News:付属諸学校
2020年10月1日号
広がるSDGs教育
校内外のフィールド生かした多彩なカリキュラム

現代社会のさまざまな課題を解決するべく、2015年に国連が策定した持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable DevelopmentGoals)」。国や自治体だけでなく、さまざまな団体や企業、学校などでも取り組みが進む中、学園の付属諸学校でも、付属大阪仰星高校・中等部、付属静岡翔洋高校、付属浦安高校・中等部で総合的な学習の時間や土曜授業を活用したさまざまな活動が展開されている。

【大阪仰星中高】社会と直結した教育 地域課題を「自分事」に

大阪仰星中高で7月22日に「SDGsミーティング」が開かれた。NPO法人ひらかた市民活動支援センターの職員を招き、生徒有志や教職員がカードゲームを通じてSDGsの理念を学ぶもの。生徒からは、「これまでにもワークショップなどに参加してきたこともあり、SDGsへの理解が深まっています」といった声が聞かれた。

同校は2010年度から「team Gyosei」をスローガンに掲げている。生徒や保護者、教職員、卒業生、地域住民ら大阪仰星中高にかかわるすべての人が「1つのチーム」になった学校を目指すという思いが込められている。

「本校の教育方針である地域に根差した教育は、SDGsの理念と通じる点が多い。今後の社会で必要な能力を養うためにも、SDGs教育には力を入れています」と小寺建仁校長は語る。

同校では18年度から、授業や課外活動をSDGsの目標と連携させ、生徒一人ひとりの意識を向上させようと「ESDプロジェクト」を推進している。日々の教育活動とSDGsの結びつきを議論する定例の教職員ミーティングを設定。東海大学教養学部の岩本泰准教授を招いた教員研修会や外部講師によるSDGsワークショップなども積極的に開いている。こうしたさまざまな取り組みを通じて、各教科のシラバスは何らかの形でSDGsの目標とひもづけられ、これまで以上に社会と直結したカリキュラムの構築にもつながったという。

さらに、19年度には学園の建学の精神とSDGsの理念を合わせて具体化した「team Gyoseiで身につける10のチカラ『TG10Cs』」を策定。「自分で学ぶチカラ」「健やかに生きるチカラ」など生徒にも伝わりやすい言葉を用いて、校舎の各所に掲示し、意識の向上を図っている。
 
生徒たちも、同年には高校生徒会に内部組織としてボランティアチーム「GAFSS(Gyosei'sAction for Sustainable Society)」を発足。ほかの生徒もボランティア活動だけでなく、行政や地域住民との意見交換に参加し、地域の課題を「自分事」として考えることができるようになった。

小寺校長は、「生徒たちは持続可能な社会の実現に貢献する人材へと成長するための大切な経験を積んでいます。これからもteam Gyoseiで一丸となり、よりよい教育環境の整備を進めていきたい」と語っている。

【静岡翔洋高】地元企業と連携 持続可能なお茶を開発

静岡翔洋高のサタデーセミナー理科を選択する1年生80人が、「科学の力で世界平和!!With  SDGs」をテーマに、地域の特産品である静岡茶の商品開発に挑戦。9月12日の授業では第1次試作品の試飲と意見交換が行われた。

静岡茶の持続可能な生産・消費を若い世代に促そうと、味やパッケージデザインを開発する取り組み。茶葉を生産する蟷咳僂函県内で生産された商品を取り扱うパルシステム静岡の協力で実施された。

今回は、静岡県発祥の加糖された抹茶「グリーンティー」のオリジナル商品を企画。12日の授業では、異なる砂糖を配合した2種類を生徒たちが試飲し、「渋みが少ないと子どもも飲みやすい」「配合する砂糖の種類が違うと茶葉の香りも変わる」など意見を交わして、甘み、コクなどを項目別に評価した。今後は試作を重ね、授業の中で商品名やパッケージデザインを検討。年明けに販売される予定だ。

授業を担当する品川杏彩教諭は、「私たちにとって身近なお茶からSDGsの意義を考えてもらいたいと思い企画しました。商品開発を通じて生徒の家族や友人、地域の人々にも興味を持ってもらえればうれしい」と授業の意図を語る。

基礎を土台に多様な学びを 社会とつながる実践授業
同校では週6日制に移行した2015年度から土曜講座を開始。そのうちの一つであるサタデーセミナーは、各科目の教諭が独自にテーマを設定し、実践形式の授業が展開されている。企業と連携した授業も多く、今年度は「ビジネスイノベーション」の授業で起業に関するディスカッションを行うなど、社会とつながる多彩な授業が展開される。

