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特集

2017/11/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

世界最高峰の舞台で4位

ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム
シリコン系・日本勢でトップの成績
再び世界一を目指す


より速く、より着実に、3000キロ先のゴールを目指して赤土の荒野を駆ける「チャレンジセンター﹁ライトパワープロジェクト」のソーラーカーチームが10月8日から15日までオーストラリアで開催された「2017 ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」に出場。太陽光のエネルギーだけで豪州大陸を縦断する世界最高峰のレースで4位に入った。新型マシン「2017年型Tokai Challenger」で世界に挑んだ学生たちを追った。

入念にコースを下見 公式車検も丁寧に対応

2009年と11年の同レースで優勝した東海大学チームだが、13年は惜しくも準優勝、15年の前回大会は総合3位と、今大会は世界一奪還への挑戦となった。

学生たちメンバーは9月20日に先発隊が日本を出発。翌21日にメルボルンで空輸したマシンを受け取ると、ゴールとなるアデレードからスタートのダーウィンまで逆走してコースの状態を視察した。同時に木村英樹総監督(工学部教授)らがダーウィンからアデレードまでを走行し、標識や制限速度などを念入りに確認。後発隊も26日に日本を離れ、28日にはメンバーがダーウィンに集結し、レースに備えた。

「コースの調査では、独自に開発したキャンプ地点や道路状況などをGPSと合わせて表示するマップシステムの動作確認も行いました。ダーウィンに入ってからも連日早朝から夜中まで作業が続きメンバーには疲れも見え始めましたが、一致団結して臨みます」とチームマネージャーの武藤創さん(工学部2年)が話すように、学生たちは互いに協力しながら一つひとつ課題をクリア。

レース出場の可否を左右する公式車検も大会当局の厳しいチェックに合うものの、丁寧に対応してパスしていった。

予選9番手からトップに 厳しい天候に苦戦も
10月7日にダーウィン郊外のヒドゥンバレーサーキットで行われた予選で、チャレンジャークラス9位につけた東海大チーム。8日のスタートでは、ファーストドライバーを09年の大会以来務めてきた佐川耕平助教(工学部)がステアリングを握る。「今年4月に東海大の教員になってからは初めての出場。学生たちと何カ月もかけて作り上げてきたTokai Challengerの力を世界に見せたい」と決意を語った。

スタート直後からごぼう抜きを見せた東海大は第1コントロールポイントのキャサリンにトップで到着。順調なスタートを切ったかに見えた。しかし、その後は大会2連覇中のオランダ・デルフト工科大学の「Nuon Solar Team」が先行。曇天や悪天候、強い横風など厳しい気象条件も加わり、3日目以降はアメリカ・ミシガン大学やベルギーの「Punch PowertrainSolar Team」など上位常連チームとしのぎを削る展開に。チームは情報技術センターと湘南校舎から送られてくる気象衛星ひまわりの画像データなどで雲の推移を予測するなど対応にあたった。

学生ではただ一人ドライバーを務めた喜多洸介さん(工学部3年)は、「絶対にNuonには負けたくない。できることは何でもやります」と真剣な表情。学生たちはマシンがキャンプ地点に停車するといち早く充電や整備を進めた。

チームは5番手で迎えたレース5日目に、ペナルティーで30分の停車が課されたオランダ「SolarTeam Twente」を抜き4位に浮上。しかし、最後はおよそ10分差で3位のPunch Powertrainに届かず。無念の結果となった。

悔しさを胸に前へ 活気あるチーム目指す
「率直に悔しい気持ちはあるが、一方で学生たちはレースを通じてチームワークを育んでくれた。レースは人を強くする。教育の一環としてこの大会に参戦している意義を感じています」と話すのは福田紘大監督(工学部准教授)。武藤さんは、「この結果は『まだまだよりよいチームをつくらなくてはならない』ということ。これからも仲間たちと活気のあるチームにしていきます」と前を向いた。

木村総監督は、「今大会の上位3チームは多接合化合物太陽電池を使う陣営でしたが、東海大はシリコン系ではトップの成績を収めました。今後はレギュレーションバランスの改善を大会に働きかけるとともに、『世界』に向けて再チャレンジしていきたい」と総括した。

なお、東海大の総走行時間は39時間48分50秒で、平均スピードは時速79・5キロを記録。4チームが出場した日本勢ではトップとなった。



校友会旅行で現地へ メンバーをねぎらう

建学75周年の節目に、世界に挑むメンバーたちを激励しようと、今大会では学校法人東海大学の松前義昭理事長を団長とした「東海大学学園校友会視察旅行〜ワールド・ソーラー・チャレンジ応援の旅」が実施された。

教職員や校友会員ら14人が参加し、10月8日に日本を出発。10日にはレース中間点にあたる第5コントロールポイントのアリススプリングスに駆けつけて声援を送ったほか、アデレード市内のゴール地点では、チャレンジセンターの岡田工センター長も合流し、3000キロを走り抜いたメンバーたちを出迎えた。

また、ゴール後にはアデレード市内で慰労会も開催。学生や木村総監督、福田監督、佐川助教をはじめ、特別アドバイザーも含めたチームメンバー全員が出席した。

松前理事長はあいさつで、過去に東海大学ソーラーカーチームで活動していたころの思い出を披露し、「これまで好成績を残してきたチームの一員としてのプレッシャーもある中で、皆さんは非常によくやってくれました。今後もこの経験を生かしてください」とエールを送った。

 
(写真上から)
▽今大会に向けて製作された新型マシン「2017年型Tokai Challenger」は、研究開発段階で世界トップレベルの変換効率を誇るパナソニック製「HITⓇ太陽電池」とリチウムイオン電池などを搭載したほか、ボディには東レから供給を受けた炭素繊維「トレカT800開繊織プリプレグ」を使用。大会の冠スポンサーであるブリヂストン製のソーラーカー用タイヤ「ECOPIA withologic」を装着するなど、国内有力企業から多くの協力を得た
▽車検では車体の構造や安全設備など細部までチェックを受けた
▽奇岩・デビルズマーブルの前を行くTokai Challenger
▽2017BWSC 東海大チームPlayBack
▽校友会視察旅行の参加者とともに記念写真
【Key Word】 ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ
オーストラリア北端のダーウィンから南部のアデレードまで、約3000キロの公道を舞台として2年に1度開催される世界最高峰のソーラーカーレース。1986年に第1回大会が開催され、30周年を迎えた今大会には世界29の国と地域から、メーンとなるチャレンジャークラス、より実用化を目指すクルーザークラス、旧式のレギュレーションに沿ったマシンなどを用いるアドベンチャークラスの3カテゴリーに45チームがエントリーした。動的、静的両車検をパスしたマシンのみ本戦の走行が認められ、コースに9つ設定されたコントロールポイント(CP)では30分の義務停車が課せられる。一定時間内にCPを通過できなかったチームは参考記録となる。

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