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コラム

2012/10/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

商品開発の現場で達成感を得る

政治経済学部経営学科 三宅秀道 講師


私は「三宅自主ゼミ」と称して、授業やゼミとは別に学生を連れて、神奈川県東部あたりの企業のオフィスや工場、店舗をインタビューに行くようにしています。そもそもは東海大学に着任した年、学生が「大したことのない大学に入っちゃったし」と言うのを聞いたのがきっかけでした。否定しようとしても、口だけでは説得力がありません。そういう根深い劣等感を拭うには、現場に出て、自分の実際の見識を見極めさせたいと思ったわけです。それで調査取材に学生を同行させたのですが、もしそこで失礼があれば自分の研究にも差し障るので、礼儀は口うるさく指導しました。学生も自分たちで気をつけ、注意し合うようになり、今ではあまり気にしなくてすむようになりました。

そのうちに縁あって、企業の新商品開発を学生に任せていただける機会に恵まれました。詳細は本紙前号で紹介されましたが、川崎市にある老舗の煎餅メーカーのイベント販売向けの新商品を、3年生を中心とする約10人の学生グループで半年以上かけて開発しました。本当に力のある新商品を開発するために、全くのゼロからコンセプトを考え、生産技術上の専門知識を企業の方からうかがった以外は何もかも、リサーチから最後の販売まで学生たちだけでやり遂げました。

結果としては、立派にこれから店頭に定着しそうな新商品ができました。商品開発コンサルタントの経験がある私でも、これだけのクオリティーの商品が開発できたなら、お金をもらっていいと思えます。新商品は「神奈川新聞」で紹介され、ツイッターでも、口コミでうわさが広がり、店舗にも問い合わせが多いそうです。これはもちろん、多くの方々とのご縁でさまざまな支援をいただいてのことですが、ありがたいことにお世話になった川崎市の産業振興財団からは、「これからもまた機会をつくって、いろいろな企業と交流してほしい」とお声をいただいています。

私自身がこの体験からあらためて学んだことは、自分でした予想に自分が縛られる「予言の自己成就」の怖さでした。こういうことをしてみた後では、「優秀な学生を集めたんでしょう」などと言われることがありますが、決してそんなことはありません。最初は不器用でポカが多く、社交ベタで考えも浅い学生が、この体験を通して、今はそれなりに優秀になったと感じています。私は授業でもいろいろ取り組みを紹介しては「学生でも誠実に問題に取り組めば、こういうこともできるんだよ」と、学生たちを挑発しています。

学生と大学が、どうせダメ大学、どうせダメ学生、と相手のせいにし合って可能性を試さないでいると、本当にお互い大したことのない大学と学生になる。逆に、やればできるんじゃないか、苦労をすればしただけ伸びるんじゃないか、となれば、今度はいい意味で本当に大した学生になる。そう言えるだけのことができたと思っています。
 

(写真)イベント会場で新商品を販売


みやけ・ひでみち 1973年兵庫県生まれ。早稲田大学大学院商学研究科博士課程退学。商学修士。東京都品川区産業振興課工業係、東京大学ものづくり経営研究センターなどを経て現職。専門はベンチャー企業論、製品開発論など。



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