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特集

2023/12/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

【ソーラーカーチーム】4年ぶりのBWSCで5位

オーストラリア約3000キロを走破

アクシデント乗り越え レース中に大きく成長

チャレンジプロジェクト「東海大学ソーラーカーチーム」が、10月22日から29日にオーストラリアのダーウィンからアデレード間で開催された世界最高峰のソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2023」(BWSC)で5位に入った=本紙11月1日号既報。新型マシン「2023年型Tokai Challenger」は過酷な環境や数々のアクシデントを乗り越えてダーウィンからアデレードまでの約3000キロを走り抜いた。

 

約3000キロを走り抜き、セレモニーゴールで

喜びを爆発させた

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、4年ぶりの開催となったBWSC。過去2度の優勝経験を誇る東海大チームは、9月30日に先発隊が日本を出発し、10月6日にメルボルンでマシンを受け取ると、コースを逆走して状態を確認。後発隊は8日に日本を立ち、10日にメンバーがダーウィンに集結した。その後は、ヒドゥン・バレー・サーキットのピットでマシンを整備、17日からは車検などをクリアしてレースへの最終整備を進めた。

 

21日の予選の結果、7番目のスタートとなり、22日のスタートでエースドライバーでもある佐川耕平総監督(工学部講師)がステアリングを握った。しかし、スタート直前に電気系トラブルが起き出走できず、結果的に11番目で走り出した。直後にも再びマシンがストップしたが、指令車に乗る木村英樹監督(同教授)や学生らがすぐに対応。5番手まで順位を上げて初日を終えた。

 

2、3日目もブッシュファイヤーによる煙で十分な発電量が確保できない中、5位を維持したまま、1890キロ地点まで到達した。

 

一時はリタイアも検討 諦めず迅速に車体を整備

オーストラリアには広大な農場が広がる。

それぞれの敷地から牛や羊などが逃げ出さない

ように、道路上には「グリッド」と呼ばれる

鉄柵が敷設されており、ソーラーカーは

この上を走る際に、マシン内部を損傷した

 さらなる上位進出を目指した4日目だったが、2080キロ付近のグリッド=右写真=を通過後から車体後方で異音が発生。一度停車してマシンの状態を確認するも、さらに消費エネルギー量が増加し、ゴムが溶けるような異臭もしたため内部を詳しく調べたところ、ボディと後輪をつなぐリアサスペンションアームの根元部分の剥離が判明した。指導陣からは「リタイアも考えなければならない」と厳しい言葉も出たが、学生たちは剥離した部分の予備パーツを迅速に加工して接着。安全性を確認したうえで2時間後に走り出した。整備にあたった機械班の亀山裕一郎さん(工学部4年)は、「“リタイア”という言葉を聞いたときには、泣きそうになりました。先生方やアドバイザーの皆さんのサポートを受けて無事に修繕できて本当によかった」と振り返った。

 

テキストキャプション急なアクシデントにも

迅速にパーツ交換にあたった

修繕作業の間に2チームに先行を許したが、2250キロ付近で「トップ・ダッチ・ソーラーレーシング」を抜いて6位に浮上。以降は安定した走行を続け、5日目にはアクシデントで停車していた「チーム・ゾーネンワーゲン・アーヘン」をかわし、同日午後4時58分に5位でアデレードにゴールした。

 

 

 

 

 

 

紳士的なレースに評価 「この財産を2年後に」

27日には、アデレード市内でセレモニーゴールに臨み、メンバーたちは、国旗や校旗を振りレッドカーペットを行進。佐川総監督は「前回大会からメンバーも大きく入れ替わり、国内での準備期間では経験不足も露呈しましたが、オーストラリアに来て学生たちは大きく成長しました。数々のアクシデントも1カ月前の彼らだったら対応できず、完走もできなかったと思います」と学生たちの成果をたたえた。

 

29日の表彰式では、長年にわたる大会発展への貢献と今大会の公正かつ紳士的なレース内容が評価され、「デービッド・フューチャク賞」を受賞。プロジェクトリーダーの宇都一朗さん(大学院工学研究科2年)は、「世界一奪還という目標は達成できませんでしたが、かけがえのない経験ができました。後輩たちには、2年後に向けて今回の財産を生かしてほしい」と期待を寄せていた。

 

BWSC2023 東海大チームPlayBack

【10月10日~20日 車体整備・車検】

ダーウィンに集結したメンバーは、ヒドゥン・バレー・サーキットのピットでマシンを整備。17日の静的車検=写真=では、モータコントローラーの一時的な不具合やホーンの変更が必要となったが、18日にクリアした。19日に公道試走を行い、20日に動的車検を通過した

 

 

 

【10月21日 予選】

ヒドゥン・バレー・サーキットでの公式予選。1周2.87キロのコースのラップタイムで争われ、予選の順位がレースの出走順となる。本戦は上位から1分置きのスタートとなるため、序盤の展開に影響するが、チームは予選で2分10秒88をマークして全体7位となった

 

【10月22日~26日 本戦】

①本戦スタート時には電気系トラブルが発生し、11番目でのスタートとなった

 

 

 

 

②酷暑によるブッシュファイヤーが各地で発生。コース近くまで火の手が迫る場面も

 

 

 

 

 

③円形の岩が転がるデヴィルズ・マーブルなどオーストラリア特有の自然の中を疾走

 

 

 

 

 

④2080キロ過ぎでマシントラブルのため停車

 

 

 

 

 

 

⑤大会5日目の午後4時58分に5位でゴールした

 

 

 

 

 

モーターイベントで19年型マシンを展示

ソーラーカーチームは10月28日から11月5日まで、東京ビッグサイトで開催された「JAPANMOBILITY SHOW2023」で「2019年型Tokai Challenger」を展示。ブリヂストンのブース内にマシンを設置し、メンバーが車体や日ごろの活動について説明した。

 

4日には福田紘大監督(工学部教授)が、ブリヂストンのモータースポーツ事業や車体パーツ開発に携わる山本塁氏、木村由和氏と共に「ソーラーカーレースとモビリティの未来」と題したトークショーを行った=写真。福田監督は、BWSCを振り返り、「学生がエンジニアとしてのスキルや心構えを培える場で、自動車業界を支える人材育成に向けてこれ以上ない環境」と語った。

【気象情報を伝える湘南支援基地も活躍】

BWSC期間中、湘南キャンパスでは、「湘南支援基地」のメンバーが気象情報をチームに伝えた=写真。

 

情報理工学部の中島孝教授と理学部の山本義郎教授らによる指導の下、情報理工学部や理学部、大学院理学研究科の学生、大学院生8人が参加。レース中は学生たちが交代で19号館に設置した基地に詰め、刻一刻と変わりゆく雲の様子や風向きなどを専用のネットワークを使って現地に送った。

 

木村監督は、「レース中は通信環境不良の場所が多く、日本から送られてくる情報が大変参考になった」と振り返った。

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