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コラム

2010/10/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

学びながら作る「東海大学検定」

チャレンジセンター 園田由紀子 講師


皆さんは、「東海大学」と聞いて何をイメージされるでしょうか? 以前、学生に「東海大学」のイメージを聞いたことがありました。出てきたのは、「スポーツ(体育)」「柔道」「駅伝」「ル・マン」など……。さらに、「自分の大学が好きですか」と質問すると、「普通」「微妙」「別に」とあまり覇気のない答えが返ってきました。大学アイデンティティーが必ずしも強くない校風なのかもしれませんが、自分の大学についてよく知らないのかな、という印象を持ちました。そこで、学生が楽しみ、能動的に考え、大学についても学べる「東海大学検定を作る」という授業を考えました。

授業では、東海大学歴史と未来の博物館(松前記念館)の見学や、創立者・松前重義博士の生涯を描いたドラマ「名利なき証言」などの映像資料を使って、大学の歴史を知ることから始めました。そして、それを基に学生たちに東海大学検定に必要な問題の項目を考えてもらうことにしました。問題作成にあたっては約120の項目を決め、同じ問題が重複しないように項目ごとに担当を分け、一人5問を目標として問題作成に取りかかりました。学生たちは、東海大学50年史や松前重義博士の著書などの図書資料を読み込み、見つからない資料は、図書館、学園史資料センター、国際教育センター、入学広報課などに行き調べていました。中には、九州や北海道のキャンパスに電話取材する学生までおり、その行動力にはとても驚かされました。

「先生、すごいことが分かったんですよ」と、汗だくになりながら駆け込んできたり、「先生、知ってる?」と自慢げに問題を見せに来たり、授業が進むにつれて、学生たちの元気な姿が増えてきました。そのうちに「なぜ理系のイメージがある大学なのか分かった」「この大学を誇りに思う」「自分の子どもも東海大学に行かせたい」「松前先生の考えを知ると勉強しなくちゃいけないと思う」など、それまでに聞くことのなかった大学への思いを口にする学生も出てきました。最終的には「湘南キャンパスの欅(けやき)の本数は?」をはじめ、「阿蘇キャンパスの面積は東京ドーム何個分か?」「東海大学の校章のモチーフは何か?」など、案外知られていない面白い問題や建学の歴史に関する問題、卒業生についての問題など、約60問を作ることができました。

授業後のアンケートでは、全員が「大学のイメージが変わった」「もっと他の学生にも大学を知ってもらいたい」と回答。具体的には「松前重義博士について」「建学の意味」「どんな理念をもとに設立された大学なのか」などのイメージが変わり、建学の歴史や創設者の生涯について、他の学生にももっと知ってもらいたいという回答が多く見られました。

今後もチャレンジセンター科目「挑み力Ⅲ(演習B)」の中でこの演習を続け、東海大学に関する問題の作成と解説の充実を図りたいと思っています。検定完成までは、ほど遠い道のりです。しかし一生懸命に問題を作ってくれた学生のためにも、いずれはインターネットを活用し、多くの人に東海大学を知ってもらえる検定を完成させたいと思っています。問題作成に奔走する学生を見かけたら、応援してあげて下さい。

 
そのだ・ゆきこ 1972年神奈川県生まれ。東海大学大学院文学研究科コミュニケーション学専攻博士課程後期満期退学。文学修士。専門は社会学、地域社会学、地域情報化論。

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