特集:教育の現場から
2012年8月1日号
工学部医用生体工学科が新たな一歩
伊勢原校舎で実習スタート、医学と工学の知識を融合

2010年度に開発工学部から工学部に移行設置された医用生体工学科。1、2年生は湘南校舎で、3年生以上は医学部付属病院のある伊勢原校舎で学ぶ。今年4月には工学部としての1期生である3年生が、伊勢原校舎での学びをスタート。医学と工学を融合させる新しい環境での同学科の取り組みを紹介する。

医用生体工学科は、1991年に沼津校舎の開発工学部に開設された。医療用工学機器の開発者や高度に進んだ医療現場でメディカル・エンジニアとして活躍できる人材の育成を目指し、2000年には国家資格である臨床工学技士の受験資格を得られるようカリキュラムを改訂。これまで約200人の資格取得者を輩出してきた。

同学科主任の望月明教授は「臨床工学技士の国家資格をより多くの学生が取れるよう、さらに教育を充実させていきたい。また、単に技術者として医療現場にかかわるだけではなく、医学と工学の両分野の橋渡し役として活躍できる人材を育成していきます」と語る。

付属病院を望む教室で学生の意欲も向上

工学部への移行設置に伴い、学習環境も大きく変化。沼津時代は、資格取得のために病院など実際の臨床の現場で知識や技術を学ぶ「臨床実習」は、医学部付属病院をはじめ近隣の医療機関に学生を派遣していた。10年度からは、基礎科目を学ぶ1、2年生の授業を湘南校舎で開講。3年生以降の専門科目は伊勢原校舎で学び、臨床実習は、全員が隣接する医学部付属病院で実施する。

「臨床実習中も教員が学生を指導できる体制が整い、医学部や付属病院などとの連携もこれまで以上に活性化させられる。専門分野を学ぶ時期に日常的に医療現場の雰囲気を感じられることで、学生の意欲も高まると期待しています」と望月教授。

「校舎を歩いているだけで医師や看護師、患者さんに会う。医療にかかわる勉強をしている者として、頑張らなければという意欲が高まりました」(坂口千奈さん・3年)という声が聞かれるなど、その効果を学生たちも実感している。


実習授業を通して知識のつながりを体感

4月に始まった伊勢原校舎での専門科目「基礎医学実習」では、人体解剖や血液検査、脳波測定など9つの実習に取り組んできた。医学や工学の基礎知識をより深く理解することが目的で、学生たちは10人程度の小グループに分かれ、全15回の実験実習を受講。授業後には測定結果などを分析して理論的に考察し、リポートにまとめたものを提出する。

7月10日に行われた人体解剖の実習では、約70人の学生たちが教育用の人体模型を分解して組み立て直す実習に臨んだ。学生たちは「視床下部と扁桃体ってどっちが下にあるの?」「側索神経ってどこ?」などと確認しながら、各部の名称や位置を把握。また、血液検査の実習では、サンプルとなった学生の血液を顕微鏡で分析し、白血球を数える実験などに取り組んだ。

渡部貴史さん(3年)は、「五感を使いながら学び、その結果を考察することで、それまでばらばらだった知識のつながりを実感できるようになった。医療機器を動かすには医学と工学両方の知識が必要なことなど、臨床工学技士に必要な姿勢も学べている」と話す。

臨床工学技士による実習もスタート

秋セメスターからは、医学部との連携も本格化。医学部の教育用施設を使った授業や、付属病院の臨床工学技士による実習も行われる。また、来年夏には臨床実習も始まる。学生たちは、「医療機器の使い方などをしっかり学んで、多くの人を助ける仕事ができる人材になりたい」と意気込んでいた。


学科主任に聞く
高度な知識を駆使して活躍できる人材を

工学部医用生体工学科 望月 明 教授


現代の医療では、手術や日常的な診療の現場で医療用工学機器が幅広く活用されています。手術時に脈拍などのモニタリングをするのはもちろん、細かい腫瘍の切除には医療用のロボットが使われています。また、人体を詳しく検査するためには、MRIなどの画像診断も欠かせません。医師などと協力しながらこれらの医療機器を操作し、日常的な保守点検を通して常に万全の状態に保ち、人々の健康を助ける。それが臨床工学技士の仕事です。

ただし、本学卒業生の活躍の場はそこにとどまりません。高度な医療機器を開発する企業や、医療機器の性能や安全性を検査確認する認証機関などにも活躍の道は広がっています。

機器の開発や検査には、医学と工学の両分野にわたる幅広い知識を柔軟に駆使しながら、新しいものを発想する力が求められます。学生には勉学だけでなく、サークル活動などさまざまなことに挑戦してほしいと思います。また、授業で学んだことを日常生活の中に位置づけ直し、身の回りにある疑問を自ら積極的に解いていく姿勢も身につけてほしい。キャンパスライフを充実させることが、将来の活躍を支える土台になると期待しています。

 
(写真上から)
▽人体解剖の実習に取り組む学生。「基礎科目でも学んだけれど、実際に組み立てると新たな発見も多い」と語る
▽血圧測定の実習では、胸腔に見立てた水槽を使って圧力を計測。終了後には、分析結果を理論的に解析する課題が出された
▽病理標本の鏡見実習では、標本の作り方のほか、分析用顕微鏡の使い方や構造も学んだ
Key Word 臨床工学技士
厚生労働大臣の免許を受けた国家資格。手術などの際に、医師の指示を受けながら人工心肺や人工呼吸器といった生命維持管理装置を操作するほか、腎臓の機能が低下した人への人工透析機の操作を担う。また、機器の保守点検や安全管理も行う。高度な先端医療は医師や看護師、臨床工学技士などの専門家によるチーム医療によって成り立っており、医療機関では欠かせない専門職となっている。資格取得者は、企業での各種医療機器開発などでも活躍している。