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スポーツ

2020/09/01

独自のガイドラインで対策図る

【運動部が順次活動を再開】
教職員が連携して意見交換

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて活動を自粛していた運動部が、7月から段階的に再開している。湘南校舎では、スポーツ医科学研究所とスポーツ教育センター、体育学部の教職員からなる「東海大学スポーツ関連3部署連絡会議」が6月からオンラインで定期的に意見交換会や検討会を実施。部活動再開に向けて「新型コロナウイルス感染予防を考えた東海大学の課外活動再開に向けたガイドライン」と「新型コロナウイルス対応マニュアル」を作成してきた。スポーツ医科研の宮﨑誠司所長を中心とした取り組みを追った。

4月7日に政府から7都府県への緊急事態宣言が発出され、16日には全国に拡大。外出自粛や移動制限が設けられる中で、東海大学ではすべての課外活動を自粛し、各部では寮生活を送る選手を自宅に帰すことを決めた。

宮﨑所長は、「先行きの見えない不安の中で、選手たちは大会が行われることを信じて各地で自主練習に励んでいました。ただ、外に出て練習すると外部の人と接する機会も増え、感染リスクも高まる。選手たちの健康状態を観察したうえで、感染対策を講じた大学内で活動を再開したほうが安全なのではないかと考え、準備を始めました」と振り返る。

5月に入ると緊急事態宣言が段階的に解除され、プロスポーツなどの開幕時期も決定。そんな中、以前から運動部の活動をサポートしてきた「東海大学スポーツ関連3部署連絡会議が、6月11日に最初の意見交換会を開催した。活動再開時に考え得る感染リスクを洗い出し、具体的な予防対策を考え、独自のガイドラインを検討することを目的としたもので、湘南校舎で活動する運動部の部長、監督、コーチら約80人が参加した。

医師でもある宮﨑所長が新型コロナの特徴や症状、感染経路や感染防止策のほか、近隣のスポーツ施設の現状などを解説。各部の指導者からは、「キャンパスへの入構の際にどのような対策をとるべきか」「複数の部活が使用する施設の導線はどうするのか」「7月に予定されている大会にエントリーしてよいか」といった課題や疑問が挙がり、以降、逐一意見交換をしながら解決を図っていくことが確認された。

現場の声を取り入れリスクを軽減する

6月20日の第2回では、事前に各部にアンケートした健康観察の方法やチェックする物品の有無、施設の入退場口や対応などについて、練習場所ごとに指導者が説明した。ラグビー場の一角使用する女子ハンドボール部の栗山雅倫監督(体育学部教授)は、「ラグビーフットボール部と出入り口を分け、練習用具の消毒や除菌を徹底する」案を挙げ、水泳部の加藤健志部長(スポーツ医科学研究所准教授)は、「施設内の導線を色分けしています。水質調査でプールは安全であることを確認しました」と報告した。

その後、宮﨑所長らが各競技の協会や連盟が発表しているガイドラインの内容を考慮し、医学部医学科の浅井さとみ准教授(臨床検査学)の意見も踏まえ、6月23日に「新型コロナウイルス感染予防を考えた東海大学の課外活動再開に向けたガイドライン」をまとめた。さらに医学部と付属病院院内感染対策室との共同で「新型コロナウイルス対応マニュアル」も作成している。30日の第3回では宮﨑所長らから、練習時間の制限や施設ごとの人数制限、キャンパスへの入退構時には検温を行い、指導教員が付き添うといった流れも説明された。

同日には大学全体の課外活動制限の一部緩和に関する方針も発表され、大学によって確実に安全を確保できることが確認され、許可を得た団体から段階的に活動制限が緩和されることとなった。1日2時間から再開した練習は、8月16日から4時間に拡大。人数制限も徐々に緩和されている。

会はその後も定期的に開かれ、熊本校舎や札幌校舎で活動する運動部の指導者も参加。入退構の方法など、活動再開に伴って表面化した課題について話し合い、ガイドラインも改訂し、感染者が出た場合の対応策について検討を重ねている。

宮﨑所長は、「“試合があるから再開する”のではなく、“リスクを軽減しながら練習を再開するためにはこうするべき”ということを考えてきました。会を通して指導者の方々には新型コロナへの理解を深めていただいたと感じています。今後は運動部の学生一人ひとりが理解し、指導者が指示しなくても対策をして、感染者を出さずに練習の強度を上げていく環境をつくりたい。そのための勉強会なども開いていく」と展望を語った。

学生コーチやマネジャーも参加 新型コロナへの理解を深める
8月8日に「新型コロナウイルス感染予防並びに感染拡大防止を考えた活動再開に向けて」と題した第5回検討会がオンラインで開かれた。学生に新型コロナへの理解を深めてもらい、感染防止対策をより強化することが目的で、教職員のほか運動部の学生コーチやマネジャーらも参加。WEBビデオ会議システム「Zoom」を用い、約90人が参加した。

初めに、宮﨑所長が新型コロナの感染拡大状況や症状といった概要に触れ、「新型コロナによる肺炎にかかると、症状が回復しても肺機能が低下してしまいます。アスリートにとっては非常に大きな問題です」と強調。ウイルスが付着した手で鼻や目などを触ることによる「接触感染」、咳やくしゃみによる「飛沫感染」が主な感染経路であることや、消毒液は界面活性剤や次亜塩素酸水など種類によって効果が異なることに触れ、「対象や場所によって使い分けるとよい」と語った。最後に、男女柔道部の中西英敏部長(体育学部教授)が、「部活動が段階的に再開し、学生たちは限られた時間の中でも生き生きと練習しています。ここで得た正しくタイムリーな情報を生かしていくのが私たちの使命です。予防に対する正しい知識、理解を持ち、一体となって新型コロナに立ち向かっていきましょう」とまとめた。

【所長に聞く】横のつながり生かし 安全な環境を整える
スポーツ教育センター 陸川 章 所長
(体育学部教授、男子バスケットボール部監督)


各部の指導者や教職員が一堂に会して話し合い、どうすれば安全に活動を再開できるのかを考えることができたのは、普段から横のつながりが強い東海大学の運動部ならではだと感じています。

検討会では、宮﨑所長が医学的見地の情報を、各部の指導者が現場の声を伝え、ガイドラインを作成しました。入退構時の検温や学生証のチェック、日々の健康観察や手指の消毒の徹底、活動時間や人数の制限など、その内容はとても細かく厳しいものですが、だからこそ8月時点では1人の感染者も出すことなく活動できているのだと思います。

選手には「無理をしない」ことが大切だと伝えています。休むことは恥ずかしいことではありません。3カ月の自粛によるブランクもありますから、チームのため、自身のために健康状態を把握し、向き合うことが大切だと指導しています。

まだすべての部活動が再開できたわけではなく、歯がゆい思いをしている選手もいます。今後も情報共有や意見交換をしながら、安全に活動できる場をつくるために教職員が一体となって尽力したいと考えています。

関連記事=競技ができる喜び胸に 感染防止対策講じ練習に励む

 

(写真上) 湘南校舎15号館地下のトレーニングセンターに入る前にも検温
(写真下) 学生も参加した第5回検討会では、宮﨑所長が感染予防対策を解説

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