特集:教育の現場から
2011年6月1日号
生活習慣改善プロジェクトがスタート
全付属高校生を対象に 学園一体で調査と実践

学園の全付属高校生(付属望星高校を除く)約1万2400人を対象にした「生活習慣改善プロジェクト」が今年度から始まった。体育学部の小澤治夫教授の研究室を中心に、東海大学のスポーツ医科学研究所、スポーツ教育センター、学校法人東海大学のスポーツ教育振興本部、初等中等教育部などの関連部署が連携。一貫教育体制を活用して取り組んでいく。

「近年、子どもの体力や学力、意欲の低下が指摘されています。その原因は遅寝・遅起き・朝食抜きといった生活の乱れとそれに伴う貧血にあるのではないかと考え、国の機関などとも連携してこれまで多くの高校生を対象に調査し、生活習慣の改善を広く呼びかけてきました」と小澤教授は話す。「今回のプロジェクトは、これまでの成果を学園の生徒に還元し、健康的で活力ある生活を構築してもらうことを目的としています」

プロジェクトでは、各付属校の希望をもとに年度ごとに重点校を設定。起床・睡眠時間や朝食の摂取状況、排便、入浴、携帯電話やゲームなどに費やす時間などのアンケート調査や血中のヘモグロビン値の測定、体力測定などを実施し、小澤研究室で解析。その結果を受け各校で講演会やセミナーを開くなどし、啓蒙活動を展開していく。

重点校から活動開始 各校で啓蒙活動を展開

今年度の重点校である付属第五高校では、4月14日に行われた健康診断と併せてヘモグロビン値の測定を実施。6月22日に同校で小澤教授による講演会を開催する。同じく重点校の付属第二高校では、5月21日に保護者や教職員向けの講演会を実施した。また、付属相模高校でもアンケート調査を行っている。

「各校での調査で得たデータを基に長短所を見つけ、課題解決につなげたい」と小澤教授。今後はスポーツ医科研と連携し、トレーニング指導なども行っていくという。「さらに元気で明るく活力ある学校にすることで、主体的問題解決能力をもつ生徒、学生を育てていきたい」と語る。

初等中等教育部長で、第二高の杉一郎校長は「犒鯀瓦平搬里坊鯀瓦弊鎖世宿る?という言葉の通り、規則正しい生活のリズムや栄養をしっかりとることが知能の発達や学力の向上につながります。プロジェクトは現代社会で壊れつつある子どもの体を救う救世主となるでしょう。子どもたちの生活習慣の問題は大人の責任です。保護者や教職員が一体となって取り組んでいかなくてはなりません」と話している。

第二高講演会で熱弁 生活習慣改善を訴える
プロジェクト第1弾の講演会として、第二高で5月21日に開催された講演会。約550人の保護者や教職員、一般市民が参加し、小澤教授が熱弁をふるった。小澤教授はこれまでの経験や調査の結果などから「学力の低下は“勉強ができない”のではなく、集中して取り組めない体になってしまっているから」と指摘。

朝食抜きや夜ふかしが子どもに与える影響をデータを用いて解説し、「早寝、早起き、朝ごはんを実践することが学力の向上につながり、自己管理能力を育てる」と力説した。参加した保護者からは「早速今日から実践するよう子どもに伝えたい」「朝食作りに気合が入りますね」といった声が聞かれていた。


早寝、早起き、朝ごはんで活力、学力、体力アップを
中・高校教諭として25年間の経験と独自の調査データを基に、生活習慣と学力、気力、体力の関係を研究してきた小澤教授が勧めるのが「早寝、早起き、朝ごはん」だ。「朝食をとるとさまざまな面でいい影響がある。そこで提唱を始めたのが“風車の理論”です」良い生活を送るために必要なことを風車の羽にたとえ、1枚の羽を回すことで全体が回転するという考え。

「狄べない、寝ない"では体温も上がらず、貧血も多い。疲れやすい、気力がわかない、授業中の居眠りといった、学校教育の現場が直面する問題につながっています」。小澤教授の研究室では、これまで調査してきた延べ数万人にも及ぶ児童、生徒たちの「勉強時間」や「睡眠時間」「朝食摂取の有無」「体力測定値」などを解析。小澤教授はこれらのデータを基に、全国各地の高校で生活習慣改善を訴えてきた。

「ある県の公立高校では、それまで年に20人を超える退学者を出し、体力テストも県内で100位以下という状況でした。しかし、生活習慣を見直して健康教育を進めたところ、5年で退学者は2人、体力テストも男子が4位、女子が2位という好成績を挙げました」。今回のプロジェクトは、これまでの成果を基にしたものだ。「体育学部に着任した2007年から、付属高生の活力、体力、学力向上に協力したいと考えていました。研究室の学生、大学院生たちと全力で取り組みます」と話している。


生涯スポーツの重要性を伝える
スポーツ教育振興本部 佐藤宣践 本部長

今回のプロジェクトは、小澤教授がこれまで取り組んできた研究の成果を基に、学園の付属高校の活性化と元気のいい高校生の育成を目指しています。“人生八十年”の時代に元気な生活を送るためには、成長期にある付属高校生や大学生が規則正しい生活を送り、スポーツに親しんで体力を身につけることが大切になります。

一貫教育体制を生かし、学園のスポーツ教育振興を担当する当本部では、全国や世界での活躍を目指す「競技スポーツ」とともに「生涯スポーツ」の振興を図っています。プロジェクトを通じ、付属高生、東海大学の学生たちにこの生涯スポーツの重要性を伝えたいと考えています。

 
(写真上から)
▽4月14日に第五高で行われたヘモグロビン調査。小澤研究室とスポーツ医科研の測定器「アストリム」を使って、高校生の血中ヘモグロビン値を計る。この測定器を用いれば、採血することなく短時間での計測が可能だ
▽小澤教授(中央)と研究室の大学院生たち。綿密な打ち合わせを重ね、調査、データの解析などに取り組む
▽第二高の保護者や教職員、一般市民ら約550人を前に、生活習慣改善の重要性を訴える小澤教授
▽小澤教授が提唱する「風車の理論」