特集
2022/03/01座学や実習で幅広い学びを
分野を横断し多角的な視点を養う
2018年度に開設された健康学部健康マネジメント学科から、間もなく1期生約190人が卒業を迎える。「ソーシャルウェルネス」「メンタルヘルス」「栄養」「運動」と、それらをつないで問題の解決策を導き出す「ソリューション」を学びの柱に掲げて教育研究活動を展開してきた。分野を横断した多角的な学びの成果を1期生がオンラインで語り合った。
【参加者】
田中蒼人さん(左上)
高橋陽実さん(右上)
門脇未来さん(左下)
姫野星南さん(右下)
――健康学部を志望した理由を教えてください。
田中 高校までサッカー部に所属していたこともあり、運動や栄養、社会福祉など幅広い学びができるのではないかと考えました。
門脇 私も高校まで水泳部だったので、運動にかかわる勉強をしたいと思いました。ただ1分野に限定するより、健康について幅広く学んだほうが将来に生かせると考えたことが決め手です。
姫野 付属相模高校出身なので、学校での説明会で健康学部が新設されることを知りました。福祉や栄養、心理、運動なども学べる点に魅力を感じましたね。
高橋 私は3人とは違い、“これを学びたい”というものがなくて、将来も漠然としていたんです。そこで、4つの分野を勉強できる健康学部で興味のあることを見つけたいと思いました。実際に入学すると、先生方との距離が近く、1期生として一緒に学部をつくっていけたところもよかったと感じています。
――印象に残った授業はありますか。
田中 「健康づくり運動の実技と指導」です。健康運動実践指導者とトレーニング指導者の資格取得に必要で、筋力トレーニングや有酸素運動、水泳、エアロビなどの指導法を学びました。男子サッカー部の学生トレーナーをしていたので、実戦で役立つ技術が身についたと感じています。
門脇 身近にある食品の栄養素やそれを摂取する人体の変化を分析する「健康科学実習」は、4年間で最も大変な授業でした。高校で化学の基礎は勉強していましたが、文系なので実験の手順を聞いても内容がわからず、リポートも大苦戦(苦笑)。でも、自分はこういうこともできるんだと気づけたことで将来の選択肢が広がりました。
今年度初開催した「精神保健福祉士実習報告
会」。国家資格を取得するためには、医療機
関と障害福祉サービス事業所等の地域機関の
2カ所で210時間以上の実習が必要とされてお
り、1期生が現場の指導者と後輩学生らの前で
実習成果を発表した
姫野 3年時に知的障害のある子どもたちの相談支援に行った「相談援助実習」が思い出深い。もともと福祉に興味があり、1、2年時は必修科目を中心に1限から4限まで授業を取っていたので、やっと実習に行けた!という喜びが大きかったですね。十数人の大人がタッグを組んでどうやって支えていくかを考える、教科書だけでは想像できなかった現場を体験できたことはとても貴重な経験になりました。
高橋 卒業後、精神保健福祉士として病院に勤めるので、今学期の「精神保健福祉援助演習」は大きな学びでした。病院の医師や看護師、ソーシャルワーカー役のロールプレイングで患者さんのカンファレンスを体験しました。多職種で意見を出し合いながら患者の症状を見極め、どんな薬を使うのか、最良の支援は何かを考える時間になり、いい刺激を受けました。
――部活動や課外活動には参加しましたか。
門脇 健康学部の学生有志による「運動指導勉強会(KEITH)」に所属し、下級生のうちは授業で基礎を、勉強会で応用を学び、3年生以降は自分たちで企画を立てて実践するアウトプットができました。ほかにもオープンキャンパスの手伝いや、建学祭での学部紹介動画の作成、ロシアの大学生と交流するオンライン留学、セミナーへの参加などさまざまな活動に積極的に参加し、視野が広がるのを感じました。
