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特集

2023/10/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

【ソーラーカーチーム】4年ぶりのBWSC参戦

11年大会以来の世界一奪還だ!

4年ぶりの大舞台で世界一奪還へ。東海大学ソーラーカーチームが10月22日から29日までオーストラリアで開催される「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ 2023」(BWSC)に参戦する。僅差で準優勝となった2019年から新型コロナ禍を経て4年ぶりの開催となる今大会。チームは、新型マシン「23年型Tokai Challenger」で11年大会以来3度目の頂点を目指す。(9月26日記)

3つのデザインコンセプトの下、完成した23年型Tokai Challenger。9月に大潟村のソーラースポーツラインで実施したテスト走行でも快調にコースを周回した

性能・安定性・環境配慮に軸 全てを網羅した新型マシン

前回大会からレギュレーションに多くの変更がある中、チームは新型マシンのデザインコンセプトとして、「性能の限界への挑戦」「走行安定性の確保」「環境への配慮」の3点を掲げ、設計から開発までを進めてきた。大きな変更点である「三輪仕様の選択解禁」を受け、新型マシンは19年型の四輪から前方二輪、後方一輪の三輪へとスタイルを変更。総監督の佐川耕平講師(工学部)は、「非常に悩んだ末の大きなチャレンジだった」と説明し、「タイヤを減らせば、車両重量を軽減でき、後方一輪にすることで乱流を抑えて空気抵抗を低減するメリットが考えられました」と狙いを語る。従来よりも横風の影響を強く受けることになるが、チームは17年型マシンの開発段階から横風対策に注力しており、「その知見を生かし、十分な安全性を確保した形状を採用できている」という。

 

また、ボディーには東レと東レ・カーボンマジックの協力で、リサイクル原料を使った軽量なCFRP素材を採用。強度を保ちながら理想的な車両重量を実現した。タイヤには、大会スポンサーでもあるブリヂストン製の再生資源・再生可能資源比率63%を可能にした「ENLITEN(エンライトン)」技術搭載のモータースポーツ用タイヤを装着。デザインコンセプトにマッチした車体を完成させた。

 

レギュレーション変更が王座への追い風に

もう一つの大きなレギュレーション変更に、近年海外のトップチームが採用していた高額で発電性能の高い多接合化合物太陽電池の搭載が制限された点が挙げられる。東海大チームが以前から採用していたシリコン製ソーラーパネルに統一されることから、これまで収集してきたデータや経験をそのままレースに生かすことが可能になっている。

 

監督の木村英樹教授(工学部、学長補佐)は、「BWSCへの参戦は、卒業生や企業のエンジニアといった方たちの指導があり、学生たちの成長の場となっています。世界一を目指すのはもちろんですが、この活動を通じて大学として教育・研究のレベル向上を図り、社会に貢献していきたい」と抱負を語っている。

 

テスト走行を重ねて最終整備 実戦を想定して経験を積む

テスト走行に向けてバッテリーなどの部品を

整備する学生たち

新型マシン完成後の8月26、27日には、初の本格走行となるテストを栃木県那須塩原市にあるブリヂストンプルービンググラウンド(テストコース)で実施。同社の協力を得て、走行時の安定性やブレーキの利きなどを念入りに確認した。

 

19年以来のBWSC参戦となることから、今大会はメンバーの多くにとって、初の海外レースとなる。経験不足を補おうと、作業中にはメンバー同士の連携方法や作業工程、安全性の確保に向けた動き方を細かくチェックする姿が見られた。

 

ものつくり館で細部にわたってマシンを改良

9月12日から14日には、秋田県・大潟村ソーラースポーツラインで2度目のテスト走行に臨んだ。3日間にわたって学生ドライバーの伊坪岳陽さん(大学院工学研究科2年)と岡本陽佑さん(同1年)らが、ステアリングを握って長時間のドライビングに臨み、コース周回を重ねた。ドライバーとマシンを追走する指令車が交信してタイヤの状態やエネルギー消費量など細部にわたって確認。実戦を想定した追い抜き練習やコントロールポイントへの誘導方法などもよりよい方法を探った。

