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コラム

2016/09/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

ジャズを聴こう!①「イパネマの娘」

高輪教養教育センター 田丸智也 准教授 

先日、リオ五輪が閉会しました。9月にはパラリンピックが開催されます。マスコットキャラクターは「ヴィニシウス」(パラ五輪は「トム」)。実はこれらは、本日紹介する、「イパネマの娘」の作詞=ヴィニシウス・モラエス、作曲=アントニオ・カルロス・ジョビン(通称トム・ジョビン)からきています。五輪の開会式でジョビンの孫のダニエルが歌ったので、聞いた方も多いでしょう。

ボサノバという音楽も、リオ南側の海岸地区で生まれた音楽様式なのです。日本ではボサノバと発音されますが、海外ではブラジルの公用語であるポルトガル語のBossaNovaから「ボッサ・ノーヴァ(あるいは単にボッサ)」と発音することが一般的です。Bossa(こぶ・波)、Nova(新しい)。英語的に言い換えるなら「ニューウエーブ(NewWave)」という意味を持っています。

ボッサ・ノーヴァは、1950年代後半に、リオ南部(コパカバーナ、イパネマなど)でギター歌手ジョアン・ジルベルトや、作曲家のジョビンによって牽引された当時の若者の音楽でした。特にジョアン・ジルベルトが貢献した点は大きく、以下の3点が挙げられます。①ギター1本のみで、サンバのリズム、ベースライン、和音を同時に再現する「バチーダ(混ぜる)」と呼ばれる奏法を確立。②歌い方のアイデアとして、当時アメリカで流行していた「ウエストコーストジャズ」のような脱力した雰囲気に影響を受けた。③このギター奏法と歌い方をジョビンが見いだし、58年にChega de Saudade(シェガ・ジ・サウダージ=思いあふれて)が発売され「新しい波」が始まりました。
 
62年にイパネマ海岸のエロイーザという魅力的な女性(なんか覚えやすい!)をモデルに冒頭で紹介した2人によって「イパネマの娘」が生み出されました。

翌63年にニューヨークでスタン・ゲッツ(サックス)のアルバム『ゲッツ/ジルベルト』が録音されます。ジョアン・ジルベルトも参加し、ボサノバをジャズに取り入れた名盤として知られています。ちなみにアストラッド・ジルベルト(ジョアンの妻)は当初歌う予定ではなかったのですが、「歌ったらイイ感じだった」のでボーカルとして採用されたという伝説が残っています。(筆者は毎号交代します)

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