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研究

2022/01/01

「デルタ株」の高い病原性と原因変異を特定

【医学部医学科】

医学部医学科基礎医学系分子生命科学の中川草講師(総合医学研究所、マイクロ・ナノ研究開発センター)らの研究グループが、新型コロナウイルス「デルタ株」(B.1.617.2系統)が従来株と比べて高い病原性を示すことを発見。論文が昨年11月25日に、イギリスの権威ある科学雑誌『Nature』オンライン版に掲載された。

この成果は、東京大学の佐藤佳准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2PJapan)」が発表。中川講師は大規模な遺伝情報を活用してウイルスの同定や進化の解析などに取り組むゲノム科学の専門家として、同コンソーシアムに参加している。

新型コロナウイルスは流行の過程で、感染力が強くなったり免疫から逃れたりするなどの性質の変異(変異株)が生じる。2020年末にインドで発生したデルタ株は全世界に伝播してパンデミックの主たる原因となっており、世界保健機関によって、警戒度が最も高い「懸念すべき変異株(VOC)」に指定された。

研究グループはデルタ株のウイルス学的特性を調べるため、まず培養細胞を用いた感染実験を実施。デルタ株は従来株や他のVOCよりも細胞同士が融合する活性が高く、巨大な細胞塊(合胞体)を形成することを見いだした。次にハムスターを用いた実験により、従来株に比してウイルスの増殖効率は同程度であるものの、病原性が高いことを明らかにした。

さらにその要因を解明するため、細胞と結合するとげ状の「スパイクタンパク質」に生じるデルタ株特有の変異「P681R」に着目。P681Rを挿入して人工合成した新型コロナウイルスを使ったハムスターへの感染実験などにより、デルタ株が高い病原性を有し、その特性はP681Rというたった1つのアミノ酸の変異によって担われていることを解明した。

中川講師は、「ウイルスの変異を抑えることは原理的に不可能ですが、感染者数を減らすことで、有害な変異の発生やそれが伝播する危険性を低下させることは可能と考えます。今後も新型コロナウイルスの変異とその変異が感染拡大に寄与する可能性を明らかにする研究に注力したい」と話している。

 

(写真)国内外の研究者と連携し、新型コロナウイルスの解析に取り組む中川講師

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