研究
2024/10/01
情報技術センター(TRIC)が今年度に開設50周年を迎え、9月14日に品川キャンパスで記念行事が開催された。TRICは、衛星リモートセンシングをはじめ、地球観測や画像技術の先端研究を展開し、大学の研究成果の高度利用を目指す研究機関として1974年に開設。現在は、学内外の研究機関や行政、企業と連携しながら画像情報分野を中心に幅広い研究のほか人材育成にも取り組んでいる。
約130人が出席した当日は、まず第1部として情報技術センター研究報告会を開催。中島孝所長(情報理工学部教授)のあいさつに続いて、TRIC所員を兼務する教員ら5人が2023年度に取り組んできた移動体ナビゲーションや災害のソーシャルメディア利活用、コンピュータ筆跡鑑定などについて成果を披露した。
第2部の開設50周年記念行事では、冒頭に司会の竹村憲太郎TRIC次長(情報理工学部教授)が、初代所長を務めた松前達郎総長が9月8日に逝去し、所員一同で黙祷を捧げた経緯を説明。続いて、松前義昭理事長・学長によるあいさつの動画が上映された。松前理事長は、自らも1987年度から所員として所属したTRIC設立の経緯や研究活動などを回顧し、「50年の歴史は、歴代の教職員の努力で素晴らしいシステムを構築してきたからこそ」と述べ、関係企業や公的機関関係者への謝辞が語られた。
坂田教授らしのび新機軸研究も披露
次に前所長の長幸平特任教授が活動沿革を振り返った。74年の設立から、81年のランドサットマップ開発、86年の宇宙情報センター設立、翌年に打ち上げられた地球観測衛星MOS-1のデータ受信など多彩な活動に触れ、「松前達郎総長と共に創設に携わった坂田俊文先生と下田陽久先生のお二人の高い志と行動力が研究を発展させてきました」とTRICの活動における中心を担った坂田名誉教授、下田名誉教授の功績をたたえた。
続いて登壇した中島所長は近年の活動を説明。「地球環境や視聴覚、安全安心、古文化財遺跡調査をキーワードにした活動のほか、新機軸としてIT農業、画像認識によるロボット制御、情報と農活動に関する研究が始まっています」と語った。
さらに、宇宙飛行士で日本科学未来館名誉館長である毛利衛氏による特別講演「地球観測からの未来智」も行われた。終了後には来場者から多数の質問が寄せられ、毛利氏が一つひとつ丁寧に回答した。
開場を学生食堂「コメドール」に移した第3部では、虎谷充浩教授(TRIC・建築都市学部)の進行で、懇親会と共に「坂田俊文先生思い出の会」も開かれた。TRIC事務職員として坂田名誉教授の活動をサポートした鈴木清恵さん、坂田名誉教授の教え子で月刊誌『写真工業』の編集長を務めた工学部卒業生の市川泰憲さんが登壇し、参加者が熱心に聞き入る様子が見られた。
◆1974年 アナログ画像処理システムを導入
◆1977年 デジタル画像処理システムを導入。画像処理システムおよびソフトウェアの開発を開始
◆1982年 ランドサット画像による日本列島モザイクが完成
◆1984年 衛星画像による地球回転画像を世界で初めて制作
◆1985年 気象衛星によるリアルタイム地球回転画像作成に成功。世界初となる衛星地球儀が完成
◆1986年 宇宙情報センターが開設。チェルノブイリ原発事故解析や日航機事故画像解析などに取り組む
◆1989年 法隆寺壁画画像処理を手がける。横浜博覧会で「地球体験館」を企画・運営
◆1992年 太平洋漂流ブイ実験開始
◆1995年 未知のピラミッド探査を開始。96年にダハシュール北遺跡を発見
◆2002年 ブロードバンド放送用衛星画像ソフトを作成
◆2004年 東海大学山岳部「西崑崙登山隊2004」への衛星データ資料提供
◆2007年 超高精細4K映像システムを導入
◆2011年 特別セミナー「地球観測衛星画像・東日本大震災―次の災害に備えて―」を開催
◆2013年 文学部と東海大学所蔵古代エジプト・パピルス文書の修復保存・解読・出版に関わる共同研究
◆2016年 湘南19号館屋上に衛星受信アンテナを新設。私立大学ブランディング事業「災害・環境変動監視を目的としたグローカル・モニタリング・システムの構築による安全・安心な社会への貢献」を開始
◆2017年 海上保安庁から海氷の衛星データ提供に対する感謝状を受領
◆2023年 気象庁気象研究所と線状降水帯の機構解明及び予測技術向上に資する研究の推進に関する協定を締結。線状降水帯研究会を開催
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