スポーツ
2022/08/01男女柔道部が6月25、26日に東京都・日本武道館で開催された全日本学生優勝大会(男子無差別7人制、女子5人制)で3大会連続の男女同時優勝を達成した。2020年度の同大会は中止となり、21年度は11月に延期。コロナ禍の影響を大きく受ける中でも連覇を重ねる両部の強さに迫った。
斉藤選手を抑え込み優勝を決めた村尾選手。
「真っ向勝負で勝てる相手ではないので、で
きることをやりながら体力を削っていった。
試合の中で探りながら戦略を練る、新しい戦
い方ができた。今後も忘れることのない心に
残る試合だった」
08年度から14年度の7連覇に続き、2度目の6連覇を達成した男子部の上水研一朗監督(体育学部教授)は、「前回は“勝ちたい”という気持ちと、“勝たせなければならない”という責任感が常に私の中にありました。しかし、15年度に敗れたことで重しが取れた。なぜこんなにも苦しんでいたのだろうと感じました。それからは一歩引いて、選手たちを客観的に見られるようになった。勝つことは大切ですが、それ以上に選手の成長に主眼を置き、一年、一年取り組む中で連覇を重ねることができました」。
それでも、今年度は4月の全日本選手権大会を制した斉藤立選手(3年)を擁する国士舘大学が優勝候補筆頭。「連覇は厳しい」と感じていた。その一方で、「その中で勝てば存在感が高まる。そこで勝つからこそ面白い」と選手たちを鼓舞し続けた。
3年先を見据えさらに完成度を高める
5月29日に日本武道館で開かれた東京学生優勝大会は4年生を中心に戦い、決勝では国士舘大に2-1で勝利したが、全日本学生では、2年生5人、1年生2人をエントリーした。「過去にこれほど下級生を入れたことはありません。上級生を中心にすれば安定した戦いができますが、東京学生の戦いにプラスαの力を乗せて、大会の中で成長していかなければ全国では勝てない。下級生の潜在能力にかけました」
結果として「それがうまくはまった」。日本体育大学との準決勝は、先鋒の天野開斗選手(体育学部1年)が一本勝ちして流れをつくり3-2。国士舘大との決勝でも天野選手が技ありを奪い、次鋒の鈴木直登選手(同3年)が斉藤選手と引き分けた。大将戦で追いつかれ、流れは相手に傾いたが、代表戦では村尾三四郎主将(同4年)が約80キロも重い斉藤選手に小刻みに技を仕かけて体力を削る。延長16分18秒、大外刈りをすかして体勢を崩し、抑え込んで一本勝ち。「天野がいい勝ち方をして、上級生も“負けていられない”と感じたはず。よく踏ん張ってくれました」
上水監督は秋の全日本学生体重別団体優勝大会や講道館杯全日本体重別選手権大会などを見据えながらも、「2年後、3年後のチームのことも考えて指導しています」と語る。昨年より今年、今年より来年――「さらに完成度の高いチームを目指す」ことが、東海大の黄金期をつくっている。
決勝の代表戦で、積極的な攻めを見せた児玉
選手。「大将戦を引き分け、まだ自分の仕事
は終わっていないと気を引き締めて代表戦の
畳に上がった。4年生で主軸として戦い、優
勝に貢献できたことは感慨深い。そういった
姿を後輩にもつないでいきたい」
12年ぶりに優勝した19年度、コロナでの中止を挟んで連覇を遂げた昨年度、初の3連覇を達成した今年度――「その年、その年、色の違うチームで勝ち取ってきた優勝。今年度は4年生が中心となり、信頼し合うチームワークのいい集団をつくり上げてくれた」と女子部の塚田真希監督(スポーツプロモーションセンター准教授)は選手たちをたたえた。
今大会では2回戦から順当に勝ち上がり、準決勝では昨年度の全日本学生体重別団体優勝大会で敗れた環太平洋大学と再戦。次鋒の込山未菜選手(体育学部3年)、副将の矢澤愛理選手(同1年)が一本勝ちして2-1で勝利した。龍谷大学との決勝は先鋒から大将まで引き分け、児玉ひかる選手(同4年)が代表戦の末に相手の指導3で一本勝ち。1年生から4年生までまんべんなく活躍し、全員で栄冠を勝ち取った。
状況を理解し考えるコロナ禍で養った力
