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特集

2016/04/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

IoT技術とデザインを融合

教養学部芸術学科デザイン学課程
認知症患者を支える社会に

教養学部芸術学科デザイン学課程が、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)のデザイン委員会と、約半年にわたって認知症に関する産学共同研究を実施してきた。3月15日には神奈川県のNEC玉川クラブで成果報告会が行われ、研究に携わった同課程の学生らが取り組みを紹介した。 ※学年は当時

CIJA加盟企業のデザイナーらで構成されるデザイン委員会から同課程に依頼があり、「認知症800万人時代に向けて認知症理解と社会で自分らしく暮らし続けるためのIoT利活用研究」が始まったのは昨年9月。モノとモノがインターネット上でつながるIoT(Internet of Things)技術を活用し、デザインの観点から認知症予備軍や若年性認知症の人の生活を支えることが目的だ。

研究代表の戸谷毅史教授(教養学部長)や認知症の研究に携わる山崎正人講師の呼びかけで、「学外の人とともに活動したい」「認知症研究に興味がある」というプロダクトデザインとインテリアデザインを専攻する学生有志13人が参加。デザイン委員会のメンバーから、システムを使う人の立場や視点に立って考える「人間中心設計」の最新手法などを学びながら研究に取り組んだ。

「授業ではないので活動は毎週月曜の放課後。時間がない中でも自分たちで認知症について学び、新しいことを吸収しながら積極的に活動していました」と山崎講師は語る。

大切にしたのは“当事者の声を聞くこと”。11月には若年性認知症の中村成信さんに話を聞き、デイサービスセンター川崎も訪問。12月の中間発表会では、賞味期限やどこに何が入っているかを教えてくれる冷蔵庫、忘れ物があると振動して教えてくれるカバンなどを提案した。

当事者の声を大切に 現場の最新技術学ぶ

2月12日には六本木HAB-YUで、若年性認知症の佐藤雅彦さんを招いたワークショップを実施した。時沢斐奈さん(3年)は、「事前に調べる中で自分たちなりに “佐藤さん像”をつくっていましたが、実際に話を聞いてみるとまた違った姿が見えてきた」と語る。小山拓哉さん(同)も、「中村さんは機器の力で生活を豊かにしたいと考え、佐藤さんは自分でできることは自分でしたい、他者とかかわり助け合っていきたいと考えていた。ひとくちに認知症と言っても求めるものが違う。声を聞く大切さを感じた」と振り返る。

学生たちは、メガネの弦に埋め込んだセンサーで心身の状態を把握し、胸元につけたブローチに顔マークが表示される「IoTブローチ」や、困ったことがあったときにスマートフォンのアプリケーションを利用して、近くにいるアプリ利用者に直接電話をして尋ねられる「Connection Drop」などを提案した。

1カ月後の最終報告会では、さらに改良を加えて発表。根間美砂子さん(2年)は、「授業の課題というゴールに向けて丁寧に凝ったものを作るのではなく、次々とスピード重視で作っては検証し、また新しく作る、形にすることで気づくこともあると教えてもらった」と振り返る。戸谷教授は、「今回の研究では、何を作るかよりプロセスを大切にしてほしかった。学生を見ていると、普段の授業でもすでに今回の成果が現れているように感じます。CIAJの方々から現場の最新技術を学べたことも大きい」と語った。

【企業の声】
小澤直樹さん(日本電気株式会社)
学生たちは真面目で一生懸命で、何かひとこと言えばすぐにいろいろなことを考え、よりいいものを生み出そうと熱心に取り組んでいました。彼らは大学を卒業し、社会に出て、新しい時代を担う世代ですから、今あるものを継続するのではなく、新しいものを作り出す発想力豊かな人になってほしい。そのためには社会に出る前に大人と接すること、デザイナーとしてのポリシーや自信をつけることが大切です。

杉妻 謙さん(富士通デザイン株式会社)
“当事者の声を聞けたこと”は何より貴重な経験になったのではないでしょうか。今回の研究成果をいきなり商品化できるわけではありませんが、報告書にまとめてCIAJの加盟企業に公開することで、学生たちの若い視点と自由な発想が今後の商品開発のもとになるはずです。学生たちには“いいプロセスがいいアイデアを生む”という今回の経験を今後に生かしてほしいと思います。

[もう一つの話題]
「優しさと温かさを形に」学生がロゴマークをデザイン

デザイン学課程では、昨年4月から平塚市・東海大学交流提携30周年記念事業「ありがとうプロジェクト」として、「ひらつか障がい者福祉ショップ『ありがとう』」のロゴマークデザインに取り組んできた。

参加した16人の学生の指導にあたった池村明生教授は、「地域活動について理解を深め、見聞きした課題をデザインによって解決する力を身につけてほしかった」と話す。10月に現地を見学し、運営協議会からロゴマークに込めたい思いなどについて聞いた。

「ハート」や「虹」などをモチーフに16案が完成し、1月に関係者約1000人が投票。関野亜紗美さん(3年=当時)のデザイン案が採用された。3月15日に平塚市役所で開催された完成披露式では、ロゴマークを使った看板やのぼりが店内に設置された。

関野さんは、「皆さんから感じた優しさや温かさを表現した。多くの方にお店を知ってもらえる力になれたら」と笑顔を見せた。

 
(写真上から)
▼ワークショップでは学生から佐藤さんに、「普段使っているカバンの中身を教えてください」「今後について不安なことはありますか?」といった質問が投げかけられた
▼佐藤さんの意見を参考に、付箋に書き出して意見をまとめ
▼模型を作って発表
▼最終報告会にはCIAJ加盟企業の社員らも詰めかけた平塚市の落合克宏市長(左から2人目)らと披露式に参加した関野さん(右から2人目)

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