村上英治校長は、「これからの社会では、学んだ知識をいかに活用できるかが重視される。土台となる基礎は週5日の座学でしっかり学び、サタデーセミナーは実践の場として役立ててもらいたい。社会の課題解決に向けてアイデアを考えることは、SDGsの目標達成にも自然とつながるはず」と期待を寄せている。

【浦安中高】シティズンシップ教育導入へ企業のプロジェクトで学ぶ

浦安中高では今年度から、SDGsに掲げられた課題と結びつけた授業の実践が始まっている。同校では土曜日も授業を行う週6日制に移行した2016年度から、土曜授業「浦安人生学」を開講。「大学の先にある人としての在り方生き方の探求」を掲げ、東海大学や企業、研究機関も連携して、社会性やボランティア、日本文化など多種多様なテーマの講座を開いてきた。SDGsに関する授業もこの枠内で実施している。

「浦安人生学は、中等部から高校までの6年間で、思いやり、キャリア教育、課題学習の各面から社会に出たときに必要となる能力を磨くことが目標です」と茂泉吉則校長は語る。

SDGs授業は浦安人生学をさらに発展させ、市民として必要な要素を備え、自らの役割を果たせるようになることを目指す「シティズンシップ教育」につなげることが目的だ。茂泉校長は、「浦安人生学を5年間継続してきたことで、生徒たちは他者を思いやり、自らの考えを述べ、授業に積極的に参加するというように成長してくれました。シティズンシップ教育を取り入れることで、さまざまなコミュニティーで力を発揮できる社会的リーダー育成につなげたい」と力を込める。

今年度は中等部2年生を対象に、先行授業を実施。7月から総合的な学習の時間で、ユニクロを運営するファーストリテイリング社が主宰する「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」に取り組んでいる。参加する子どもたちが主体となり、不要になった服を回収して世界各地の難民に届ける活動だ。

生徒たちは、授業内でSDGs自体について学び、服の回収や協力の呼びかけなど、プロジェクトへの参加を通じて学びを深めている(次号で授業の様子を紹介)。

浦安中の福島章喜副校長代行は、「全校的なSDGs授業は来年度からを予定していますが、生徒たちにはボランティア精神やグローバル視点に立ったものの見方を学んでもらいたい。“自分に何ができるか”を考え、思想を培う機会になれば」と期待を寄せている。

【専門家に聞く】
SDGsとはどんな目標?
身近な課題からひもづけよう

教養学部人間環境学科自然環境課程 岩本 泰 准教授

SDGsの教育を研究する東海大学教養学部の岩本泰准教授に、目標策定の経緯や意義について解説してもらった。

国連は2000年に、SDGs(SustainableDevelopment Goals)の前身であるMDGs(Millennium Development Goals)を策定しました。「極度の貧困と飢餓の撲滅」「乳幼児死亡率の削減」など、主に途上国における課題解決を見据えた8つの目標からなり、“先進国が途上国を支援する”という意味合いが強いものでした。
 
MDGsは達成期限の15年までに一定の成果を挙げたものの、未解決の目標や新たな課題が浮き彫りとなりました。このままでは“持続不可能”な社会になると、環境や開発などの専門家が警鐘を鳴らしたのです。

これを受けて国連は15年9月に「国連持続可能な開発サミット」を開催し、150をこえる加盟国首脳のもと、新たにSDGsを策定しました。
 
SDGsは、17の目標と169のターゲット(小項目)で構成され、“地球上の誰一人取り残さないこと”を共通の理念としています。MDGsとの違いは、途上国だけでなく先進国も取り組むべき普遍的な目標であること。「健康と福祉」「ジェンダー平等」「海洋資源の保全」「質の高い教育」などテーマは多岐にわたります。

一つひとつひもとくと、私たち日本人にとっても身近な課題であることがわかると思います。“遠い国の話”ではなく、まずは自分事として捉えることがSDGsの目標達成に向けた第一歩になるのです。

 
(写真上から)
▼研修NPOと連携してカードゲームでSDGsを学ぶ生徒たち
▼地元の岩本准教授を招いた教員研修
▼砂糖の種類を変えた2種類のグリーンティーを飲み比べ、商品化に向けて評価する
▼9月12日に行われた授業では、「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」で服を回収するための箱も制作した