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特集

2014/01/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

食品加工や衛生管理を学ぶ

【海洋学部水産学科食品科学専攻】
最先端の食品製造実習室
世界基準のスキルを養う


充実した施設を最大限に活用して、食品開発や加工の現場で求められる高いスキルを磨く─。清水校舎3号館に昨年9月、海洋学部水産学科食品科学専攻の新しい実習施設「食品製造実習室」が誕生した。秋学期から授業での利用が始まり、学生たちが実習に取り組んでいる。

食品科学専攻は、食品加工や衛生管理に関する幅広い知識を習得した人材の育成を目指して2011年度に開設された。同学科では、1年時から世界標準の食品衛生管理システムであるHACCP=キーワード参照=の基礎や食品加工の知識を学ぶ講義を開講。実習室は、より実践的な知識や技術を効果的に養うことを目的に設置された。
 
室内はHACCPの適用を前提に設計・管理されているほか、ミンチ機や蒸し器は食品加工工場で使われている工業用機器を設置。静岡県から、魚肉ねり製品製造業と缶詰又はびん詰め食品製造業、そうざい製造業の営業許可も得ている。
 
食の安全が専門で、設計を担当した荒木惠美子教授は、「コンパクトながら最先端の管理技術と機器を備えており、国内でもほとんど例がないほど充実した施設となっています」と話す。

商品開発の基礎を学ぶ実習授業がスタート

実習室を使って商品開発の基礎を学ぶ3年生対象の「食品製造学実習」では、静岡の名産である黒はんぺんを使った新商品の開発をテーマに設定。学生たちは施設利用時の注意事項などを学んだ後、荒木教授や加藤登特任教授らの指導のもと実習に取り組んだ。魚肉と砂糖などの材料を備えつけのミンチ機で加工し、デンプンや粉末卵白などと混ぜ合わせて、はんぺんを製造した。
 
学生たちは、すべての作業工程をノートに記録し、製造後には食感や味の違いを記入。はんぺんに合うソースなども考案し、1月中に商品のレシピとしてまとめる予定だ。「講義で学んできたことが現場でどう生かされているのかを目の当たりにできるため、理解も深まります」と語るのは大下直樹さん。瀧野修作さんは「実際の工場をイメージしながら学べるので、就職先を考える際にも役立つと思う」と語った。
 
荒木教授は、「この施設で学んだ学生が世界の食品加工の現場で活躍できるよう、今後も授業内容を工夫していきたい」と話している。

(写真上)グループに分かれて行われている実習
(写真下)授業では最新の調理機器も利用している


担当教員に聞く
技術とモラルを備えた人材を
海洋学部水産学科副主任 食品科学専攻
齋藤 寛 教授

「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録される一方、食品の原材料偽装が相次いで発覚するなど、食の安全や安心に対する関心は日々高まっています。こうした傾向は世界的な情勢でもあり、食にかかわる職業につく人材にはこれまで以上に高い技術とモラルを身につけていることが必須の要件となっていくと予想されています。
 
食品製造実習室は、次代を担う人材に求められる、こうした能力を磨くことのできる充実した実習施設となっています。学生にはここで大いに学んでもらい、幅広い分野で活躍できる能力をバランスよく養ってもらいたいと思います。
 
企業を対象にした衛生管理講習会の開催など、施設を活用した地域連携も進めていく予定です。近隣の自治体や生産者などとも連携し、近隣でとれる魅力的な海産物や農産物を生かした新たな特産品の開発にも取り組みたいと考えています。


もう一つの話題
本格的な機材を備えた放送スタジオが湘南に誕生

工学部電気電子工学科の新たな教育実験用施設「放送スタジオ」が昨年10月、湘南校舎9号館に開室した。
 

同学科ではこれまでにも、電気機械と電子機器の教育研究用教材として電気自動車とキッチンスタジオを導入している。同学科主任の庄善之教授は、「実際に民生用の機械で実習することで、理論的な知識への理解を深めるだけでなく、専門的な学習や研究への興味を育むことにもつながっている」と語る。

電気通信分野の実習施設である放送スタジオには、テレビ局でも使われているカメラや受像器のほか、放送波を測定する機器を導入。簡易無線局の免許も得ており、ラジオや動画の無線伝送にも使えるように設計されている。庄教授は「送受信にかかわる手順が自動化されていないプロ用の機材を入れたことで、背景にある技術や理論を学べる施設を実現できた」と話す。
 

スタジオは電気電子に関する幅広い技術を学ぶ3年生対象の実習「電気電子工学実験4」で利用。昨年11月7日の授業では稲森真美子講師の指導のもと、学生が近距離での無線中継に取り組んだ。ビデオカメラで湘南校舎内を撮影し、指向性アンテナを経由して画像をスタジオに送信。スタジオ内では測定器を使って、受信した映像の色彩の変化に応じて電波の波形がどのように変化するかを調べる実験を行った。
 
学生からは、「実際に機器に触れながら実習することで、勉強が足りていない分野が発見できる」「通信に関する知識を、より深く学びたいという意欲が高まった」といった声が聞かれた。庄教授は、「今後はネット配信などの実習も導入し、放送通信技術全般を学べる施設にしていきたい」と話している。

(写真上)稲森講師(右)の指導を受けながら機器を操作
(写真下)指向性アンテナを調整する学生たち
Key Word  HACCP(ハサップ/ハセップ)
1960年代にアメリカで宇宙食の開発時に考案された、食品安全上のハザード(食中毒細菌、有毒化学物質、金属片などの危害要因)を管理するシステム。欧米の食品加工業では、食の安全保証システムとして導入が義務化されており、日本でも普及が進んでいる。海洋学部水産学科では2006年度から、全国の大学に先駆けて、在学中に「HACCP実務管理者」の資格を取得できるカリキュラムを導入している。

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