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特集

2013/09/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

夢に向かって実践的なスキルを磨く

秦野市と教科学習支援員の派遣で連携
教職を目指す学生46人が小中学校の現場を体験

小中学校の現場で経験を積み、実践的なスキルを磨く――。教職を目指して学んでいる学生を、湘南校舎のある秦野市内の小中学校に教科学習支援員として派遣するプログラムが今年度から始まっている。5月から7月まで学生46人が、市内にある小学校13校と中学校9校すべてに派遣された。秦野市と東海大学は以前から、教育ボランティアの派遣などで協力してきたが、全学校への派遣は初の取り組みだ。

プログラムで派遣されるのは、各学部の学部長から推薦を受け、事前説明会を受講した学生たち。5月末から7月中旬にかけて、授業の空き時間などを利用して毎週1、2回、派遣先の小中学校で授業や催しを補助したほか、休み時間には児童・生徒と一緒に遊ぶなど、学校運営の全般を経験した。

東海大学と秦野市では昨年度、市内の中学校2校へ試行的に学生を派遣。「終了後、派遣を受け入れた学校の報告を聞いた他校から、派遣地域を広げてほしいとの要望が寄せられ、市内全小中学校への派遣を依頼することになりました」と秦野市教育研究所の杉山哲也所長は話す。

この要望を受けて、市の教育委員を務める教養学部の内田晴久教授(教育支援センター所長)が中心となり、教職課程の運営を担当している課程資格教育センターや教学部と派遣学生の選考方法などを検討。今年5月に東海大と秦野市教育委員会の間で覚書を交わした。内田教授は、「生徒と接し、現場を定期的に経験できる。教養学部では以前から市内の小中学校に理科支援員を派遣しており、学生から好評だったことも背景にありました」と話す。

すべてが勉強の場、反省ノートが宝物に

派遣先の一つ市立大根小学校には春セメスターの間、週3回3人の学生が派遣された。その一人、福重昇子さん(理学部3年)は金曜日の午後、授業支援に取り組んだ。7月12日には、昼休みの掃除を手伝った後、1年生の国語の授業をサポート。担任の教諭が授業を進めている間は教室の後ろから目を配り、ときおり児童に声をかけ、児童が授業中の課題を解いているときにはアドバイスもした。

福重さんは、「教員の目線で経験できるのが一番の魅力。児童との距離のとり方や先生方の教え方など、ここにいる時間のすべてが勉強になる」と語る。「担任の先生がそばにいるので、自分の感じた疑問点を授業後すぐに質問できたのもよかった」。また、市立南小学校に派遣された澤田真菜さん(教養学部3年)は、「児童のことを第一に考えて、話し合いを重ねながら指導している姿が印象的だった。自分もこのような教員になりたいと、目標が明確になりました」と振り返る。また2人は、その日に感じたことや印象に残った点、反省などをノートに書き留めていた。「経験したことをできるだけ生かしたい。書いてあることのほとんどは反省ばかりですが、大切な宝物です」(澤田さん)

学生の募集と派遣はセメスターごとに行われ、秋セメスターの教科学習支援員は9月下旬に募集される。応募には各学科の推薦が必要。希望者は各学科の教職担当教員に相談のこと。

(写真上)児童からの思わぬ質問に笑みがこぼれる場面も
(写真下)国語の授業をサポートする福重さん。大根小学校の江原広美教頭は「私たち教員にとってもよい刺激になっています」と話していた
 
担当教員に聞く
経験を共有する場もつくりたい
課程資格教育センター 山本和重 所長

このプログラムでは、一人の学生が半期にわたって同じ学校に定期的に派遣されます。そのため、学校がどのように運営されているのかといった校務だけでなく、児童が成長していく様子、雰囲気の変化などを知ることができるのが特長ではないでしょうか。学校での経験は、学生自身が自らの描く教師像をより鮮明にするとともに、在学中に実践スキルを身につけることにもつながります。また、4年時に行う教育実習の期間を効果的に過ごすうえでも大きなメリットがあります。これまでは学校に慣れるのに時間がかかる学生も少なからずいました。そうした困難を軽減できるのではと期待しています。

今後は、学生たちの経験を共有する場を設けたいとも考えています。学生同士が自身の経験を持ち寄って意見交換することで、現場の多様性を認識し、自らの経験についての理解をさらに深める。そこから、より高いステップへ向かって学んでいってほしいと思っています。

 
社会の視点
教育現場の活性化に期待
秦野市教育研究所 杉山哲也 所長

小中学校に教科学習支援員の学生が来てくれることは、各学校にとって授業をはじめとする運営面で大きな助けとなっています。教員は授業の進行に、より集中することができます。また、お兄さんお姉さんが見てくれていることで、児童・生徒の授業に取り組む姿勢も積極的になり、学校に来るのが楽しくなるという効果も出てきています。さらに、子どもたちと年齢が近いため、話しやすさもあり、心のケアにつながっているという報告もあります。児童・生徒から寄せられるそうした信頼が、学生の皆さんの意欲向上にもつながるといいですね。

教育現場での経験は、教員という職業につくうえだけでなく、社会経験としてもプラスになるのではないでしょうか。将来結婚して子どもができたとき、自分の子どもとどのように接すればよいのか、学校とどう協力していくかを考える際にも大いに生きてくると思います。各学校からもすでに「来てもらってよかった」との声が多数寄せられています。今後も多くの学生の皆さんが、継続的に参加してくれることを期待しています。
Key word 東海大学と秦野市の連携
秦野市と東海大学の連携は1983年に「提携事業に関する申し合わせ」を締結したことに始まる。教員養成の面では、これまでにも教職を目指す東海大生の教育実習を市内の教育機関が優先的に受け入れてきた。また、2000年からは文学部心理・社会学科の学生を「メンタルフレンド」として、08年からは教養学部人間環境学科自然環境課程の学生を、市内の小学校に理科支援員として派遣している。

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