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コラム

2013/08/01
文系・理系の枠にとらわれず、先生方の専門分野や活動から共通テーマについて考察。文理融合の精神が生きる東海大学の教育・研究を発信します
(Back Number掲載中)

「健康・スポーツを語る」④

健康科学部社会福祉学科
谷口幸一 教授

自立につながる運動
生涯の健康を支える運動スポーツ活動



伊勢原市と東海大学との「包括的な連携に関する協定」が2008年9月に締結され、伊勢原市民の健康・体力増進を目的に健康科学部と体育学部の教員で構成される「東海大学健康クラブ」(会長=健康科学部長)が発足。本学の任意団体として活動しています。同クラブの事業「市民健康スポーツ大学」(市民大学)は09年度から活動を開始し、10年度には伊勢原市初の総合型地域スポーツクラブとして文部科学省の認可も受けています。プログラムの内容も年々充実してきており、それに呼応して市民会員の参加人数も100人を優にこえるようになりました。これも伊勢原市教育委員会と、東海大学全体の協力、両学部の教員による協働体制のたまものと思います。

市民大学では各種の健康講座と実技からなる3種目・72回のプログラムが開講され、その半数が伊勢原校舎で実施されています。各プログラムは、担当教員とそのゼミの学生・大学院生のコラボレーションで企画されているため、学生にとっても地域貢献活動を体験し、また運動スポーツ指導の実習を積む場になっています。市民会員の大半は中高年世代ですが、運動に取り組む熱心な姿勢や態度は若者世代に劣らず積極的で、学生たちは生涯スポーツの醍醐味を身をもって味わうこともできています。

健康科学部に勤務する前、私は体育大学でスポーツに関する心理学的研究と教育に携わっていました。体育大学の学生たちとふれあう中で、私自身もスポーツの価値に目覚め、また学生や専門の教員に指導を受けたテニスやランニングの練習を通じて、スポーツの効用を体感できるようになりました。かかわること、実践することの重要性に目覚めたといっても過言ではありません。まずは体を動かしてみること、続けること、そして自分なりの充実感や楽しさを感じるようになること。これらが、運動のアドヒレンス(継続)につながり、生涯を通じてスポーツ活動に親しむ契機になるものと思います。この実感は、伊勢原市とのスポーツを通じた協働事業をプランニングする際の大きなエネルギーになったとひそかに思っています。

超高齢社会となった日本ですが、高齢者の入り口にたどり着いたのが、私たち「団塊の世代」です。大方の高齢者は75歳くらいまでは、身体能力も自立しています。その自立能力をさらに維持するために、その人の体力に見合った運動やスポーツは重要な手段になると思います。

国民の健康づくりのための国の政策として、「健康日本21(第2次)」が13年度から新たにスタートしました。厚生労働省が先に発表した「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という標語は、運動が健康づくりに有益な活動であることを認めた証しです。適度な運動を日々実践することは身体の虚弱化を防止し、認知症の予防にも効果があることが実証されています。運動やスポーツは人とふれあう絶好の手段です。同じ目的を持って協力・競合し合う時空間の中で、仲間となっていきます。社会参加の手段としてスポーツは、そのための格好の道具なのです。

 
(写真)2010年に行われた市民大学の様子


やぐち・こういち 1948年鹿児島県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修了。専門は生涯発達心理学、健康心理学。著書に『成熟と老化の心理学』『エイジング心理学』『スポーツ心理学ハンドブック』(以上、編著)などがある。

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