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学生

2010/12/01

「COP10」参加学生座談会

6大学20人の仲間と力を合わせ「OKAGESAMA」の心を提言

生物多様性をテーマに議論を深め、「OKAGESAMA」の心を社会に向けて提言した「コカ・コーラ学生環境サミット」=キーワード参照。このサミットに東海大メンバーとして参加した教養学部4年の鈴木一星さんと松井愛さん、そしてサミット発足当初から学生らを見守ってきた教養学部の小澤紀美子教授に、活動を通じて得たことなどを振り返ってもらった。

「生物多様性」について学び考え続けた半年間
小澤 学生の皆さんが「OKAGESAMA」の心を社会に向けてアピールすると報告を受けたとき、とてもいい言葉だなと感心しました。半年間という短い期間で提言書をまとめるのは、大変だったと思います。

鈴木 生物多様性に関する議論を重ね、ようやく構想がまとまったのが名古屋での発表を目前に控えた9月末。生きもの同士のつながりへの意識と感謝の欠如に問題の根本があると考え、「OKAGESAMA」を提案することにしました。

松井 それまでは1カ月の間に3回もプレゼンテーション資料を作り直すなど、試行錯誤の連続でした。今回集まったメンバーは、学んでいる大学や専門分野も違う初対面の学生ばかり。しかも4月に顔合わせをした後は、スカイプやメールでのやりとりが基本。意思疎通がどこまで図れているのか常に不安でした。相手がどう思っているのか、どんな状況にあるのか? 考えながらやりとりをしていました。

小澤 人間はいろいろな価値観とぶつかり合って学んでいくものですが、対等の立場でディスカッションするだけでなく、相手に共感する気持ちも大事。集団で一つの物事を進めるときには、気苦労や気働きも必要になります。「OKAGESAMA」は、まさに皆さんの体験から導き出された言葉ですね。

多角的視野で解決策を見つける

鈴木 活動当初は頭でっかちな「理想論」を全員で追い求めていました。話し合いで出てくるのは、「こうしたら世界が動く」といったシステム論ばかり。「それを実現するためにはどうしたらいいのか?」という具体案を考える発想がなかった。僕自身はそれに違和感を覚えていました。

松井 8月に行った2泊3日の合宿を経て、なんとか議論の進め方や方向性を決めることができたと思います。その結果、10月の意見提言が終わった後も「OKAGESAMA」ネットワークを作って、私たちの考えを広げる活動を展開していくことに決まりました。

小澤 環境問題に関していうと、「現状がどうなっていてその可能性がどれだけあるのか」を多角的、多次元的に考えていかないと解決策は見いだせません。与えられたからやるのではなく、自分たちでその課題すらも見つけることが大切。その点においても、皆さんは貴重なキャリアを積みましたね。東海大学にはチャレンジセンターの環境キャラバン隊のように、学生の自由な発想を生かして環境啓発活動を行っている団体もあります。今後はこれらの団体とも協力して、ネットワークを広げていって下さい。

結果ではなくプロセスが重要

松井 今回の活動を通じて、普段の学生生活では得られない多くのことを学ぶことができました。以前、小澤先生からユネスコ21世紀教育国際委員会が提唱している「学習:秘められた宝」について教えてもらったことがあります。何のために学ぶのか、つまり「知ることを学ぶ」だけでなく「為すことを学び」「共に生きることを学び」「人間として生きることを学ぶ」といった内容だったと記憶していますが、まさにその通りだとしみじみ思いました。

鈴木 国際会議の場に初めて参加して、自分たちの意見や提案が世の中に対してどのような影響力を持っていくのかを真剣に考えることができました。環境を守るために活動することは大切です。しかしそれを継続・発展させるためには、国際会議などで話し合われている議題の主流にいかに持っていくのかも重要だと気づきました。

小澤 結果がすべてなのではなく、そこに至るプロセスに意味があるのです。そう考えると、意見提言の内容がすべてではありません。体験をして考え、また体験をして考え……。そのスパイラルの中で人は成長していきます。そこで培われた力こそが、今の社会が本当に求めている「生きた力」ではないでしょうか。


【Key Word】COP10関連イベントで意見提言
「コカ・コーラ学生環境サミット」

環境マインドを持った次世代リーダー育成の一環としてコカ・コーラ教育・環境財団が主催する「コカ・コーラ学生環境サミット」。10月に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で意見提言を行うことを目指して4月から活動を開始した。東海大学、慶應義塾大学、東京大学など6大学の学生20人で構成、東海大からは教養学部の鈴木一星さん(4年)、松井愛さん(同)、坂巻央(あきら)さん(3年)が参加している。学生らは分科会ごとに生物多様性に関する勉強と議論を深めつつ、7月には中間報告会を兼ねた国際集会、8月には北海道で合宿を実施。10月28日に名古屋学院大学で開催されたCOP10の併催屋外展示会「生物多様性交流フェア」で、半年間の活動の成果をまとめた提言書を環境省に提出した。提言書では、他者から受けた恩恵への感謝を表す日本語をもとに、“生きもの同士のつながりに生かされていることへの感謝”を表す「OKAGESAMA」(おかげさま)とその行動指針を提案。その普及に向けた取り組みとして、学生らによる「OKAGESAMA」ネットワークの発足も発表された。今後は、ウェブでの情報発信や出前授業などを展開していく予定。

 
座談会参加者(写真上から)

鈴木一星さん
学生環境サミットでは学生リーダーとして、メンバーをまとめてきた。「名古屋では他団体のブースを見学することができ、刺激になりました」

小澤紀美子教授
7月に行われた学生環境サミットの中間報告会を兼ねた国際集会には、パネリストとして参加。学生メンバーらと意見を交わしている

松井愛さん
大学では水素エネルギーを研究しているため、生物や環境は専門外。「生物多様性とは何か、といった初歩的なところから学び始めました」

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