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特集

2023/06/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

【多職種連携チーム医療演習】学科や職種の枠を超え

患者にとって最善な提案を

医師、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師を目指す学生が連携し、患者にとって最適な治療やケアの方法を考える――医学部と健康学部が4月22日と5月6日に、学術交流協定を締結している昭和薬科大学で2023年度「多職種連携チーム医療演習」を実施した。チーム医療の知識や技能の修得などを目指すもの。初めて対面で行われ、両大学から326人の学生が参加した。

 

それぞれの専門分野を生かして意見を出し合う

「患者本人と家族の治療に対する意見の相違を解消するにはどうすればいいか」「妊娠を望んでいる患者さんの不安を取り除くためには先を見据えたアドバイスが必要」「経済面を考慮して、同じ効果が期待できる安価な薬を提案してみよう」

 

医学部医学科と看護学科、健康学部健康マネジメント学科、薬学部薬学科の学生が混在する40チームには、4学科の教員が協力して作成した「49歳、美容師の女性。家族はフリーカメラマンの夫と息子、経済面に不安あり。胸腺腫合併重症筋無力症と診断」「72歳男性、特発性肺線維症と診断。妻は認知症で、患者本人が妻の介護中である」など、症状も抱える背景も異なる5つのシナリオが割り当てられた。

 

初日の全体会では両大学の教員が期待を

語った

学生たちはシナリオを基に患者の病態を把握し、本人の希望や家族の状況、経済面などを考慮しながら、治療や薬の選択、病院でのケアや退院後のサポートなど、それぞれの立場から意見を出し合った。黒澤明希子さん(医学科5年)は、「初日は初対面の緊張もあってなかなか話が進みませんでしたが、2日目には打ち解けて自分たちの考えを表現できるようになりました」と振り返る。「退院後のケアを担う施設と病院の連携など、理解が不足している部分がありました。医師は治療がメインですが、それだけでは患者にとって最適なケアにはなりません。周りから信頼され、助け合える医師になりたい。実際の現場でもチーム内の信頼関係やコミュニケーションが重要になると実感しました」

 

意見を出し合い協力 互いの役割を理解する

意見を書き出しまとめていく

2日目の午後には4つの教室に分かれ、チームごとに考えた治療方針やケアの方法を発表した。聞き手に回った学生からは、「別の治療法は検討しましたか?」「在宅看護を選んだ場合、訪問介護の回数はどれぐらいを想定していますか?」といった質問が上がり、“患者にとって何が最善か”を考えていった。

 

 

資料を提示しながら治療方針などを発表

最後には、教室ごとにファシリテーターを務めた教員が優秀な発表をしたチームを表彰。教員からは、「どの職種も自分一人の力では患者を幸せにはできません。さまざまな人に相し、意見をもらい、みんなでベストの医療を提供する。ここで経験したことを生かしてください」「意見が異なったり、さまざまな問題にぶつかったりすることもあるでしょう。でも、皆さんには患者を思い、勇気を持って発言してほしい」と期待が寄せられた。

 

最後には、教室ごとにファシリテーターを務めた教員が優秀な発表をしたチームを表彰。教員からは、「どの職種も自分一人の力では患者を幸せにはできません。さまざまな人に相し、意見をもらい、みんなでベストの医療を提供する。ここで経験したことを生かしてください」「意見が異なったり、さまざまな問題にぶつかったりすることもあるでしょう。でも、皆さんには患者を思い、勇気を持って発言してほしい」と期待が寄せられた。

 

【担当教員に聞く】即戦力の人材を育成する

メディカルサイエンスカレッジ(伊勢原教育計画部)部長 濵田昌史 教授(医学科)

 

この取り組みは2015年から構想を練り、いち早く取り組んでいた北里大学での演習も見学するなど準備を進めてきたものです。昭和薬科大の先生方とも協力して、実際の患者の症例を基にシナリオを作成してきました。学科ごとに学びの目的や最終目標は異なりますから、教員も専門の枠を超えて意見を出し合ってきました。

 

しかし、いよいよスタートしようと思った矢先にコロナ禍となり、過去2年間はオンラインでの実施を余儀なくされました。画面越しでも学生たちは一生懸命に取り組んでくれましたが、やはり活発に議論を深める段階に至るのは難しい。念願の対面開催となった今回は、積極的に意見を交わし、発展させ、まとめていく姿が見られ、非常にうれしく思いました。

 

発表の最後に、優秀なチームを表彰しましたが、今回から学生同士でチームのメンバーを評価する「学生間レビュー」も採用しました。“この人と連携したい”“信頼できる”と思えるかどうかが重要なポイントだからです。

 

国家試験の合格を目指すだけではなく、学生のうちから医療従事者の一員として振る舞い、卒業後は即戦力として働けるようになってほしいと考えています。そのためにも、毎年結果を振り返り、本演習もアップデートしていきます。

 

専門性を発揮する 

看護学科 大山 太 准教授

現場では全てを医師に頼るのではなく、看護師として何をする存在なのかを考え、治療と生活を健康の側面からサポートできる看護のスペシャリストになってほしいと考えています。誰か一人が頑張ったからといって全てがうまくいくものではありません。専門性を発揮しながら協力し合うことが大切。学生たちは、演習を通して看護師のハブとしての役割も学んでくれたのではないかと感じています。

 

次につながる経験

健康マネジメント学科 阿部正昭 

演習では治療方法だけでなく、仕事や出産、家族など、考えなければならない状況が多くあります。今回、学生たちは退院後の生活や地域包括支援センターとの連携にもしっかりと目を向けていました。福祉や介護などの社会的支援を行うソーシャルワーカーを目指す学生は今後、現場での実習も控えています。座学ではイメージしきれない多職種、他機関との連携を考えられたことは次につながると思います。

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