田中 KEITHは授業を補完して応用する貴重な場でしたね。自分は「東海大学スポーツサポート研究会」にも所属し、2年時から男子サッカー部の学生トレーナーを務めました。最初は右も左もわかりませんでしたが、健康学部だけでなく体育学部の授業も受講。現場で先輩トレーナーにも教わりつつ、テーピングやリハビリメニューの考案・指導などを担当しました。昨年度、サッカー部が全国大会「#atarimaeni CUP」で優勝できたときは本当にうれしかったです。
高橋 私は自分たちでストレッチなどの動画を作り、日本ユニバーサル美容協会が主催する「ユニバーサル美容フェスタ」に出展したことが印象深いです。仲間と一つのことをやり遂げる達成感を得ることができました。
――3年時からは新型コロナウイルス感染症拡大の影響でオンライン授業も増えました。
門脇 3年時は実家のある三重県に帰り、授業はすべてオンラインで受けていたので、他学部の授業や中国語の授業など幅広く履修することができました。ただ、デンマークで現地の福祉を学ぶ「フィールドワークC」が中止になってしまったのは非常に残念でした。
姫野 下級生の多い授業や他学部の授業も、オンラインだと履修のハードルが下がりますよね。時間ができた分、福祉の勉強に打ち込めましたが、友達と会えないのはやはりつらかったです。
――4年間の学びを今後どのように生かしていきたいですか。
田中 卒業後は高齢者施設で運動指導者として勤務する予定です。運動指導だけでなく、介護や福祉も学べたので、知識を組み合わせて仕事に生かしたいと思います。
高橋 精神保健福祉士は患者さんや家族の話を聞き、社会復帰に向けたサポートが仕事です。「あなたにとっての健康とは?」を考え続けた4年間は、患者さんと向き合う準備になりました。
姫野 2年時にNPOのインターンシップに参加し、タイとミャンマーの子どもと女性の支援に携わり、病院での実習ではけがや障害のある人、高齢者らとかかわりました。一人ひとりにどのような背景や個別性があるのか関心を向けられるようになったことは、総合病院の医療ソーシャルワーカーとして働くうえで大切な視点なので、大事にしていきたいです。
門脇 4年間幅広い分野を学び、最も興味を持った栄養について深めたいと、大学院健康科学研究科への進学を決めました。堀真奈美先生(学部長)の研究室に所属する予定なので、健康経済学の視点も交えながら、健康に興味のない人の関心をどう引き出すかを考えていきたいと思います。
学部長に聞く
4つのハートを軸にした教育研究
需要高まる健康分野に貢献
健康学部 堀真奈美 学部長
本学部のロゴマーク=右画像=には、4つの分野を表すハートと、それをつなぐソリューションによってHealthのHになるという学部設置の理念を込めています。1つだけ色が濃いのは、学生一人ひとりのハートに火をつけ、「自分にとっての健康」を見つけてほしいと考えたからです。
一言に栄養学と言っても食育から実験系の授業まで、運動学も生理学からフィールドでの実践、運動指導までと幅広い。ソーシャルウェルネスは社会福祉、法・制度を座学で学ぶだけではありません。メンタルヘルスも心理学に加え、相談援助に必要なコミュニケーション系の演習もあります。健康を多角的に学ぶ学部を目指すことは、私たち教員にとっても大きな挑戦でした。
その中で、1年時の選択必修科目である「フィールドワークA」では分野の異なる複数名の教員によるプログラムを用意し、卒業研究では研究室を横断した取り組みもあり、新しい学びの場をつくれたと感じています。
コロナ禍ですべてのカリキュラムを予定どおりできたわけではありませんが、オンラインだからこそ可能となった海外との交流もありました。先生方の努力や学生の協力で、1期生の学びは無事にゴールを迎えます。
とはいえ、学部としてはまだまだ発展途上。教員や学生の声を反映し、来年度からの新カリキュラムでは、より系統的に健康を学べるよう改善に取り組んでいます。コロナ禍も長引く今、健康に対する需要はさらに高まっています。今後も、さまざまな視点と最新のエビデンスを持った、社会で活躍できる人材を育てていきます。
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