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特集

2011/02/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

英語の算数ドリルや機器の仕様書が教材

IT分野に直結した英語に、低学年から積極的に触れる

学部開設から3年。高輪校舎の情報通信学部では、国際化が進むIT分野で活躍する人材育成を目指して、学部独自の英語教育が本格的に進められている。目標は「世界で通用する情報技術者になるために、高学年次には英語で研究発表ができるようになること」。入学直後から展開されるユニークな英語教育を追った。

高輪教養教育センターの教員が中心となって進めている情報通信学部の英語教育は、1校舎1学部ならではのきめ細やかな指導が特徴だ。基本は少人数教育と能力別クラス編成。これに加え、授業で使用する教材にもこだわりがある。

東海大学における英語の必修科目では通常、学部や学科に関係なくすべての学生が外国語教育センターによるレベル別の一般英語テキストを使用しているが、情報通信学部ではこれに加えてもう1種類、専門分野に関連した教材を使っている。例えば1年生の必修科目「英語コミュニケーション:リスニング」では学力別にAからHまでの8レベルに分けられ、1クラス25人前後で授業を受ける。授業では一般英語テキストに加え、アメリカの小学6年生用の算数ドリルと自作音声教材を使用。問題自体は簡単だが、分数や桁の多い数字の数式、比例や図形、順列・組み合わせの問題など、耳慣れない英単語や言い回しが並ぶ。

受験用とは異なる実践的な英語を学ぶ
1月17日に行われた経営システム工学科と通信ネットワーク工学科のCクラスでは、授業の締めくくりとして英語プレゼンテーションを実施。学生が算数ドリルから問題を1つずつ選び、1分間で解答に至る理由を英語で説明した。

ある建物と影の長さの比率から別の建物の高さを求める問題を選んだ小林郁さん(経営システム工学科1年)は、黒板に図を示しながら説明。用意した紙を読むのではなく、聞き手に向かって話す姿勢に、岡田礼子教授(高輪教養教育センター)から「GOOD!」の評価が寄せられた。それでもプレゼンテーションを終えた小林さんは、「まだまだ日本語に頼ろうと思ってしまう。駄目ですね」と自分に厳しい。

2年生になると、さらに実務に即した学習が加わる。3セメスターの「リーディング」では機器の仕様書やマニュアルを読み、4セメスターの「プレゼンテーション演習Ⅱ」では、複数のIT関連製品を比較して「お勧め製品」を英語でアピールするプレゼンテーションを行う。今年度から始まった6セメスターの「テクニカルドキュメンテーション」では、英文文書や英文メールの読み書きを学ぶ。

「情報通信分野の仕事では、英語コミュニケーション能力が欠かせません。将来、エンジニアとして英語で製品説明や仕様書作成をしなければならない可能性は高く、そのためには早い段階から専門分野で使う英語に慣れる必要があります」と岡田教授。入学直後からIT分野に即した英語授業を受けることで、学生のモチベーションも高まっている。「もともと英語が好き」という中島秀彦さん(経営システム工学科1年)も、「受験英語とは違う実践的な英語に出合って、さらに興味がわいた」と話す。

校舎全体に浸透する前向きな学習意欲
とはいえ大多数の学生は英語に苦手意識を持っている。そんな学生の「やる気」を引き出すために実践しているのが、セメスターごとに行われる能力別クラス編成の見直しだ。テストの成績や課題の提出状況、授業態度などを教員が総合的に判断し、学生を適切なクラスに配置して達成可能な学習をきちんとさせる。常に「やれば伸びる」を体験させる仕組みだ。もちろん一挙に3レベル上がる学生もいれば、怠けた結果、レベルを下げてしまう学生もいる。

「1校舎1学部なので、顔ぶれの同じ教員が4年間にわたって英語を担当する。振り返りながら授業を進められるので学生の理解も進みます」と中山千佐子准教授(高輪教養教育センター)は語る。授業内容に加え、試験問題にも工夫が施されている。定期試験の半分は、数学や技術などを含む記述式問題。英語を聞き取って図を描く問題も含まれ、あてずっぽうで答えられる問題はほとんどない。これらの取り組みの結果、第1セメスター終了時に実施する授業アンケートでは、約半数の学生が「入学前より英語学習のやる気が増えて学習時間が増加した」と答えている。

福﨑稔教授(同センター主任)は、「英語の授業に限らず、『努力すればできる』という学生たちの前向きな気持ちは他の教科にも広がり、高輪校舎全体に良い影響を与えています」と、その効果を語っている。

学習経過を常に振り返る
「欠席」「遅刻」「宿題忘れ」などをチェック

情報通信学部の必修英語科目における評価で大きな位置づけを占めているのが、「スチューデントカード」=右写真=だ。普段は教員が保管し、授業のたびに学生に手渡される。表面には、学生の顔写真と教員のコメント欄。裏面には「欠席」「遅刻」「宿題忘れ」などのチェック欄があり、ポイントが引かれる。その一方、「積極的に発表する」などに対して加点もある。

学生は自分のカードを見て、出席状況や現在の評価ポイントなどがチェックできる仕組みだ。日ごろの授業で地道に努力をしなければ、好成績は望めない。こんなところにも、少人数クラスならではのきめ細やかな指導が生きている。



 
(写真上から順に)
・英語プレゼンテーションの様子はビデオ撮影して振り返る。岡田教授は学生の目線までチェックしてアドバイスする
・板書を示しながらプレゼンする小林さん。「英語が身近になった。経営コンサルタントになる夢に近づくために、留学したいと思っています」
・1年生の授業で使われている算数ドリル
・授業で熱心に質問する学生たち。左はジェイ・ヴィーンストラ講師

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