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特集

2013/02/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

ICTを使った授業の可能性

情報教育・外国語教育・チャレンジ
3センター合同研究会
先端技術を教育にどう生かすか


電子黒板などの情報通信技術(ICT)の教育現場での活用法を議論するFD研究会「教室のICT化による教育効果と課題」が、1月12日に湘南校舎で開催された。情報教育センターと外国語教育センター、チャレンジセンターが連携し初めて実施されたもの。教職員約40人が参加した会場を訪ねた。

「学生の多くがスマートフォンを持つように、ICTは日常生活の中に深く入り込んでいる。その一方で、授業での活用法やその効果については十分検討されていない点も多い。この研究会では、各センターの教員の経験や知恵を持ち寄り、幅広い視点から議論したいと考えた」と、企画を担当した白澤秀剛講師(情報教育センター)は話す。

学園では教育の質向上を目指す大学改革の一環として、2009年度に情報化推進本部(本部長=蟹江秀明理事)を設置。12年4月には湘南校舎に52のスクリーンを持つタブレット端末を導入し、ディベート型授業で活用するほか、各学部やセンターの教員がICT機器を利用した授業の試みを行っている。

今回の研究会は教育内容改善の取り組み(FD)の一環で、ICTを利用した効果的な授業の可能性を探ることを目的にしたもの。当日は、高橋隆男教授(情報教育センター所長)と蟹江理事があいさつし、12年8月に文部科学省が発表した中央教育審議会による答申で、ICTを利用した双方向授業の充実が大学教育の課題として挙げられている現状を説明。メーカーの担当者による機器の紹介も行われた。

教育効果の評価法や有効活用の方法を議論
その後、3センターの教員4人によるパネルディスカッションを実施。チャレンジセンターの岡田工教授がタブレット端末を使ったディベート形式の授業の実例を、情報教育センターの日向寺祥子講師が湘南校舎と付属高校をつないで行った遠隔授業などを報告。岡田教授は、「学生が一つの画面を一緒に見ながら情報を調べ、意見交換ができるなどディベートの活性化に効果が期待できる」と語った。

また、外国語教育センターのマーク・シュロズブリー准教授と結城健太郎講師が、写真や動画を使って外国の歴史や文化を見せられる利点や、離れた校舎にも同じ授業を提供できるといった将来の可能性についてプレゼンテーション。来場者を交えての討論では、教育効果の評価方法や有効利用を図るうえで必要な大学の支援体制などについて議論された。3センターでは、今後も定期的にICTをテーマにしたFD研究会を開催していく予定だ。高橋教授は、「より効果的な活用法について、今後も議論を深めていきたい」と話している。

高輪台高
全教室に電子黒板を導入
学習意欲の向上図る


学校と国内外の研究機関をつないだ遠隔授業や情報端末を使った授業など、ICTを利用した授業開発の試みは付属諸学校でも行われている。付属高輪台高校と同中等部では、2008年に全国に先駆けて全教室に電子黒板を導入、積極的な取り組みを展開している。

高輪台高では後援会の協力のもと、授業改革の一環として電子黒板を導入した。教務主任の野々村淳教諭は、「教員と生徒の双方向型の授業を実現し、生徒の学習意欲の向上を図ることが狙い」と話す。同校では導入当初から、各教科・科目の教員が教科会議や公開授業で有効な使い方を議論。電子黒板を組み込んだ指導案や投影用の教材を作成してきた。現在はすべての教科・科目で、従来の黒板と電子黒板を併用した授業をしている。

1月18日に行われた中等部の数学では、多面体の3次元図形を電子黒板に表示し、教員が特徴を説明。高校倫理の授業では、電子黒板に映画『十戒』の一場面を投影しながら、旧約聖書成立の背景などを教員が黒板に板書し、解説していた。

電子黒板を使った授業は生徒からも、「教科書と先生の説明に、図や動画が加わることで理解しやすい」(平岩輝海さん・中等部1年)といった声が聞かれるなど好評だ。電子黒板用の教材は、全教員で共有。毎年改良していくことで、授業の均質化や質の向上にも役立てている。その一方で、「情報通信端末はあくまでも、よりよい授業をするツールの一つとして捉えることが大切」と野々村教諭は話す。たとえば数学の場合、方程式の単元では計算過程を電子黒板に投影するよりも、板書したほうが生徒の理解が高まるという。

「有効に使うためには、機器の特性をしっかり見極めることが必要です。授業の基本は、生徒がわかりやすく、満足できるコンテンツを提供すること。この視点を忘れず、今後も活用法を探っていきたい」と話している。なお、学園ではほかにも、付属翔高校と付属仰星高校、付属望洋高校、菅生高校が電子黒板を導入している。

時代に合う活きた教育を
情報化推進本部長 蟹江秀明理事

情報化推進本部は、学園にかかわるさまざまな情報を収集・共有化し、教育研究活動に資することを目的に2009年度に設立されました。医学部付属の4病院における電子情報の共有化を進めるとともに、11年度は付属望星高校の授業のインターネット配信化を支援。12年度から、初等中等教育部や東海大学教育支援センターと連携し、付属高から東海大への早期内定者を対象にした入学前指導用e―Learningシステムの導入体制づくりにも取り組んでいます。

高輪台高の事例にみられるように、ICT技術は効果的な教育を展開するうえで大きな可能性を秘めています。一方で、機器の導入にあたっては学園の目指す教育理念をしっかり見据え、実験的な授業を通して具体的な活用法を研究していくことも重要です。大学の使命の一つは、時代のニーズに合った生きた教育を提供することにあります。今後も学園の先生方が蓄積してきた知見や経験を結集し、よりよい教育の実現に向けた議論を深めていきたいと思います。

 
(写真上)参加者からも活発な意見が出されたパネルディスカッション
(写真下)高輪台高中等部の数学の授業。電子黒板を利用することで、板書の時間が減り、教諭と生徒のコミュニケーションも増えている
Key Word   ICTとは
ICT(Information Communication Technology) は、「情報通信技術」の略称でITとほぼ同義。コンピューターやスマートフォンといった情報端末と、インターネットをはじめとする通信技術を融合させたものを指す。近年では、文部科学省によって小中学校での電子黒板などの導入が推進され、生徒参加型の授業を実現する機器として注目されている。

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