研究
2022/12/01
大野准教授（右）と宮本助教
医学部医学科内科学系循環器内科学の宮本淳一助教と大野洋平准教授らが、重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術（TAVI）と術後の肺高血圧症との関係を分析。その成果をまとめた論文が10月25日に、アメリカの権威ある心臓病学会誌『Journalof the American College of Cardiology』に掲載された。
重症大動脈弁狭窄症は、心臓の左心室と大動脈の間にある大動脈弁が加齢などによって硬くなり、開きにくくなる疾患。狭くなった弁から全身に血液を送るため心臓に過度の負担がかかり、重症化すると息切れや気を失うなどの症状が起こる。TAVI治療は、脚の付け根の血管に通した管（カテーテル）から人工弁を送り込み、古い弁を押し広げるようにして植え込む術式で、低侵襲治療として普及している。
宮本助教と大野准教授らはTAVI治療において、術前に肺高血圧症（右心室と肺をつなぐ肺動脈の血圧が高い状態＝PH）を発症していると予後が不良であることに着目。TAVIに関する多施設前向き登録研究「OCEAN-TAVIレジストリー」に登録された1872人の患者を術前術後のPHの状態に合わせて4分類し、周術期のPH変化の予後への影響について調査・分析した。その結果、術後2年経過時の死亡率は、術前術後にPHがある患者と術後に新たに出現する患者で高いことや、術前術後にPHがある患者には、術前に心房細動や中等度以上の三尖弁閉鎖不全があることなどを確認。さらに、体格に比して小さい人工弁が留置される「人工弁患者不適合」が術後のPH発症の要因となることを特定した。
大野准教授は、「高齢化が進み、重症大動脈弁狭窄症の患者さんは増加すると予想されます。この成果を治療戦略に生かすべく、さらに研究を続けます」と語った。
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