特集:教育の現場から
2014年6月1日号
アクティブ・ラーニングを実践する
ICT機器を備えた教室が18号館に誕生
自ら考える力の育成を目指し
時代のニーズに応える授業を


最新の情報通信技術(ICT)を使って活気あふれる魅力的な授業を展開し、生涯学び続ける力を持った学生を育てたい――。理工系の教育研究拠点として4月から使用が始まった湘南校舎の18号館1階に、電子黒板や大型スクリーンなどの教育用機器やiPadを備えた教室「サイエンス・フォーラム」が誕生した。学生参加型の授業手法であるアクティブ・ラーニングとICT機器を融合させながら、東海大学の教育理念の一つである「自ら考える力」をより効果的に養う授業法開発が始まっている。

「サイエンス・フォーラム」は、理工系教育への最新技術の応用法を研究し、情報処理の授業を担当する理学部基礎教育研究室が運用している。理学部長の石原良美教授(同研究室主任)は、「ディスカッションやグループでの課題解決を通して自ら考える力や学び続ける力を身につけるアクティブ・ラーニングは、理工系教育に欠かせないものになっている。サイエンス・フォーラムは、現場でICTをどう活用できるか研究し、同時に実践する施設です」と説明する。現在は、数学と物理、化学の理学部生向けリメディアル授業「e‐科学」や、科学的思考力を育成する全学部生向けの「自然科学入門」「同演習」など同研究室が担当する授業を開講している。

多角的な講義を通して、専門知識を深く理

教室の管理・運営を担当している及川義道准教授(東海大学教育研究所長代理)は、「まずは基礎科目で使用することで、学習意欲の向上や専門知識習得への効果を測りたい」と話す。各授業は、アクティブ・ラーニングの手法を取り入れつつICT機器を活用する形で進められている。

5月12日に行われた「e‐科学C」では、及川准教授が化学で扱う物質の「定常と平衡」をテーマに講義した。1週間前の授業で出された予習課題を解説したのち、3面スクリーンに教材を投影しながら基本的な考えを説明。学生は手元に配布されたiPadで教材を見ながら講義を受ける。後半は、それまでの内容をもとに、グループに分かれて物質の反応時間と反応速度の関係をグラフ化する例題に挑戦。お互いに理解した内容を説明しつつ意見を出し合って、答えを導き出していった。

田邊瞳さん(理学部1年)は、「グループで課題に取り組むことで、講義内容を自分なりに理解し、表現する力や多角的な物の見方が身についている」と語る。井川真輝さん(同3年)は、「今までわかったつもりになっていた基礎的な知識を、より深く理解できるようになった」と早くも新しい授業の効果を実感している様子だ。

研究や企業で役立つICTの活用法習得も

また、峯崎俊哉准教授(理学部)が担当する19日の「e‐科学A」では、数学の「指数と対数の関数」について教材をスクリーンに投影しながら、要点は板書で説明。その後、3つの例題を学生たちが手書きで解き、iPadにインストールされている計算ソフトを使って結果を確認した。

守屋日向さん(理学部2年)は、「さまざまな機器が組み合わされているので、気持ちを切り替えながら授業を受けられる。ICTの使い方や、研究に便利なシミュレーションソフトの使い方が学べるのもいいですね。数学だけでなく、化学や物理の授業も受けたいと思うようになりました」と話す。

及川准教授は、「ICT機器を利用する場合でも、機器の特徴や教室の雰囲気を見極めながら、板書などと併用しないと教育効果が薄いなど課題も見えてきた。今後も授業の改良を重ねながら、機器の活用法や効果的な授業法を研究していきたい」と話している。

(写真上)3面の大型スクリーンに教材を映し出しながら進められる及川准教授の授業
(写真中)峯崎准教授の授業でiPadを使いながら課題に取り組む学生たち 
(写真下)講義はホワイトボードなどのアナログ機器とも組み合わせて行われている

 
もう一つの話題
次世代AL教室が湘南に
効果的な授業法を探り、教育改善につなげる

湘南校舎の14号館と16号館に3月上旬、「次世代アクティブ・ラーニング教室」が開設された。文部科学省の「平成25年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業」の補助を受けて整備されたもの。電子黒板や3面を同時に使える巨大スクリーン、挙手せずに質問やアンケートを集計できるクリッカーなど情報通信技術(ICT)を利用した機器のほか、授業中の教員と学生の様子を収録するハイビジョンカメラが設置されている。機器の選定にあたった白澤秀剛講師(情報教育センター)は、「ICTの活用法を探るだけでなく、アクティブ・ラーニングの手法を用いつつ知識定着率の高い効果的な授業法を研究し、模範事例を多くの教員が学べるようにすることが狙い」と話す。

いずれの教室も、教育支援センター主催の講習会を受講した教員が使用でき、現在は白澤講師が担当する「プログラミング入門」や外国語教育センターの結城健太郎講師によるスペイン語の授業が行われている。

最新機器を生かし、科学的に効果を分析

このうち「プログラミング入門」は、法学部や工学部、情報理工学部などから28人が受講。16号館で、コンピューターを使わずにプログラミングの基礎概念を学ぶ。5月19日の講義では、白澤講師がデータ構造の概念やプログラミングの手順を説明した後、コンピューターに四則演算させるプログラムの手順を紙に書き出す例題に挑戦。学生は議論しながら一つひとつ手順を書き出し、基本的な足し算から、高度な演算の方法を考える問題まで順に取り組んだ。

授業のうち、白澤講師をはじめとする情報教育センターの教員や結城講師の担当授業はカメラで収録。授業中の教員の動きや説明の仕方に対する学生の反応を分析している。また、高校では開講されていない外国語などの科目では、この教室を使った場合と一般教室で行った場合との知識の定着率や学生へのアンケート結果を比較。データを総合的に分析することで、効果的な授業の方法を数値化して研究することを目指す。

白澤講師は、「授業法自体は、ICT環境が整っていない教室にも応用できるものが多い。各学部やセンターの教育改善にも応用してもらえるよう、分析結果を積極的にフィードバックしていきたい」と話している。

(写真上)白澤講師の授業風景 
(写真下)学生が座るイスもグループワークがしやすいよう机と一体になっている。手前の机に固定されているのがクリッカー
Key Word アクティブ・ラーニング
学生の能動的な参加を促す教授・学習法の総称。一方的な講義とは異なり、グループディスカッションやグループワーク、ディベート、プレゼンテーションなどを取り入れるのが特徴。学生自身が問題を発見し、論理的に考え解決する能力を養う手法として、文部科学省も大学教育改革の柱の一つに位置づけている。東海大学では、建学の精神に基づいた教育理念に掲げる「東海大学が育成する4つの力」の一つ「自ら考える力」を育む手法として授業への積極的な導入を推奨しており、教員向けの研修会などを行っている。