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教育

2019/06/01

2年目を迎えた新カリキュラム

PA実践科目もスタート

東海大学で昨年4月から導入された新カリキュラムが2年目を迎えた。全学生必修科目の「現代教養科目」が大きく改訂され、学問の基本的な知識を身につける「基礎教養科目」、パブリック・アチーブメント(PA)型教育を軸とした「発展教養科目」と「健康スポーツ科目」が設置されたもの。今年度からは2年生以上を対象とした科目群「自己学修科目」も開講。PAを実践する授業で多数の学生たちが学んでいる。

東海大では建学以来、「文理融合」の理念を掲げ、2006年度からは「自ら考える力」「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」の4つの力をキーワードに、チャレンジセンター科目などを通じて「社会的実践力」の高い学生の育成を図ってきた。
 
この延長線上にある昨年度のカリキュラム改訂では、PA型教育の全学的な浸透を目指した教育改革が展開された。文部科学省の「平成25年度地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」の採択を受けていた「To-Collaboプログラムによる全国連動型地域連携の提案」による多様な教育研究活動をきっかけとしたものだ。 

現代教養センターと国際教育センターを中心に授業内容が検討されてきた「シティズンシップ」「ボランティア」「地域理解」「国際理解」で構成される「発展教養科目」(PA4科目)を1年生対象で開講。社会とかかわる自発的な意識や公共に資する判断と行動といった力を育成してきた。 

中心となって取り組んできた梶井龍太郎副学長(教育戦略担当・筆頭副学長)は、「全く新しい授業を開講することに当初は不安もありましたが、COC採択以来5年以上の時間をかけて準備してきたことで昨年度は各授業を順調に進めることができました。本学は建学の精神の下に『文理融合』を掲げてきましたが、21世紀の高等教育のあり方に沿った教育概念、方法が必要でした。発展教養科目を通じて学部間、キャンパス間の連携も進んでおり、形だけではない統一感をつくり出す効果も得られていると感じています」と語る。「自己学修科目」で社会人基礎力を養う
 
原則として1年生での履修となる「基礎教養科目」に対して、2年生以上の学生に向けてPA型教育を継続するのが「自己学修科目」だ。複眼的な思考を培う「文理融合副専攻」の科目群に加えて、「チャレンジセンター・プロジェクト実践」や「パブリック・スキル」「パブリック・ワーク」といった授業が開講されている。さらに発展教養科目の単位を得た学生らが、下級生が受ける同科目の授業でコーチを務める「コーチング実践」の授業やキャリア就職センターによる「キャリア形成」「キャリア設計」も開かれ、既定の単位を修得することで「社会的実践力副専攻」として認められる。
 
梶井副学長は、「本学では世に先駆けてさまざまな教育改革に取り組んできました。近年では健康学部と文化社会学部を新設し、社会における『QOLの向上』をその大きな目標としています。これらを通じて学生への教育内容の充実を図り、社会に『教育の東海大』としてのイメージを浸透させたい。今後さらなるカリキュラム改訂も見据えて、さまざまな施策に取り組んでいきます」と話している。

発展教養科目の授業とコラボ チームの構築を支援

今年度から現代教養センターが開講している自己学修科目「コーチング実践D」では、発展教養科目とのコラボレーション授業を実施している。
 
学生たちは、グループワークのスムーズな進行やアイスブレイクの手法を学び、発展教養科目の授業でグループワークの進行役を務め、話し合いを円滑に進める役割を担う。実践後にはフィードバックの時間も設け、学習支援に関する課題を解決して他クラスでも実践し力を養っていく。
 
5月17日には、現代教養センターの堀本麻由子准教授が担当する「コーチング実践D」の履修学生12人が、佐川耕平助教(工学部)が担当する「ボランティア」の授業に参加した。グループごとに美化活動や発展途上国への物資援助などのボランティアを企画し、メンバーを募集するポスターを作成して発表するプログラムだ。
 
学生たちは各グループの進行役を務めてグループメンバーの意見を引き出し、「運営資金はクラウドファンディングで募るのも一つの方法だよ」など要所でアドバイス。話し合いの場では、「チームの構築を〝支援する〞という立場から、自分で考える機会を奪わないようなアドバイスを心がけている」と口をそろえる。
 
学生たちが授業を履修したきっかけは、「塾講師のアルバイトをしているので、生徒への指導方法を学ぼうと思った」「所属しているチャレンジセンターのプロジェクトで活動する際、会議を円滑に進められるようになりたい」と人それぞれ。多様な場面で学びを生かしている。堀本准教授は、「チームの構築や円滑なコミュニケーションを図る能力は、文理問わず必要なスキル。実践を通して培ってもらいたい」と語っている。

関連記事=教育の現場から「教員の専門を生かした授業で学生の“市民性”を養う」

 
(図表)1年生を対象とした現代教養科目のうち「発展教養科目」はすべて1単位で、学生たちは1セメスターに「シティズンシップ」と「ボランティア」、「地域理解」と「国際理解」をセットで履修し、7コマずつ前半と後半に分けて受講する。2年生以降は自己学修科目で学びを深めていくことになる。基礎教養科目や文理融合副専攻の科目群も履修することで、知識と実践を組み合わせて複雑化した現代社会を生きるために必要な“4つの力”を育むことが大きな狙いとなっている(『東海大学現代教養科目ガイドブック』より引用)

(写真)「コーチング実践」の履修学生(中央)が進行するグループワークでは、佐川助教(左後ろ)も実現のためのアドバイスを送る。「ボランティアは正解がないので、自分の思想を押しつけず、互いの意見を考える機会をつくることが大切」と授業のポイントを語る
Key ward パブリック・アチーブメント型教育
立場や置かれている状況の異なる市民が社会で共存するためのルールをつくり、環境を整備していく中で、若者が市民性を獲得していくための実践と、これを推進するための学習プログラム。学生らが社会に出て実際に活動し、また地域社会からも学内に市民を迎え入れ、協働して課題解決を目指す。

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