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特集

2024/08/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

【児童教育学部「あかちゃんひろば『きらり・Tokai』」】親子との交流通じ保育を学ぶ

子どもの成長を共に見守る

 

2022年度の児童教育学部新設に合わせて、湘南キャンパス20号館1階に開設された「あかちゃんひろば『きらり・Tokai』」。3年目を迎える現在は、当初から携わる専門スタッフだけでなく、多くの学生が保育支援に参加している。そのほかにも、自治体や企業と連携した多様な授業・プロジェクトを展開。地域と共に学ぶ保育の現場に迫った。

 

子どもの月齢や発達段階に合わせてさまざまな

遊びを提供し、保護者とも交流を深める学生たち

児童教育学部が新設された22年度から始まった「あかちゃんひろば『きらり・Tokai』」は、同学部の前身で、静岡市にあった短期大学部児童教育学科(20年度閉学)から続く子育て支援施設。0歳から2歳までの乳幼児を対象に、認定こども園の園長など保育経験のある専門スタッフが常駐している(大学の長期休暇中は閉室)。

 

22年度の秋学期から徐々に希望する学生が保育体験に参加し、現在は「子育て支援実習A」を履修する学生たちが週1日、エプロンと手作りの名札を身につけ子どもたちとふれあっている。

 

ひろばと隣接する部屋からはマジックミラー

越しに学生が保育状況を観察。専門スタッフの

対応や子どもの様子を見てメモを取る姿も

7月11日には3年生14人が参加。午前9時半の開室に合わせて数人が室内に入り、壁際で専門スタッフと親子の様子を観察する。子どもの様子に合わせて遊びに加わったり、隣接する部屋からマジックミラー越しに観察してメモを取ったりと、多角的に保育を学んだ。授業を担当する石井則子助教は、「学生には“いつもの姿”を見て学んでほしいので、子どもが安心して楽しく過ごせるように心がけ、学生にとっても学びの多い場となるよう気をつけています」と話す。

 

室内には滑り台や短大から引き継いだ木製玩具、学生が手作りした段ボールのおもちゃなどが用意され、天気のいい日はウッドデッキと芝生が敷かれた中庭で子どもが走り回る姿も。夏は水遊びなど、子どもの希望に合わせて多彩な遊びを提供している。

 

定期的に利用する保護者からは、「広々とした室内にたくさんのおもちゃがあり、スタッフや学生が遊んでくれて子どもが楽しんでいる。保護者同士のコミュニティーにもなっている」「毎日子どもと1対1で過ごしていると孤独を感じることもあり、大学がこういった場を提供してくれるのはありがたい」といった声が聞かれた。

 

授業を履修する佐藤美柚さんは、「1年生から保育園や幼稚園での実習はありますが、保護者の方と直接関わる機会は少ないため、一緒に遊びながら言葉がけや関わり方、保護者の視点も学んでいます。ひろばでの経験と学外での実習経験は似ているようで異なることが多く、どちらの経験も生かせています」と話す。

 

石井助教は、「核家族化が進み、日中は母親が1人で子どもと過ごす家庭が多いことから、“自分以外の人とも接してほしい”と考え学生との交流を楽しみに利用する方が増えています。保護者の思いに寄り添い、子どもの小さな成長を一緒に共有することが私たちの役割の一つ。学生には利用者それぞれにどのような支援が必要かを考えながら取り組んでほしい」と期待を寄せる。

 

キャラクターが出迎え学生有志が手作り装飾

 

サポーター学生による装飾で、いつもにぎやか

なあかちゃんひろば入り口(20号館館内側)

ひろばの入り口横の壁面には手作りの装飾が施されており、この夏は『ぐりとぐら』(福音館書店)のキャラクターが登場。学生有志「あかちゃんひろばサポーター」が授業や実習の合間を縫って制作している。

 

今年度は絵本をテーマに装飾。2年生4人が壁面だけでなくひろば室内や20号館入り口の飾りも作成した。こども園の園長経験者である石井助教に環境構成を教わり、7月はひまわりや花火、夏祭りの装飾で館内を彩った。学生たちは、「ひろばの壁面は中からも楽しめるよう工夫し、テープやモールを使うなど立体的にしています。実践的な工作の手法が身につき、保育実習に生かせる」と笑顔を見せる。石井助教は、「過去2年のサポーターによる制作物も作品の中に取り入れ、季節感や心地よさ、楽しさの中に自分たちの思いも込めながら取り組んでくれています。学生の『こういうふうにしたい』という思いを形にできるよう、ひろばを利用する親子に思いを馳せながら、学生と一緒に考え構想力や実践力につなげられるようサポートしていきたい」と語っている。

