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コラム

2015/05/01
何度も読み返した小説やマンガ、学生時代に読み込んだ教科書、人生を変えた一冊など、東海大学の先生方が大切にしている本を紹介します。

『変貌するチームリーダー』


よいチームリーダーになるために

経営学部経営学科 
藤井一郎 教授



この書籍は、30代から40代前半の企業に勤務するビジネスマン向けの自己啓発書として発行された。過度の成果主義やなかなか増加しない正社員数により日本企業の組織能力が衰えている。これを脱却するには個人プレーから再び質の高いチームによる活動が重要であると訴えている。そのうえで、よいチームリーダーになるための4つの観点から計12個の秘訣を挙げている。4つの観点とは、自分を成長させる、仲間をアシストする力を磨く、チームの質を高める、チームの成功に導くである(12の秘訣はぜひ本を手に取って読んでほしい)。

このように書くと、書店に並んでいるいわゆる自己啓発書の類と思われがちであるが、この書籍は執筆者の実体験をもとに、経営学の論理を踏襲して書かれているため汎用性がきわめて高い。この執筆者は政府系の金融機関を経て現在金融機関系の戦略コンサルティング会社に勤務している。大中小規模を問わず企業支援を続けてきたキャリアを持つ。

実は執筆者と私は20年以上昔に中小企業診断士を取得した同期生でありそれ以来の友人なのであるが、おそらく日本の中でも規模、業種を問わないコンサルタントとしては最も実力がある一人であろう。またまたこのように書くと冷たいコンサルタント書と誤解されそうだが、執筆者自身の「主夫」体験等を読むと温かい人柄を感じることができる。

この書籍を読んだときに執筆者のこれまでのコンサルティング経験が生々しく書かれているとともに、真に企業をよくするためにはどのようなことが必要なのかをまさに私と同じ気持ちで書いてくれているので我がことのようにうれしかった記憶がある。

学生諸子にとっては、30代から40代前半と聞き、ずいぶん先の話と思うかもしれない。しかしながら、大学を卒業して就職をする学生にとっては企業内でチーム構成員として活動することはすぐそこにある現実なのである。そのときに、この書籍に触れ、よいチームリーダーとなるべく努力することは幸せなビジネス人生を手に入れるカギとなるに違いない。

『変貌するチームリーダー―業績浮上のカギは企業の総合力にある』
三菱UFJリサーチ&コンサルティング著
安達幸裕執筆
ダイヤモンド社刊

 
ふじい・いちろう
1964年兵庫県生まれ。大阪大学経済学部卒業(筑波大学大学院博士課程単位取得済)。専門は中小企業経営戦略、中小企業金融。編著書に『業種把握読本』(金融ブックス)などがある。

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