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学生

2014/09/01

泊区公民館の建設をサポート

3.11生活復興支援プロジェクト
継続的な支援で復興に貢献


被災地に寄り添い、ともに歩み続ける―チャレンジセンター「3.11生活復興支援プロジェクト」(3.11LCP)が東日本大震災発生直後から復興支援活動を続けている、岩手県大船渡市三陸町越喜来泊(おきらいとまり)地区でこの夏、街の復興に向けた2つの大きな催しが開かれた。地域住民が集う“場”となる「泊区公民館」の落成式と、津波の到達ラインを「結(ゆい)の道」と名づけて散策路として整備する計画のスタートイベントだ。地域住民と密接に連携して活動する学生たちの姿を追った。

2011年3月11日の東日本大震災発生以降、大船渡市や宮城県石巻市などで、被災地復興支援活動に取り組んできた3.11LCP。今回公民館が落成した泊地区では同年5月に、工学部建築学科の学生やプロジェクトアドバイザーの杉本洋文教授(工学部建築学科)が開発した応急建築物「どんぐりハウス」を建設。応急公民館として提供していた。

その後も、この建物を拠点にして、地域住民との交流イベントの実施や杉本教授が理事長を務めるNPO法人アーバンデザイン研究体と連携して復興に向けたまちづくりのアイデアを出すなど、継続的な支援を続けてきた。

住民の意見を反映し、使いやすさを重視

今回の“本設公民館”の建設は、震災直後の特例措置として建てられたどんぐりハウスを撤去する必要が生じたことや、地区の集会所や拠点として恒久的に使用可能な施設が必要であることなどを踏まえて計画された。学生たちは杉本教授の指導を受け、住民の意見を反映しながら、建物の建築計画を進めてきた。

設計を担当した土方拓海さん(大学院工学研究科1年)は、「自分たちが“これでいいかな”と考えても、住民の方たちに意見を聞くと、全く違う見方があって驚きました」と振り返る。「たとえば、炊事場の広さや配置は大勢で使う場合を想定しなくてはならない。要望を聞き、それに応える大切さを学びました」という。

“どんぐり”から成長、復興の拠点として活用

学生たちは今年1月の起工以来、たびたび現地入り。棟梁として施工(棟梁)を担当した地元の大工・三浦洋一さんに協力し、屋根の板張りや窓のサッシ取りつけなどを手伝ってきた。7月26日に開かれた「落成式及び感謝の会」には、完成を喜ぶ地域住民や行政関係者らの中に、学生7人と杉本教授、プロジェクトアドバイザーで元チャレンジセンター所長の大塚滋教授(法学部)の笑顔が見られた。

「地域の高齢化が進む中、住民が集える公民館の役割は大きい。復興の拠点として活用していきたい」と泊地区の林明区長は語る。来賓として祝辞を述べた大塚教授は、「山火事が起きた時に最初に芽を出す“どんぐり”の名を持つ応急公民館が、本設の公民館に成長した。学生たちには今後もともに歩んでもらいたい」と期待を語った。

(写真上から)
▽「泊区公民館」は木造平屋建てで延べ床面積は120平方メートル。集会所として使える大広間や会議室、キッチンとトイレ、物置が備えられている。実施計画の推進では㈱計画・環境建築の協力を得たほか、建築資材などを横浜市の(株)ナイス、奈良県の㈱櫻井から集成材の提供を受け、「認定NPO法人国境なき子どもたち」からも資金協力を得ている
▽学生たちはたびたび現地入りし、棟梁の三浦さんの指示を受けながら作業に奔走した。「働き手の統制をきちんととらないと建物は完成しない。学生たちはしっかりと仕事をこなしてくれた。将来が楽しみ」と三浦さん
▽柱が組み上がり、屋根も乗った今年4月には上棟式も実施された。この地区では上棟式で屋根の上から餅をまく習慣があり、学生たちも屋根に上がって順調な工事の進行を祝った
▽応急公民館として地区の会議やイベントに活用された「どんぐりハウス」は今年5月に撤去。今後は津波で流された旧公民館跡地などに再建される計画も進んでいる

 
地域を結ぶ“道”づくり 住民の心をつなぐ活動を

「本設公民館建設」という大きな仕事を終えた3.11LCPは、泊地区での次の活動に取り組んでいる。海岸線から山側の高台へと続く、津波の到達ラインに遊歩道「結の道」を整備する計画だ。泊地区では、津波と防災集団移転促進事業により高台と低地に住宅地が分断されてしまっている。そこで遊歩道で2カ所を結び、住民の心の距離を縮めると同時に、日常的に津波の高さを認識し後世に避難時の目印として活用してもらうことを目指す。

8月24日には、3.11LCPが主催して「結の道―夏夜に浮かぶ光―」を開いた。遊歩道入り口の海側に「みなと口」、山側に周囲の景色にちなんで「さくら口」と名づけ、地域の子どもたちと一緒にそれぞれの看板を作成。草を刈って整えた路上に、約25メートルごとに50個の行灯(あんどん)を設置して道のりを照らした。「完成後の道を住民の方々にイメージしていただければ」と、イベントの運営リーダーを担った中津川毬江さん(工学部4年)。

看板作りや道のライトアップに加え、今後の活動計画についての説明会やプロジェクトメンバーと地域の方々との親睦会も実施。「一緒に結の道を歩いた子どもたちが、“楽しかった”と言ってくれた。将来、この地区を担っていく子どもたちに、活動の意味をわかってもらえたらうれしい」と中津川さんは話す。「結の道」計画は今秋から具体化に向けて動き出し、5年をかけて道を整備する予定。その間は随時、交流イベントなどを実施していく考えだという。

なお、今年度の3.11LCPでは大船渡での活動のほか、こちらも11年度に「どんぐりハウス」を建設した石巻市でも仮設住宅を訪問して交流イベントを実施している。プロジェクトの学生リーダー・花塚優人さん(同2年)は、「被災地の復興はまだまだ途中。実際に被災地を訪れることで、プロジェクトの意義を後輩たちに伝えていき、継続的な支援につなげたい」と話している。

(写真)結の道を計画している津波到達ラインに学生と地域住民が作った計50個の行灯を並べた

 
3.11LCPと泊地区の歩み
◆2011年3月11日、東日本大震災が発生。翌日には工学部建築学科の学生を中心にプロジェクト結成に向けた取り組みが始まった

◆11年4月に、公民館などが津波で流失して街の拠点が必要となっていた泊地区から、「どんぐりハウス」建設の依頼を受ける。5月の連休に学生が現地を訪れ、住民らと力を合わせて建築作業にあたった

◆「どんぐりハウス」を拠点にさまざまなイベントを実施。地区の高台移転計画作成にも協力し、たびたび会議にも出席してきた

◆13年8月には「思い出の『場』を作る」をテーマに、芝浦工業大学の学生らと共同でイベントを開催。記憶の可視化と継承を目指すと同時に、新たな交流の場所づくりに取り組んだ

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