Column:Interview
2016年3月1日号
建築家として世界で活躍する
歴史を掘り起こし未来につなぐ田根 剛 さん
(2001年度北海道東海大学芸術工学部卒業)
10月にオープンする「エストニア国立博物館」の設計を担当し、新国立競技場のコンペでは「古墳スタジアム」を提案してファイナリストに選ばれた建築家の田根剛さん。1月30日には学生時代を過ごした旭川市の市民文化会館で「場所の記憶から建築を考える」と題した講演会を行った。
パリを拠点にアメリカやレバノン、日本などで20以上のプロジェクトを進める田根さんだが、建築との出会いは「たまたまだった」と振り返る。
「幼いころからサッカー一筋。付属浦安高校から大学に進学する際に、北海道の自然に憧れたのと、芸術工学部の名前が格好よかったので決めました(笑)。でも実際に学び始めたら建築が面白かった」
在学中からヨーロッパを巡り、3年時にはスウェーデンに留学。卒業後、ロンドンの建築事務所で経験を積んでいたときに転機が訪れる。のちに共同で建築事務所「DGT.」を設立するイタリア人のダン・ドレル氏とレバノン人のリナ・ゴットメ氏と出会い、エストニア国立博物館のコンペに応募。ソ連時代の空軍滑走路跡を生かしたデザインで、最優秀賞を獲得した。
このデザインをきっかけに、“場所の記憶から建築を考える”ことを大切にするようになったという。「建物が建つ土地の意味や歴史を掘り起こして未来につなぐのが仕事。リサーチして、模型をつくっては検証し、現地で説得や交渉をして“この場所にはこれしかない”と思えるデザインを探します」
もし、建築家になりたいと言う学生がいたら、「やめたほうがいいと答えます(笑)。人生相談でなれるような職業ではないですから」と話す。道を切り開いて突き進んできた経験があるからこそ、学生たちに向けて、「夢を持って日々を生きることが大切。そうすればすべてが自分の糧になるはず。新しいことに挑戦する勇気を楽しむこと」とエールを送った。