5月の東京学生の決勝では国士舘大に1-2で敗れ準優勝だった。全日本までの1カ月、「雑になってしまっていたため細かな技術面をより丁寧にできるよう修正しながら、ミーティングでは試合の流れや団体戦の戦い方を意識するよう声をかけてきた」と塚田監督は語る。
全日本学生で活躍した立川桃主将(同)や児玉選手、畠山瑠唯選手(同)はもちろん、レギュラー以外の4年生たちがウエートトレーニングのきつい場面で積極的に声を出したり、後輩の練習をサポートしたりと「いい雰囲気をつくってくれた」。そんな先輩たちの姿を見ていたからこそ、後輩たちも〝チームのために〞と全力で戦った。
「コロナ禍になり、大人でも戸惑う場面が多々ある中で、学生たちは置かれた状況を理解して考える力を身につけていきました。ただ柔道がうまくなる、強くなることより大切な力を養ってくれていると感じています」
秋に控える体重別団体や講道館杯に向けて、夏場は技の習得やコンディションづくりに力を注いでいく。「講道館杯で上位進出を目指す選手も多くいます。実業団に所属する選手とも十分に戦える力はありますから、目標を達成できるように取り組んでいきたい」と塚田監督。選手一人ひとりの目標や取り組みに合ったきめ細かなサポートで、ともに夢を実現していく。
全日本学生を制した男女柔道部は、6月29日に湘南校舎で山田清志学長をはじめ副学長や学長補佐ら教職員に優勝を報告した=上写真。
男子部の上水監督は、「あらためて学生のすごさを味わった大会でした」と語り、女子部の塚田監督は、「4年生を中心にまとまったことで勝利できました」と振り返った。山田学長は、「最後に勝ちきる粘り強さを他の部活の選手たちにもぜひ伝えてほしい」と語りかけた。
7月28日には、中西英敏部長(体育学部教授)をはじめ上水監督、塚田監督、男子部の村尾主将らが渋谷校舎で学校法人東海大学の松前義昭理事長らに優勝を報告した。松前理事長は、「今後も“柔道界に東海あり”と示していけるよう、さらに前を向いて進んでください」とエールを送った。
1年生3人が新たな歴史を刻んだ。九州キャンパス柔道部女子が全日本学生優勝大会の女子3人制に出場。入江桃子選手(文理融合学部1年)、鎌田晶妃選手(同)、増田美羽選手(同)の3人で戦い、初戦となった2回戦では城西国際大学に2-1、準々決勝では芦屋大学に2-0で勝利した。準決勝で慶應義塾大学に0-1で惜敗したものの、入部から約3カ月で3位入賞を果たした。鍋倉義盛監督(東海大学職員)は、「一人ひとりが自分の役割を果たし、チームを意識した戦い方をしてくれました。“チャレンジャーとして戦おう”と話していましたが、まさかここまで勝ち上がってくれるとは」と驚きを隠せず、喜びを語った。
九州には、今大会の女子5人制に出場した鹿屋体育大学や福岡大学など強豪が名を連ねる一方、競技を続けたい高校生を受け入れる先は決して多くはない。「“女子選手を受け入れてもらえませんか?”と高校の指導者から立て続けに声をかけられ、大学側の了承も得られたので、まずは3人制を目指そうと考えました」と鍋倉監督は振り返る。
今春入部した女子3選手は、男子とともに週6日の練習に励んできた。「監督や男子の先輩から、苦手にしていた相手のさばき方などを細かく教えてもらい、男子と組むことで力負けしなくなりました」と自信をつけた。5月22日に福岡武道館で開かれた九州学生優勝大会で2位となり、本戦では「初戦突破が目標だったので、ここまで勝ち上がれて本当にうれしい」と笑顔を見せた。
【男子】2日目の畳を経験 悔しさを次につなぐ
一方、無差別団体に出場した九州男子は、初日の1回戦で新潟食料農業大学に5-2で勝利したが、2日目の2回戦では慶大に0-4で敗れた。鍋倉監督は、「これまではなかなか初日の試合に勝てず、2日目はスタンドから見ていました。今年度は3年生が多いので、2日目も選手として畳に立てたことは大きな経験になったと思います。2回戦で敗れた悔しさを次につなげてほしい」と期待を寄せた。
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