 

Pick up 地域連携で多彩な実習・プロジェクト

 

神奈川県内の小学校で 教員の仕事を体験

 

「学校体験活動」を履修する2年生147人が6月に、神奈川県内各地の小学校で1週間の実習に取り組んだ。この授業では6月に小学校、9月に幼稚園での実習をそれぞれ1週間ずつ行い、補助的な役割を通して教員の仕事を体験する。

 

6月24日から28日には、平塚市立金目小学校で実習。学生たちが低学年と高学年の担当に分かれて授業の補佐に入り、掃除や昼休みの時間も児童と共に過ごした。

 

学生からは、「現場の先生方の仕事を間近で見ていると、落ち着きがない子どもへの声かけや板書など勉強になることがたくさんある。『こうしなさい』と指導するのではなく、『今は何をする時間かな?』『周りの子は今どうしてる?』など、子ども自身に気づかせるような声かけが大切だと感じた」といった声が聞かれた。

 

小田急との連携活動 駅を装飾しイベントを補助

 

 

学生有志による「地域連携プログラム」が昨年度から、親子で楽しめる駅づくりに取り組む小田急電鉄株式会社との連携プロジェクトを行っている。

 

7月12日には、「小田急動物園」と題して小田急線秦野駅でオオカミなど動物を模したブロックや、段ボールで作成したヤシの木など「夏」をテーマに装飾=上写真。13日には、秦野駅周辺で開催された「丹沢日和フェスティバル」の運営もサポートした=左写真。北川真大さん(3年)は、「“いつも飾ってあるブロックだ!”と声をかけてくれる人もいて、自分たちの活動の認知度を再確認できました」と話した。

 

秦野市の課題解決へ 子育て支援策を検討

 

「地域連携ボランティア」を履修する2年生10人がこの春、秦野市をフィールドに現地調査やイベントの企画などに取り組んだ。同授業は地域が抱える課題と向き合い、解決策の考案を通して子どもを取り巻く地域社会への理解を深めることが目的。

 

7月22日に行われた活動報告会には、同授業の非常勤講師を務めた秦野市役所環境産業部部長の岩渕哲朗氏ら市職員も出席。今回の活動から抽出された課題の具体的な解決策を活発に議論した。まちおこしをテーマにデジタルスタンプラリーを企画したグループの安西凛乃さんは、「市外在住の自分たちには地域の課題解決は難しいと思っていましたが、授業で小田急電鉄や秦野市の皆さんからお話を聞いてイメージが湧きました。今後も地域活性化に協力したい」と語っていた。

 

学部長に聞く 人と人とのつながりが保育・教育の原点

児童教育学部 山本康治学部長

 

児童教育学部では保育園・幼稚園・小学校教諭の免許を取得でき、約6割が小学校教諭を志望しています。しかし、保育実習やあかちゃんひろばの保育支援を経て、「幼稚園・保育園と進路を迷っている」という声も出てきています。これは、本学部が重視する保育・教育を連続的に見る目が培われている証拠だと思います。知識を教えるだけでなく幼児教育をベースに、子どもが主体となる授業に取り組む教員の養成を目指しています。

 

本学部での4年間の総実習時間は640時間にも上ります。1、2年時に保育の基礎を身につけ、土台ができた3年目は自ら考え動けている学生が多い印象です。各実習先からは高い評価をいただいております。

 

開設から3年目を迎え、自治体や企業の協力を得た授業やプロジェクト活動も軌道に乗ってきました。人と人とのつながりが保育・教育の原点であり、その中で子どもは育っていく。地域の方々に学生を育ててもらい、学生は保育者・教員に必要な地域の方を巻き込み一緒に活動する力を養っています。

 

意欲的な学生が多い一方で、授業や実習が忙しくプロジェクト活動の時間が取れないという声も多く、これは私たち教員の課題です。時間割やカリキュラムを見直し、学生が多様な経験を積める環境をつくっていきたいと考えています。

 

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