ひと
2019/10/01全国高校総合体育大会(インターハイ)が7月24日から8月20日まで鹿児島、熊本、宮崎の南部九州3県と沖縄などで開催された。付属高校からも多くの選手が出場。金メダルに輝いた3選手を紹介する。
狙うはバタフライ2冠
付属浦安高校水泳部 井上 海選手(2年)
バタフライの2種目制覇を目指した井上選手だったが、最初に臨んだ得意の200メートルで2位と、いきなり「想定外」の結果に終わった。「調子があまりよくない」と感じ、翌日の100メートルは「予選から積極的にいった」。その作戦が奏功し、決勝ではタッチの差でライバルを振りきった。
しかし、54秒19という自己新記録での日本一にも、満足感はなかった。「優勝は当たり前と思っていた。狙っていた53秒中ほどのタイムに全然届かなかったので、あまり喜べませんでした」
付属浦安高校中等部3年時に、全国中学校大会で2冠を達成。高校でも1年目から活躍が期待されたが、冬季練習の時期に「モチベーションが上がらなくて、ズルズルと夏を迎えてしまった」と振り返る。昨年度はインターハイ出場こそ果たしたものの、100メートルは12位、200メートルは9位。「同じことは繰り返せない」。不退転の決意でこの1年間、「いろいろ新しいことに挑戦しながら、今まで以上に質の高いトレーニングを積んできた」。
練習拠点は幼いころから通うスイミングクラブ。月曜以外の平日は放課後にいったん帰宅し、夕方から陸上や水中でさまざまなメニューをこなす。土日もみっちり泳ぎ込む。
今夏は思うような結果を残せなかったが、井上選手はまだ2年生。インターハイはもう一度チャンスがある。「来年は必ず2冠を取る。高校記録に近いタイムで泳ぎたい」
自分の力を出しきり悲願のV
付属相模高校柔道部 有馬雄生選手(3年)
秋田県出身の有馬選手は、一昨年の春、「小学生のころから憧れていた」という相模高で、「必ず日本一になる」と意気込み高校生活をスタートさせた。1年目は「練習をこなすのが精いっぱい」で、夏には肘のケガにも見舞われた。秋あたりから徐々に力をつけ、2年生でインターハイに初出場したものの、初戦敗退に終わっている。
今年2月には、幼稚園から中学3年まで柔道を教わった父・昇さんが急逝。3月の全国高校選手権大会で力を出せなかったのは、「気持ちを消化したつもりでしたが、できていなかった」と振り返る。その後も不振が続いたが、「秋田に帰ったときに自分を見つめ直した」ことで5月ごろから調子を上げていった。
有馬選手の持ち味は「思いきりのよさ」で、得意技は背負い投げ。2度目となった今夏のインターハイは、初戦を接戦の末に制すると、2回戦以降は足車、背負い投げ、肩車と、多彩な技で順当に勝ち上がった。「絶対に日本一になるというより、自分の柔道をやりきろうと考えた」と話すように、いい意味で力んでいなかったのがよかったのかもしれない。
準決勝を優勢勝ちで乗りきり、決勝の相手は春の選手権優勝者。大熱戦となったが、延長2分35秒、やぐら投げからの内股で技ありを奪い、勝負を決めた。「やったぁと喜びが爆発しました。この1年間で体力面も精神面も成長できたと思います」。最高の形で入学時に立てた目標を成し遂げた。
無敗の高校チャンプ、世界へ
付属熊本星翔高校ボクシング部 山本諒真選手(1年)
熊本県勢としては初となる1年生でのインターハイ制覇。ウエルター級の決勝で大阪朝鮮高校3年の梁章太選手に5-0の大差で判定勝ちを収めた山本選手は、高々と左腕を上げた。
準決勝の途中で右拳を痛めるアクシデントがあり、「思ったとおりの試合運びができず、相手に合わせてしまった」と振り返る。しかし決勝ではセコンドについた本田雅士監督(熊本星翔高教諭)から適切なアドバイスが送られたことで、「立て直して先手を取ることができました」と優位に試合を進めた。「きつい練習に耐えてつかんだ勝利。支えてくれた家族や周囲の人たちに喜んでもらえてうれしい」
小学校からボクシングを始めた山本選手は、八代第二中学校の2、3年時に中学生以下の全国大会を制覇。高校入学後も一度も敗れることなく日本一へと上り詰めた。「テレビで見たプロの試合に魅せられてボクシングを始めました。試合で負けたのは小学生のころの1度きり。そのときの悔しさから、“とにかく強くなりたい”と取り組んできた」
熊本星翔高ボクシング部で毎日約2時間の練習の後、小学生のころから通う熊本市に隣接する宇土市のジムでさらに1時間半はトレーニングを重ねる。
10月には、初の国際大会となるUAEで開催されるアジア・ジュニア選手権男子70キロ級への出場も決まった。「将来の夢であるプロボクサーに向けて、アマチュアボクシングでは負けたくない。全力で臨みます」
(写真上)200メートルでは銀メダルを獲得(写真提供=浦安高水泳部)
(写真中)世界で戦う先輩たちの背中を追い、練習に励む
(写真下)多くのチャンピオンを生んだ熊本星翔高のリングからまた一人王者が誕生
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