研究
2025/01/01世界初となるマダコの陸上養殖実用化へ――。近年、世界的にタコの需要が高まっている。そのため国内では供給不足に円安が重なり、販売価格が高騰する中、海洋学部水産学科の秋山信彦教授らの研究グループが革新的な技術開発を続けている。2030年の実用化に向け、水産業界や飲食業界、漁業関係者からも大きな注目を集める研究に迫った。
静岡キャンパスから車で10分ほどの距離にある養殖研究施設には、成長段階や与える餌によって分けられたマダコの水槽が並ぶ。秋山教授が近づくと、餌をねだって足を水槽の外に出し、水を吹き上げて活発に動き出す。秋山教授は、「ここまでできるとは、正直思っていませんでした」と感慨深げに振り返る。
研究がスタートしたのは11年。東日本大震災の復興支援を目的に、たこ焼き店「築地銀だこ」を展開する株式会社ホットランドが本社を宮城県石巻市に移転した。同社は、東北大学や宮城大学とマダコに関する研究をスタートさせ、東海大学に研究協力を依頼。国立研究開発法人科学技術振興機構による「A-STEP企業主導フェーズNexTEP-Aタイプ」の支援を受け、秋山教授が陸上養殖方法の開発を担当することとなった。
これまでマスやタツノオトシゴなど数々の水生生物の養殖に成功してきた秋山教授だが、「マダコは、なわばり意識が強く共食いもすれば脱走もする。餌の好みもあるので、国の研究機関も養殖に失敗してきた。成功させる自信はなかった」。
「タコマンション」に活路 人工餌や飼育容器も開発
飼育を始めると、その不安はすぐに的中。水槽を飛び出したマダコはドアに張りつき、建物からも逃げ出して道路でカラスについばまれることも。けんかを防ぐために水槽内にタコ壺を複数入れてみると、水流が悪くなり、マダコたちがあっさり死んでしまう事態も相次いだ。死骸は溶け出して水質を悪化させるため、「飼育方法を探ることから始まった」という。
さまざまな生物の養殖方法を取り入れる中で、アワビの稚貝の付着基盤にヒントを見いだした。ポリ塩化ビニール製の板を等間隔に重ねて置くと、最下段にマダコが入り込むようになった。しばらくするとマダコがシェルターを倒し、縦向きになった板の全ての隙間にマダコが入り込み、互いを襲うこともなくなった。秋山教授は、「今でもシェルターに入ったマダコがおとなしく生活する理由は分からない」と苦笑い。この「タコマンション」と呼ぶシェルターは、19年に特許を取得。陸上養殖実現に向けた大きな一歩となった。
生態系と食文化を守る 学生・大学院生も尽力
その後、栄養素の多い人工餌の開発にも成功し、産卵からふ化も可能になった。大きさが数ミリの幼生期は水中を浮遊し、着底した後に稚ダコ、成体へと成長していく。幼生期には餌を浮遊させる必要があるため、水流をつくり、投入した人工餌の沈殿を防ぐ「幼生用飼育容器」も考案した。現在は着底前後の生存率向上を目指し、幼生用の人工餌開発にも着手。特許出願の間近まで迫っている。
秋山教授は、「学生たちが頑張ってくれたからこそ今がある」と語る。大学院在籍時にタコマンションの開発に尽力した鈴村優太さんは、現在では特定助教として勤務し、研究室の後輩たちと飼育に力を注ぐ。「試行錯誤の連続。年末年始も休みなく研究に励みます」と笑顔を見せる。秋山教授は、「今後も生態系と食文化を共に守るシステムの構築に貢献したい」と意気込んでいる。
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