 

伊坪さんと岡本さんは、「三輪の車体になりましたが、安定感は維持されておりとても運転しやすい車体が完成しました」と口をそろえた。また、電気班リーダーの梅田雄大さん(工学部4年)は、「発電量の調整やバッテリーなど、まだまだ修正しなければいけない部分があります。メンバー間で密にコミュニケーションを図りながら、よりよい車体に整備していきます」と話した。

 

発送を前にソーラーパネルの発電量なども

チェックした

テスト走行後も、活動拠点である湘南キャンパスのものつくり館でボディーの清掃など最終整備を進めた学生たち。機械班リーダーの小田侑斗さん(同)は、「空力性能や走行安定性などの向上を目指し、試行錯誤を続けてきました。悩んだ時間も多かったけど、ゴールする瞬間まで気を抜かずに整備を続けたい」と意気込みを語った。

 

 

 

 

マシンをはじめとした機材はオーストラリアに向けて発送されており、メンバーのうち先発隊が30日に日本を出発。マシンを受け取り後、ゴール地点のアデレードからBWSCのコースを逆走して下見を行い、スタート地のダーウィンへと向かう。その後、チーム本隊も10月9日に現地に合流し、車体の整備を続けつつ静的車検、テスト走行、予選などに臨み、22日のスタートに備える予定になっている=詳細は左表参照。学生リーダーの宇都一朗さん(大学院工学研究科2年)は、「多くの方々のおかげでスタートラインに立てる。感謝の思いを持って、頂点を目指します」と話している。

 

大会期間中のチームの様子やデイリーレポートは 東海大学オフィシャルサイト「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2023」 を参照。

 

【TOKAI SOLAR Chronicle】

過酷な環境に挑むBWSC 10度目の出場で3度目の栄冠へ

連覇を果たした11年型Tokai Challenger

太陽光のみを動力源に、オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまで、約3000キロを走る、世界最大級のソーラーカーレースBWSC。1987年に始まり、2年に1度のペースで開かれ今年10月に16回目の開催を迎える。2013年大会から3連覇を果たすなど圧倒的強さを誇るオランダ・デルフト工科大学の「Brunel SolarTeam」(19年大会は「Vattenfall SolarTeam」として出場)をはじめ、アメリカ・ミシガン大学、前回大会優勝のベルギー・ルーヴェン大学を中心とした「Innoputus Solar team」(19年大から41チームがエントリーしている(メインクラスで東海大学が出場するチャレンジャークラスは31チーム)。

 

オーストラリア大陸のほぼ中央を南北に貫くスチュワート・ハイウェイを舞台とする道中では、途中9カ所のコントロール・ストップで30分の停車が義務づけられる赤道直下にあたるノーザンテリトリー準州では炎天下に遮るもののない荒野で強風に見舞われ、南部のサウスオーストラリア州では気温低下にもさらされるなど過酷な環境の下、参加チームは各所でキャンプを張りながら1週間以内でのゴールを目指す。

 

09年、11年大会を連覇 12年ぶり12年ぶりの優勝を目指す

19年大会は僅差の準優勝となった

東海大学チームは1993年大会に学校法人東海大学の法人・総合研究機構プロジェクトとして初出場。18位で完走した。以降、96年大会と、工学系学部学科による共同研究の体制で01年大会に出場を続けた。

 

06年度に東海大学チャレンジセンター(現・スチューデントアチーブメントセンター)が開設されたのを機に、学生サークルとして活動していた「ソーラーカー研究会」と合流し、「ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム」として現体制につながる活動を展開してきた。

 

09年大会では、国内有数の企業と連携して開発したマシン「Tokai Challenger」で悲願の初優勝を達成。11年大会でも連覇を果たした。以降は13年に準優勝、15年3位、17年4位、19年準優勝と全ての大会で上位入賞を果たし、大会常連チームの中でも突出した成績を残している。

 

新型コロナ禍で21年大会が中止となり、4年ぶりとなる今大会。10回目の出場にして、12年ぶり3回目の世界一を目指す「東海大学ソーラーカーチーム」に注目だ。

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