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特集

2024/02/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

「運動」テーマに多彩な企画

【健康学部フィールドワークB】地域の課題解決に取り組む

地域をフィールドにした健康学部の活動が、新型コロナ感染症拡大の落ち着きを受けてこの秋学期から再開している。「フィールドワークB」の授業では、高齢者向けの運動指導や子どもたちの運動能力測定を実施。運動指導勉強会「KEITH」の学生は、整形外科でのグループレッスン指導に協力した。「運動」をテーマにした多彩な活動を追った。

 

学生が手本を見せながらロコトレに挑戦

少しの運動で、いつまでも健康に――教員が用意した多様なプロジェクトを選択して身近な課題の解決に取り組むフィールドワークBの授業。「ロコ発掘つながり隊プロジェクト」の学生たちは昨年11月21日に、厚木市小鮎地区の古松台自治会館で開かれたミニデイサービスで運動指導を行った。
 
75歳以上の地域住民ら約20人が参加し、小川琉生さん(3年)と関根朋香さん(同)が身体的機能や認知機能の低下によって引き起こされる症状などを説明。「移動機能が低下するロコモティブシンドロームになると、骨や関節、筋肉、神経などの機能が低下し、立ったり歩いたりすることが難しくなりますが、運動を続けていけば改善できます」と解説した。続いて学生たちは爪先立ちでかかとを上げ下げするヒールレイズ、手を前に伸ばした状態でのスクワットといったロコトレを指導。「一つひとつは簡単な動きですが、続ければ足の筋肉がついてきます。ぜひ継続的に取り組んでください」と語りかけた。
 
担当する妻鹿ふみ子教授は、「高齢化や少子化という言葉は日々耳にしていると思いますが、実際に何がどう大変なのかを知り、助け合いながら次の時代を担っていく必要があります。学生たちは多世代交流を通して、多くのことを学んでくれたのでは」と話していた。

 

相手に寄り添い今後につなげる

視線を合わせ、丁寧に説明しながら

6種目を測定

「はかる、きづく、うごくプロジェクト」の学生たちは昨年12月10日に、秦野市・メタックス体育館はだので開かれた「第4回はだのうんどう能力診断」に協力した。市内の子どもたちに遊びを通して動く楽しさを伝える活動を展開している「FIKA総合型クラブ」が運動習慣をつけるきっかけづくりなどを目的に開催したもの。学生たちは事前に各研究室や他学部にも協力を呼びかけ、大学院健康学研究科や他学部生も加わり、スタッフ説明会を2回開くなど準備を進めてきた。
 
当日は、小学生と保護者10組が参加し、握力、20メートル走、立ち幅跳び、反復横跳び、長座体前屈、上体起こしの数値を測定。「反復横跳びはカニさん歩きをしてみよう」「手をつないで一緒にやってみようか」と同じ目線に立って指導し、記録を点数化して取り組むべき運動なども説明した。記入用紙を作成した香取遥さん(3年)は、「文部科学省の『項目別得点表』は全学年を対象とした数値なので、低学年だと低い得点になってしまいます。〝自分はダメなんだ〞と思わないように、年齢別の平均値と見比べられるグラフを作るなど工夫しました」と語る。岡本武志准教授は、「上級生は後輩にも子どもたちにも寄り添って教え、下級生は健康や運動について授業で学んでいる以上の知識を得てくれました」と成果を語った。
 
1月17日にはオンラインで同授業の報告会が開かれ、9プロジェクトの学生が活動の成果を発表。司会進行を務めた岡本准教授は、「キャンパス内や地域の多種多様な健康課題に取り組んだ経験や発表を聞いて感じたことを、今後に生かしてください」とまとめた。

 

【もう一つの話題】グループレッスンを指導 実戦でノウハウを学ぶ

水の入ったペットボトルを持って負荷をかける

トレーニングも指導。何弘希さん(3年)は、

「分かりやすく説明するよう気をつけました。

教えるのは楽しく、参加者の皆さんの笑顔を

見られてよかった」

「KEITH」は昨年11月6日から12月22日まで、同学部と2019年から包括連携の推進に関わる協定を結んでいる秦野市の医療法人安生会「あべ整形外科」で、グループレッスンの指導を週3日担当した。治療やリハビリ後の健康維持やけが予防、ダイエットなど筋力強化のための施設で、会員向けプログラムとして依頼されたもの。
 
12月14日は市川真優さん(2年)らが、音楽に合わせてサイドステップ、クロスパンチ、肘を引いて足を後ろに蹴り上げる動作を、手本を見せながら指導した。同じ動きを水の入ったペットボトルを持って繰り返し、学生たちは「笑顔で動きましょう」「今の動き、きれいです!」と声をかけてサポートした。
 
澤田怜菜さん(同)は、「普段は先生方から指導を受け、学生同士で教え合っているので、年齢や体力も異なる初めて会った人に指導するのは難しかった」と試行錯誤した様子。それでも参加者は、「音楽に合わせて動くのは楽しく、何より“前回より動きがよくなりましたね”と声をかけてもらえるのがうれしい」と笑顔を見せていた。
 
同医院の安部敬子事務長は、「協定を締結してもコロナ禍でなかなか連携できず、今回初めてこのような機会を設けられました。楽しみながら運動できるメニューを組んでくださってとてもありがたい」と話す。指導する遠藤慎也助教は、「学生たちはメニューや反省点などを記録して共有し、自主的に集まって“次はこうしよう”と話し合い、動きを練習してから次のレッスンに臨んでいました。グループレッスンならではの一体感や楽しさも感じてくれたのでは」と話していた。

 

【学部長に聞く】
融合的なプロジェクトで広い視野を

健康学部 菅野 和恵学部長

本学部では「ソーシャルウェルネス」「メンタルヘルス」「栄養」「運動」「ソリューション」を多角的に学び、複雑化する健康課題を解決する人材の育成を目指しています。学生たちは1、2年時に各領域の基礎を学び、3年時からゼミ活動を始めます。最近では、福祉を専門としながら運動の知識を取り入れたり、メンタルヘルスと栄養を組み合わせたりと、領域を横断するマルチスキルを生かして研究に励む学生も多く、我々教員も学びの広がりを感じています。

 

本学部開設1年目から開講してきたフィールドワークは、そうした積み重ねと先生方の熱量に支えられて学際的で融合的な新しいプロジェクトが増えています。KEITHのように授業時間以外でも積極的に現場で学ぶ学生も多くいます。

 

健康課題に簡単な処方箋はありません。学生たちは実際の現場に出ることによって、座学で学んだ知識を自分事として捉えられるようになり、ひと回り成長して帰ってきます。時間をかけて課題を解決しようとする経験は、将来必ず役に立つはずです。今後も日々の学びの中で自分の専門だけに凝り固まらない柔軟性を磨き、広い視野で健康課題に向き合ってほしいと考えています。

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