は、「現地では学生たちの活動に対するモチベーションや一人ひとりの役割に対する意識も上がり、大きく成長してくれました。ロケットの開発はもちろん、特別な友人関係など大学ならではのプロジェクト活動が、彼らの今後の人生において忘れられない経験として残ってもらえるとうれしい」と語っていた。
1980年代に「航空宇宙産業基地」の候補地となって以来、「宇宙のまちづくり」を推進。宇宙航空研究開発機構（JAXA）や企業、大学などの航空宇宙関連実験を受け入れている。
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