長期化する大震災復興支援東日本大震災の発生から早くも3カ月が過ぎた。長期化する復興支援に、あらためてボランティアへのニーズが高まっている。東海大学でもチャレンジセンターの「3・11生活復興支援プロジェクト」など、被災地や被災者を支援する動きが活発だ。ボランティア活動に対する意識や行動について、東海大生200人に聞いた。 (構成・編集部)
「東日本大震災を経てボランティア活動への関心は変わりましたか?」との質問に、59%の学生が「以前より高まった」と回答。「低くなった」はわずか1%だった。多くの学生がボランティア活動への関心を高めていることが分かる。
それを裏付けるように、「東日本大震災に関連するボランティア活動にかかわりたいと思いますか?」には、73%もの学生が「思う」と回答。ところが、「これまで東日本大震災に関連するボランティア活動をしましたか?」との問いに「はい」と答えた学生は16%。関心の高まりは、必ずしも実際の行動に結びついていないようだ。アンケートでも「何から始めたらいいか分からない」(体育学部2年・男子)といった声が多い。
条件満たせば単位も復興が進むにつれて、ボランティアのニーズは多様化している。妻鹿(めが)ふみ子教授(健康科学部)によれば、被災地の子どもに絵本を送る活動や、テキストを失った学生に使用済みの教科書などを送る活動もあるという。被災地でなくても身近にできる活動はある。
一方、「学業との両立が難しい」(農学部2年・男子)と危惧する意見も多数あった。文部科学省では各大学に、東日本大震災に伴うボランティア活動を実習や演習の一環と位置付け、単位を付与するなど学生への配慮を求めている。それを受け、東海大でも被災地や避難所で行うボランティア活動について、所定の手続きを経れば単位を認定している。まずは、各校舎の教学課などの窓口に問い合わせを。
monitor's Voice 被災地で学んだこと柏原有輝さん(文学部3年)
3月11日の地震発生から約2カ月後、文学部広報メディア学科有志の一員としてチャレンジセンターの「3・11生活復興支援プロジェクト」と連携し、岩手県大船渡市の子どもたちに中古文房具を届けました。
市の教育委員長と話した時、「長期的な支援がなければ復興はできない」と言われたことが、とても心に残っています。たった1回ボランティアをしただけで決して満足をしてはいけない。一つひとつの支援は微力でも、長く続ければそれが大きな支援になる、被災した方々の力になれるんだ、ということに気づきました。
しかし「何でもやればいい」というわけではないとも思います。「今、被災者が本当に求めていることは何か?」を考えなければ相手の負担になり、ただの「押し付け」になってしまいます。今回のような非常事態では求められるものが刻一刻と変わりますから、しっかり状況を把握することが必要です。私たちは、現地に向かう前に心理・社会学科の先生にご協力いただき、被災者の方々の心理状況などを理解し、細心の注意を払って行動しました。ボランティアには、「支援させていただく」という気持ちが何より大切なのだと思います。
monitor's Voice 「読み聞かせ」に挑戦したい川口真彩さん(文学部3年)
今回の大地震では、関東でも大きな揺れを感じました。あれほど怖い思いをしたことはなかったので、被災地の皆さんのことはとても人ごととは思えません。なんとか家に帰り着いてテレビをつけ、あまりに甚大な被害を見て緊急にボランティアが必要になると感じました。
すぐにでも被災地に行って何か手伝いたいと思ったものの、いざとなるとどこからボランティアに関する情報を得たらよいのかも分かりません。また、3月中は瓦礫(がれき)の撤去などの力仕事に人手が必要だとニュースで伝えられていたこともあり、体力に自信がなく体もあまり丈夫でない私などかえって足手まといになるのでは……と、行動に移すことなく時間ばかりたってしまったのです。それが、新聞などで被災地の子どもたちの元気な様子が紹介されるようになり、朗読や読み聞かせなら「自分にもできるかもしれない」と思うようになりました。大学ではボランティア活動で単位を認めることもあると聞きます。まとまった時間が取れる夏休みは、ボランティアに参加したいと思う学生も多いはずです。大学や学部で具体的な活動の参加者を募ってもらえれば、参加しやすくなるのではないでしょうか。
活動を振り返ることで学びが深まる健康科学部社会福祉学科 妻鹿ふみ子教授
アルバイトやサークル活動に比べ、学生の日常生活で優先度が低かったボランティア活動。それが東日本大震災を機に大きく変わり、「私でもできる活動があれば、ぜひ被災地に行きたい」といった声が聞かれるようになりました。ボランティアの中でも、特に災害ボランティア活動には正確な情報収集や被災地に迷惑をかけない装備・持ち物、保険加入などの事前準備は欠かせません。自らの安全は自分で確保しなければならないのです。
また、被災者に寄り添う心の準備も大切です。ご家族を亡くした被災者がどんな気持ちでいるのかを察するイマジネーションを持ち、時にはその心情に向き合う心構えが必要です。心の準備は、被災地での節度ある行動にもつながります。
そして活動後は必ず振り返ること。自分の経験を周囲の人に話したりレポートを書いたりすることで、学生のボランティア体験に最も大切な「学び」が深まります。
ボランティア活動は、日常の人間関係とは異なる人たちとかかわる場でもあります。多様な人と共通の目的で活動することは、狭い人間関係にとどまりがちな学生に貴重な体験となるはずです。
学生たちの声から▼ 春休みに、自宅に近い「さいたまスーパーアリーナ」で福島県から避難してきた被災者を支援。避難所生活は本当に大変だと思った(工学部1年・男子)
▼いてもたってもいられなくなって募金活動をした。自分の無力さに悲しくなった(国際文化学部3年・男子)
▼邪魔になりそうな気がしたので控えてしまった(理学部1年・女子)
▼下手に動くよりも今まで通り暮らそうと思う(農学部4年・男子)
▼今やるべきことは勉強(理学部3年・男子)
▼まだ働いていないので、親のお金でボランティアをすることになってしまう(海洋学部4年・女子)
▼無理をしてまでやるのはボランティアではない(農学部3年・男子)
▼自分の気持ちに余裕がないとできないことだと思う(政治経済学部2年・女子)
▼実際に動くには覚悟が必要(文学部3年・女子)
▼一度やってみると積極的に参加したくなる。ぜひ経験してほしい(国際文化学部3年・男子)
▼やりたい人がやるのがボランティアなので、強要しないでほしい(理学部1年・男子)
▼金銭的な自己負担の少ないボランティアを紹介してほしい(理学部1年・女子)
▼自分にできるものは何か、分かりやすい情報が得られる仕組みがほしい(体育学部2年・男子)
▼いろいろ体験することで自分の適性を見極めることができると思う(工学部3年・女子)