特集
2024/03/01チャレンジプロジェクト「3.11生活復興支援プロジェクト」(3.11LCP)が2月18日に、岩手県大船渡市でシンポジウム「東北から能登へ~復興まちづくりの経験はどういかせるか~」を開催した。東日本大震災からの復興の経験を、今年1月に発生した能登地震の被災地につなげようと企画したものだ。湘南キャンパスとオンラインでつなぎ、地域住民や学生、卒業生、研究者が登壇。約30人が参加した。
2011年3月の東日本大震災発生直後から同市三陸町越喜来泊地区の住民らと共に活動を継続してきた3・11LCP。公民館の建設や地域交流イベントの開催などの復興まちづくりに協力してきた。
シンポジウムは、今年3月末でプロジェクトの終了が決定したことから、活動の集大成としてこれまでの活動を振り返るとともに、その経験を他の地域における復興にどのように生かすかを考えることを目的とした。
当日は、初めにプロジェクトリーダーの橋本泰さん(観光学部3年)が、「全国各地でさまざまな災害が発生しており、支援活動の重要性が高まっています。復興から得た教訓を今後どのように生かせるかを検討しましょう」とあいさつ。続いて泊地区公民館で総務を務めた佐川静香さんらが被災当時の経験を語り、「地域住民が集まる公民館がなくなったことが一番の不安材料でした。東海大学の皆さんが地域の拠点となった応急建築『どんぐりハウス』を作ってくれて本当にありがたかった」と振り返った。
続いて、プロジェクト活動の初期、中期、後期を代表する卒業生たちが登壇。初代プロジェクトリーダーの下田奈祐さん(大学院工学研究科13年度修了)は、「設計や空間デザインを学ぶ学生として、“自分に何かできることがある”とプロジェクトを立ち上げ、持続可能な復興支援がしたいと考えました」と話した。
持続可能な復興実現へ 住民と外部の協力体制を
さらに、工学部元教授で在職中はアドバイザーとして学生たちの指導にあたったNPO法人アーバンデザイン研究体(UDM)の杉本洋文代表理事は、「復興支援において最も重要なのは、被災地の住民と外部から来た人が共に活動していくこと」と提言するとともに、「この成果を能登地震の被災地に直接的に継承することは難しいが、復興にはコミュニティの一体化はもちろん、個々人が自分でできることを増やしておく必要性があることを伝えたい」と語った。
現地でシンポジウムの運営に携わった橋本さんとメンバーの半谷義弘さん(法学部2年)は、前日に泊地区公民館でUDMの杉本代表理事、作山康副理事長(芝浦工業大学教授)、金子哲也事務局長(建築学科非常勤講師)ら専門家、泊区長の及川和義さんら地域住民との交流会に出席。「どんぐりハウス」を移築してオープンした「結っ小屋」の活用策や、プロジェクト終了後の学生と地域住民間の交流に向けたアイデアなどについて、活発に意見を交わした。
また、シンポジウム当日の午前中には、登壇者の一人で17年度プロジェクトリーダーを務めた杉山愛さん(政治経済学部19年度卒・東海大学職員)らも合流し、三陸鉄道・三陸駅周辺や「結の丘」と名づけられた高台移転住宅地など泊地区の現状を視察した。
橋本さんと半谷さんは、「プロジェクトは一定の役割を終え今年度で終了しますが、今後も泊地区にうかがって交流の機会を持っていきたい」と話した。
◆2011年4月
大震災を受け特別プロジェクトとして発足した3.11LCP。持続可能な復興支援活動を目指した最初の活動として地域住民らと協力し、泊地区に復興の拠点となる応急公民館「どんぐりハウス」を建設した。以降、宮城県石巻市にも同様の建物を建設。13年にわたる活動がスタートした。
◆2012年7月
津波で流失した泊地区の高台移転計画に、UDMなどと共に協力。プロジェクトメンバーが復興まちづくり会議にたびたび出席し、移転先の景観を守るルール策定や住宅の設計にも携わった。13戸が移転した地区は「結の丘」と名づけられ、他地域からの視察も多数来訪するなど注目を集めた。
◆2014年7月
地区の集会所や拠点として恒久的に使用可能な建物が必要との考えから計画され、14年1月から建築工事が始まっていた“本設”の公民館が完成。学生たちも現地に入り、住民の意見に耳を傾けながら設計し、屋根の板張りやサッシの取りつけといった施工に携わった。
◆2015年4月
本設の公民館完成を受けて撤去されていた「どんぐりハウス」が、復興のシンボルとして泊地区内の高台に移築・再建。「結っ小屋」と名づけられ、3.11LCP主催の交流イベントの会場などとして活用された。20年には、地区内の事情から近隣の低地へと再移築されている。
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