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コラム

2011/11/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

フィールドワークとコンパと卒論

文学部歴史学科日本史専攻 星野尚文 准教授

私は、2004年から歴史紀行会(以下、紀行会)の顧問を務めています。紀行会は、歴史学科日本史専攻の学生が運営しているサークルで、活動の中心はフィールドワーク(以下、FW)です。学生たちは年数回、神奈川や東京などの史跡を探訪し、夏休みには2泊3日程度の旅行をしています。

なかでも毎年恒例なのが、5月に行う新入会員歓迎を兼ねた鎌倉FWです。午前10時から午後3時ごろまで5時間かけて、鎌倉市内約10キロを歩きます。実際に歩くと、数カ所にがけに挟まれた急な坂道(切り通し)があることに気づきます。学生たちは難所を自ら体験することで、源頼朝がここに幕府を設けた理由を理解します。これは本を読むだけでは分からない、FWならではの面白さといえるでしょう。

実はこの紀行会、一時存続の危機を迎えました。時代の波なのか、年々会員数が減り続け、2008年度には新入会員が0になったのです。正直なところ、「なくなるのも時間の問題か?」と危惧しました。ところが、10・11年度に相次いで20人前後が入会したのです。2年続けて本専攻の新入生の約3分の1が入会するというのは、全く予想外のことでした。これと比例するように、FWを取り入れた科目「地域史演習」の履修者も増えています。06年度から開講しているこの科目は、当初3、4人程度しか履修していませんでしたが、10・11年度は10人程度が履修しているのです。

こうした変化は、若者の気質が変わったためなのか、気になるところです。東日本大震災で人々の価値観が変わったともいわれますが、それでは震災前の10年度から増えていることを説明できません。学生に聞いてみると、「歴女」に象徴される歴史ブームともちょっと違うようです。いろいろ考えてみても、その理由はよく分かりませんが、FWに参加する学生が増えることが、よい変化であることは間違いないでしょう。

話は少し変わりますが、今年3月に卒業したゼミ生(07年入学生)10人は、6セメスターの「卒業論文基礎Ⅰ」から8セメスターの「卒業論文」まで、一人も脱落することなく卒業しました。最近気づいたのは、彼らはゼミの飲み会を開くと、必ず全員が参加していたということです。さかのぼると、02年度入学のゼミ生8人も同様でした。02年度生と07年度生に暇な人が多かったとは思えず、おそらくアルバイトなどの予定をやりくりしていたのでしょう。

そこで考えるのは、コンパの出席率と卒論の執筆には関係があるのではないかということです。他のゼミ生とスケジュールを調整したり、バイト先の上司にシフトの変更を交渉したりする能力は、卒論をまとめる能力に通じるようにも思えます。またゼミ生がまとまると、卒論の提出率が高くなることも実感しています。結局、卒論担当教員の重要な仕事は、ゼミをまとめることなのでしょう。とはいえ、ゼミをまとめる魔法があるわけではないので、私は少し酒の力を借りることにしているのです。

 

ほしの・なおふみ 1964年新潟県生まれ。駒澤大学文学部卒業。明治大学大学院文学研究科史学専攻単位取得満期退学。専門は、明治維新史。

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