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コラム

2012/01/01
文系・理系の枠にとらわれず、先生方の専門分野や活動から共通テーマについて考察。文理融合の精神が生きる東海大学の教育・研究を発信します
(Back Number掲載中)

「震災・防災を考える」⑤

健康科学部社会福祉学科 妻鹿ふみ子 教授

被災地に思いを寄せる
居続けることのできないボランティアにできること


被災地で活動したボランティアは、全国社会福祉協議会によれば、昨年12月4日までの集計で約88万人である。この数値をどう捉えるべきだろうか。今の時点で震災ボランティアの総括をすることは慎むべきだろうが、被災地へのアクセスの悪さを考えると、十分に多くのボランティアが活動したと考えてよいと思う。

今回の震災ではアクセスの悪さが「ボランティアバス」というツアー形式の活動を生み出した。遠方の自治体や社会福祉協議会、NGOなどが参加者を募り、必要な物資や機材を積み込んで、できるだけ被災地に迷惑をかけないスタイルでボランティアを送り込んだのである。ライフラインの回復が遅れる中、バスにすべてを積み込んで、現地では宿泊をせずに車内泊で活動をするボランティアのスタイルは初期のころは確かに理にかなっていた。

夏休み以後は、旅行会社が災害ボランティアセンターと組んで、観光とボランティアがセットになったツアーを売り出した。またたく間に満員御礼になったツアーもあったという。災害が起きると「何かしなくては」のボランティア精神が呼びさまされるのだと思うが、その思いを自力で形にすることは、今回はなかなか困難だった。沿岸部にある被災地は、簡単にたどり着けない場所が多かったからである。だから多くの人がツアーに参加してボランティア活動をした。そういう人々が含まれた88万人である。

しかし88万人という数は阪神淡路大震災の120万人には遠く及ばない。また、当時のような市民の力の爆発もなかったかもしれない。だが、人間関係が希薄化する一方の今の社会にあって、88万人が被災地の人々と連帯しようとしたのだ。この意味は大きい。ネット上で何でもすませられる便利な社会にあって、リアルな人間関係は疎ましいと普段は思っている人もいただろう。しかしそんな人が、泥かきやがれきの撤去という、人との協力なしには成り立たない活動に、初めて出会った人とチームをつくって取り組んだのである。被災地の活動は、深く静かに人々のつながりをつくり出したといえる。

しかし、かかわり続けることは実際には難しい。ボランティアは、いつかは被災地を離れ、自分の生活に戻らなければならない。もどかしいことではあるが、ボランティアとして、ずっとそこに「居続けること」はできないのだ。

ただ、想像力を失ってはならないと思う。被災地の人々に思いを寄せ、もし、自分が今いるところでできることがあれば、そこにかかわること。それは、語弊があるかもしれないが、半ば「お祭り騒ぎ」のようだった急性期の災害ボランティアが終わった今、かかわった者すべてに課せられた使命である。非常時の活動としての災害ボランティアは一定の役目を終えたといえるだろう。これからは平時の活動として、近くのボランティア、遠くのボランティアがそれぞれのスタイルで、被災地の人々を支援する仕組みが求められる。及ばずながら、その仕組みづくりにかかわっていきたいと考えている。

 
(写真)妻鹿教授の引率で宮城県亘理町の災害ボランティアに臨んだ学生たち(昨年6月下旬)

めが・ふみこ 1958年大阪市生まれ。神戸女学院大学大学院修了。文学修士。専門は地域福祉論、ボランティア論、NPO論。主な編著書に『学生のためのボランティア論』など。

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